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こふみ会・句会物語 №115 [文芸美術の森]

こふみ会・句会ものがたり  
行くも良い良い、行かぬも良い良い……コロナ禍による在宅句会その29 
「十二月」「白菜」「鎌鼬」「貯金箱」 
                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

幹事の一遅さんから、≪令和4年12月の句会≫の案内状が送られました。

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こふみ会の皆さま

お元気でお過ごしですか。
早いもので、もう本日から12月です。
早速、今月の兼題をお届けいたします。

●投句の締切を11日(日)といたします。
ご常連も久々の方も、ふるってご投句ください。

●兼題は、①十二月 ②白菜 ③鎌鼬 ④貯金箱 とします。

・十二月
 今月は、いつもと違う特別な月です。
 今年一年の悲喜こもごもを包括して、
 如何様にも使えるストレートな兼題としました。
 師走、極月なども可とします。

・白菜
 牡蠣や蟹など、メインの食材を地味に支える白菜。
 実は出汁タンクと言われるほど、味の宝庫です。
 歌舞伎でいうと荒事の主役を引き立てる名もない花与天のようなもの。

・鎌鼬
「かまいたち」と読みます。つむじ風の中で知らぬうちに出来る切り傷。
 弥生さん曰く、自然現象なのに妖怪事典にも出てて面白い。とか。

・貯金箱
 昔は年に一度、十二月だけが決済の月だそうで、掛け取りの忙しい時でもありました
  大事な貯金箱に手をつけるのは、こんな時。でも無季です。季語は各自、ご自由に。

                          以上 12月幹事 一遅

*選句締め切りは22日(木)にいたします。

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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。15名 60句

【十二月】
1.悔いもある自負も多少は十二月  (紅螺)
2. 晩冬にブラボーッブラボーッブラボーッ  (孑孑)
3. 十二月小ざっぱりした髪にする  (下戸)
4. 日めくりが頭でっかち十二月  (尚哉)
5. 走る師も走らぬ師らもみな鬼籍  (矢太)
6. 十二月不思議と忙し半隠居  (すかんぽ)
7. 十二月あと半枚の余生かな  (鬼禿)
8. 右見ても左を向いても十二月  (一遅)
1.薄日射し猫ゴロゴロと十二月(虚視)
10.十二月歓喜の歌に涙する  (兎子)
11.朝昼晩だいどこにをり師走かな  (なつめ)
12.障子越し庭師の影や十二月  (弥生)
13.ひとに厳しく己に甘く十二月  (孝多)
14.カレンダー残り一枚十二月  (玲滴)
15.寝て過ごす師走もあるか八十路婆  (茘子)

【白菜】
16.幼子と白菜鍋のストリッパー  (孑孑)
17.白菜の葉の流れくる揚子江  (茘子)
18.野良晴れて居並ぶ白菜諸手あげ  (一遅)
19.白菜を三つも提げて新大久保  (すかんぽ)
20.大気ごと白菜指で真っ二つ  (虚視)
21.曇り空白菜畑に人ひとり  (紅螺)
22.安売りの白菜一玉抱きしめる  (兎子)
23.白菜漬冬の朝餉に山と盛り  (孝多)
24.さくさくと白菜切れば北斗星  (矢太)
25.黒土より水を運ぶや白き菜  (下戸)
26.白菜のわだかまりたる鍋終盤  (尚哉)
27.サクサクと白菜切りて今日は鍋  (玲滴)
28.雪に立つ白菜芯だけ息をして  (鬼禿)
29.己がため漬ける白菜余生かな  (弥生)
30.白菜を真二つに割ったような人  (なつめ)

