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日めくり汀女俳句 №112 [ことだま五七五]

十二月二十日~十二月二十二日

    俳句  中村汀女・文  中村一枝

十二月二十日
白菜の山に身を入れ目で数ふ
     「山粧ふ」 白菜=冬

 食いしんぼう一家というのは、私の生まれた家を指す。中でも筆頭は父。ご贔屓(ひいき)は蒲鉾で、頂き物はすぐ持っていって自分の部屋に。「おい、一寸こい、蒲鉾やるぞ」。
 声がかかって行ってみると、お皿の上に薄い切れはしが二枚惜しそうにおいてある。とれたての魚がくると、どてらを脱ぎ捨て、腕まくりして魚を調達するのは父。ぬかみそをかきまわしている最中に来客がきて、ぬかみそだらけで顔を出す父に、客はたいてい驚いた。父の舌はまろやかで、転がすように食べる。ひと味ひと味味わっているのが快かった。

十二月二十一日
湯ざめせし背に大いなる月かかる
        『紅白梅』 湯ざめ=冬

 アメリカ人が日本に観光にきて行きたい所に、温泉があるという。日本人のふろ好きは清潔好きもあるが、手軽に温泉に入れる楽しみもあるのかも。
 私は、女の癖に烏の行水の組、ぼちゃんと入ってざばっと出るという男の子みたいな入り方。娘が高校生のころ、「ママは入浴の作法を教えてくれなかったから修学旅行で恥かいたわ」と怒られた。シャワーで育った子供たち、温泉など興味ないだろうと思ったが、息子は休みがとれると、温泉へ出かけていく。今、温泉は若者の間で人気がある。息子は長湯である。

十二月二十二日
人影を得て枯芝の色新た
        『紅白梅』 枯芝=冬

 「13デイズ」という映画を見た。一九六二年キューバ危機の、大統領ケネディ、弟ロバート、側近オドネルたちの人間ドラマを、事実と資料に基づいて描いている。私はケネディの熱狂的ファンだった。就任演説の格調の高さ、理想にしびれた。アメリカ国民があの素晴らしい大統領をダラスの凶弾で失ったことを、どんなに口惜しく思っているかよく分かる。ケネディ兄弟の貫いた理想と正義を、必死になってつぶそうとしていた国内勢力の姿も見えてくる。
 今新しい大統領を迎えて、アメリカ国民はどんな思いでこの映画をみるのだろう。

『日めくり汀女俳句』 邑書林



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