SSブログ

こふみ会・句会物語 №114 [文芸美術の森]

こふみ会・句会ものがたり  
行くも良い良い、行かぬも良い良い……コロナ禍による在宅句会その28 
「時雨」「毛布」「おでん」「冬苺」
                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

幹事のなつめさんから、≪令和4年11月の句会≫の案内状が送られました。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
こふみ句会の皆さま

東京の街もようやく色づいて参りました。
そして冬はもうそこまで。。。

こあみ句会、11月の幹事はなつめが務めます。
よろしくお願い申し上げます。

*兼題
【時雨】しぐるる、片時雨、小夜時雨など
【毛布】
【おでん】
【冬苺】

●投句締切は11月12日(土)〜14日(月)までにお願い致します。
●投句先はなつめ自宅と携帯の両方へお送りください。

それでは皆さま、冬支度は万全にお風邪など召しませぬようにお過ごしください。

*選句締め切りは20日(日)〜22日(火)の間にお願いいたします。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。14名 56句

◆時雨
甘味屋のとなりの寄席で時雨待ち(下戸)
時雨過ぐ乾ける街の水浸し(虚視))
ほろ酔いが帰る間際(まぎわ)の時雨かな(孝多)
その男うしろ姿の時雨けり(すかんぽ)
薄墨の山は時雨れて里灯り(紅螺)
いつの世も人ごと曲ごと片時雨(なつめ)
時雨るるや大正硝子に歪む町(弥生)
奈良しくれ阿修羅の吐息がしたような(鬼禿)
タクシーをしばし思案の片時雨(孑孑)
時雨来る宿場の蕎麦の暖かき(玲滴)
ぐっしょりと時雨が重い妻籠宿(一遅)
時雨来て家路急がす神保町(尚哉)
時雨るゝやあの日にもまたこの日にも(矢太)
老人と犬時雨るゝ夕のビル谷間(茘子)

◆毛布
温もりの残りし毛布猫睡る(虚視)
すりすりとウールマークの古毛布(すかんぽ)
遠き日の乳の匂いか古毛布(茘子)
毛布一枚大汗で悟る温暖化(鬼禿)
毛布被ってそのまま目覚めなくていいんだよ(矢太)
あくびかむ日曜礼拝膝毛布(孑孑)
目を閉じて日のぬくもりの残る毛布(紅螺)
泣く吾子の乳房のごとく毛布抱き(なつめ)
薄桃のベビー毛布と乳の香と(弥生)
聖劇の博士演じぬ毛布着て(尚哉)
ツェッペリン電気毛布の中で聴く(下戸)
いくたびも毛布のおくるみのぞき込む(孝多)
もう一枚毛布出そうか夜気しんしん(一遅)
猫と居て今夜は冷えるね初毛布(玲滴)

◆おでん
おでん多民族共存おでん共和国(虚視)
身をやつさば一人おでんも馳走なれ(尚哉)
おでんやで独演会の名残洒(紅螺)
靴音を待ちてとろ火のおでん鍋(弥生)
浅炊きのおでんも又よし神田川(鬼禿)
先ず一献とはいかずともおでんかな(玲滴)
大根をお箸で割って二人きり(一遅)
おでん種みな行儀よくつかりをリ(なつめ)
淋しさに辛子利かせておでん洒(すかんぽ)
コンビニのおでん抱えて母想う(茘子)
結局はふたりばっちのおでんかな(矢太)
どの具にも個性がにじむおでんかな(孝多)
猿たちのごと開店前のおでんたち(孑孑)
痩せ野菜おでんに化けてイッヒツヒツ(下戸)

◆冬苺
この先も野にいるつもり冬苺(一遅)
婆裟羅山秘密の場所に冬苺(弥生)
赤さゆえ胸に薄さす冬苺(玲滴)
硝煙匂ふ夕陽ぞ赫し冬苺(鬼禿)
神様はジュエリー作家か冬苺(孑孑)
冬苺つまむネイルはトッピング(尚哉)
働かず生きていきたや冬苺(下戸)
冬苺くちびるのごと軽く噛み(虚視)
そのムカシ子らの宝よ冬苺(孝多)
冬苺子信濃に逃れて早や三年(矢太)
初恋の記憶こぼるる冬苺(なつめ)
病床に生きろ生きろと冬苺(茘子)
いつまでも恋に恋して冬いちご(すかんぽ)
パティシ工の指先そつと冬苺(紅螺)