【鎌鼬】
3.足裂いて姿も見せず鎌鼬  (紅螺)
32.犯行の跡形もなし鎌鼬  (下戸)
33.マスコミは一転化して鎌鼬   (孑孑)
34.今更にどの面下げて鎌鼬  (矢太)
35.瞬殺で胸キュンあいつは鎌鼬  (一遅)
36.寒空に流れる天の鎌鼬  (兎子)
37.傷跡を残して去れりかまいたち  (孝多)
38.君の嘘また一つ増えかまいたち  (なつめ)
39.女学生逃げて遊ぶや鎌いたち  (すかんぽ)
40.植込みの砂利に鎌研ぐ鎌鼬  (尚哉)
41.鎌鼬電線鳴いて二日月  (鬼禿)
42.鎌鼬月下撃ち抜く銀の弾丸(たま)  (虚視)
43.我が頬も恋も切り裂き鎌鼬  (弥生)
44.鎌鼬空斬る女の笑い声  (茘子)
45.ゲレンデに妖怪見たりかまいたち  (玲滴)

【貯金箱】
46.貯金箱振って子供も年の暮  (紅螺)
47.年の瀬や亡母の重たき貯金箱  (孑孑)
48.歳月や貯金箱につもる雪  (下戸)
49.ポイントざくざく冬の携帯貯金箱  (すかんぽ)
50.貯金箱振ればカラカラ聖誕祭  (虚視)
51.貯金箱キャッシュレス化で蚊取豚  (尚哉)
52.貯金箱空にして食う桜鍋  (茘子)
53.冬座敷ぽつんと残る貯金箱  (兎子)
54.すきま風泥絵の達磨の貯金箱  (一遅)
55.貯金箱ついに別れの師走かな  (孝多)
56.暮れ人気!絶対開かない貯金箱  (鬼禿)
57.振ってみ叩いてみ覗いてみ貯金箱  (矢太)
58.貯金箱割りて歳末助け合い  (玲滴)
59.貯金箱ふればカラカラ枯木立  (弥生)
60.冬うららカランコロンと貯金箱  (なつめ)

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●鍵空斬る女の笑い声 【嘉子】    尚哉選
鑑賞短文=全五感が研ぎ澄まされるような、鋭角的な世界観,みごとです。(尚哉選

●悔いもある自負も多少十二月  【紅蝶】
鑑賞短文=さらりと一年を締めくくったところがさすがです。(嘉子選)
鑑賞短文=好きです。こういう年末感、こういう晩年感を吐露する読み手の腹の内が。(孑孑選)

●冬座敷ぽっんと残る貯金箱  【兎子】
鑑賞短文=さて、親なのか子供のものなのか、誰の貯金箱なのでしょう。このキャッシ
ュレス時代に取り残されたような貯金箱。「ぽっんと」がいいですね~。(すかんぽ選)

●日めくりが頭でっかち十二月  【尚哉】
鑑賞短文=いろいろ難しい問題の多いこの1年でした。最後に頭を悩ませてる日めくり
の様子が共感を呼びました。(兎子選)

●十二月小ざっぼりした髪にるる【下戸】
鑑賞短文=何度も読み返している内に、この小ざっぼりした句に決めました。俳句って「こういうもの」かえしのない釣針のような・・。小ざっぼりしたいい句です。(鬼禿選)
鑑賞短文=作者は男性でしょうね。自分のことを自分で句にしている‥t。悪くない。
しかし、一瞬、女性かと思わせる、そのスリルもあります。佳句をお示しいただき、有難うございました。(孝多選)
鑑賞短文=師走はやり残すことが山のよう。髪だけは忘れずに切りたいなあ。と同感。
(矢太選)

●障子越し庭師の影や十二月  【弥生】
鑑賞短文=12月の暖かい日差しと、刈り込まれ車樹木の芳香まで伝わってくるようで
す。(紅螺選)

●己がため漬ける白菜余生かな  【弥生】
鑑賞短文=食べさせる相手もいない、それでも日々のくらしを大切にする、ひとりくらしのしみじみした日常が伺えてほっこりしました。(玲滴選)

●瞬殺で胸キュンあいつは鎌蝕 【-遅】 
鑑賞短文=胸キュン▼何年?何十年もの間忘れていた感覚。憧れます。(なつめ選)
                              
●朝昼晩だいどこにをり師走か 【なっめ】
官署短文=師走のあわただしさが、ほのぼのと伝わってくる。前掛けが目に浮かびます。
(下戸選)

●すきま風泥絵の達磨の貯金箱 【一遅】
鑑賞短=一句全体が昭和の匂いのする懐かしい句。(弥生選)

●幼子と白菜鍋のストリッパー  【子子】
鑑賞短文=楽屋だろうか。ちょっと俺しく。でも暖かい。ショートショートのような味
わい。(虚祝選)
鑑賞短文=子連れで旅する過酷な生活。せめて幼子には暖かいものを食べさせたい。木村伊兵衛の写真を彷彿させる昭和の風景が見事。(一遅選)

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≪今月の天地人≫

総合天 弥生さん(43点)
  代表句=障子越し庭師の影や十二月
総合地 下戸さん(29点)
  代表句=十二月こざっぱりした髪にする
総合人 紅螺さん(25点)
  代表句=悔いもある自負も多少は十二月
総合人 孑孑さん(25点)
  代表句=幼子と白菜鍋のストリッパー

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≪幹事より、ひと言≫

2022年12月の会は、
●天句:十二月小ざっぱりした髪にする下戸
が【27票・3天】を獲得して、天句に輝きました。
地句は、おなじく18票を獲得した2句、
●悔いもある自負も多少は十二月紅螺
●障子越し庭師の影や十二月弥生
人句は、ふたつの天のみで14票を獲得した、
●幼子と白菜鍋のストリッパー孑孑
と続きました。
3人の天を獲得して今月の話題句となった「小ざっぱりの髪」でしたが、4句の総合点ということでは、「障子に映る庭師」に追いかけられ、2番手に甘んじました。やはり、4句にくまなく得点の入った弥生さんが、今月のダントツ総合天です。幹事の役得、レースを見ているようで面白いものです。
俳句は、作者と鑑賞者の共同作業とよく言われますが、確かに、最近、自分も選句の楽しみをおぼえてきました。誰もとらないであろう句にも、見方によれば、「いいゾ」という句を発掘する楽しみ、いや、自分の中で妄想を膨らませる楽しみをおぼえました。たとえば、今月の「幼子と白菜鍋のストリッパー」、これと、どちらを天句にしようか迷った「貯金箱振って子供も年の暮れ」。誰も採っていない自分の天。ここが面白い。ストリッパーは、虚視さんも採っていて、同感の思い。これも思いが通じた感があり、うれしいものです。来年も、どうぞよろしくお願いいたします。

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≪孝多より、ひと言≫

令和4年11月17日の読売新聞の「編集手帳」に載っていた≪ものや人の状態を音に例えて表現するのが「オノマトペ」。フランスからの外来語である。≫に基づいて、前回、私・孝多は、実は、皆さんに、時にはオノマトペに取り組んでみませんかというひと言を用意していました。
この時点で、オノマトペは、「ぐっしょりと」「すりすりと」「しんしん」の3句だけだったのです。

しかし、ご承知のように、こふみ会会通信114には芥川龍之介の句について掲載してしまったので、別の機会をと考えていたところ、今回、投句一覧を見てびっくりしました。
なんという偶然か、まるで、孝多の思いに応えるかのように、「猫ゴロゴロ」「さくさくと」「サクサクと」「ポイントざくざく」「カラカラ聖誕祭」「ぽつんと残る」「ふればカラカラ」「カランコロンと貯金箱」など、オノマトペは8句もありました。 凄い!

なおも申せば……
「むにゅっ」「ネチョット」「りきりき」「もやんと」「にゅらんと」「キャランキャラン」などのようなオノマトペを作ってみたり……。
昔からある「擬態語」「擬声語」「擬音」などの考え方や、その範囲を越えたものに、今、挑むと言ったことは、極めて望ましいことではないでしょうか。
「尊敬のオノマトペ」「軽蔑のオノマトペ」となると、哲学的でさえあります。
      2022年12月24日     孝多

                                               (編集 横幕玲滴)


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