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●薄墨の山は時雨れて里灯り(紅螺)
鑑賞短文=まるで水墨国のような一触世界観が美しすぎる。(下戸)
鑑賞短文=一幅の日本画のよう句。正しい律がこの句を更に美しくしているようにおもいます。(弥生)
鑑賞短文=薄墨の山がいいです。情景が目にうかぶ旬でした。(玲滴)
鑑賞短文=一幅の日本画を見る思いです。(茘子)

●この先も野にいるつもり冬苺(一遅)
鑑賞短文=気持ちのいい句が並んでいます。この旬も自画像旬なのでしょうか。己を反芻すると、私は後悔だけが残ります。(鬼禿)
鑑賞短文=あの色、あの牌きは切ない主張ですね。いまごろになってSDGsなんて言い訳じみたことを育っている人間どもを許してください。滅びるときは・緒に滅びましょう。(孑孑)

●遠き日の乳の匂いか古毛布(茘子)
鑑賞短文=急に冷え込む秋の夜に、毛布を出して膝にかけてみた。かすかに香る赤ん坊の匂い。もう成人となった子や孫の幼き日が憩い出され、心あたたまる古毛布なのですね。良旬をお示しいただき有難うございました。(孝多)

●結局はふたりぼっちのおでんかな(矢太)
鑑賞短文=子供たちとの賑やかだった団欒も今は昔。おでん鍋だからこそ感じる哀愁を見事に切り取っています。「結局」の呟くような一言が見事。(すかんぽ)

●時雨るるや大正硝子に歪む町(弥生)
鑑賞短文=レトロな風景、何かキュンとします。(紅螺)

●靴音を待ちてとろ火のおでん鍋(弥生)
鑑賞短文=「靴音」と「とろ火」の取り合わせが叙情的な句です。日常の小さな幸せが溢れています。
(なつめ)

●おでん種みな行儀よくつかりをリ(なつめ)
鑑賞短文=四角いおでん鍋は、なるほど湯船。大根おやじもゆで卵姉さんも、皆さん、自分のスペースで出番待ち。いいですね。(一遅)

●ツェッペリン電気毛布の中で聴く(下戸)
鑑賞短文=かなりアナーキーな句です。驚きました。ロバート・プラントがどう聴こえるのか、試してみよう‥(尚哉)

●硝煙匂ふ夕陽ぞ赫し冬苺(鬼禿)
鑑賞短文=ウクライナを哀しく詠った。(矢太)

●いつまでも恋に恋して冬いちご(すかんぽ)
鑑賞短文=恋に恋している時こそが恋。成就すれば色褪せる。冬苺の鮮紅は恋の具現化。(虚視)

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
≪今月の天地人≫

総合天:弥生さん 55点
       代表句=時雨るるや大正硝子に歪む町
総合地:紅螺さん 44点
        代表句=薄墨の山は時雨て里灯り
総合人:一遅さん32点
        代表句=この先も野にいるつもり冬苺

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
≪幹事より、ひと言≫

送られてくる投句を誰よりも早く拝見し、お一人お一人のお顔を思い出しながら、または想像しながら、その方の世界観を味わうことができるのは幹事冥利に尽きます。
たくさんの秀句に出会えました、ありがとうございます。
今回は全体の書式を揃える為、字間の空きはなくしました。
また、EXcelの表を使ったまとめを評価してくださって、これをテンプレート化したいというご意見もいただきましたが、私はこれまで通り、その方のやり方で良いのではないかと思います。毎月の結果報告は味わいがあってとても楽しみにしておりました。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
≪孝多より、ひと言≫
岩波文庫の『芥川竜之介俳句集』を読んでいますと、下記のような現象に直面し、はっとします。
ちょっとしか違わない句が3句、4句と並んで収録されているのです。

●山もとの夜長を笠のゆくへかな
●山もとの夜を菅笠のゆくへかな
●よこ山の夜を菅笠のゆくへかな

◆黒南風の潮鳴おつるたまゆらや
◆黒南風の潮騒(しほさゐ)ひけるたまゆらや
◆黒南風の大わだなげるたまゆらや
◆黒南風の海揺りすわるたまゆらや

◇多葉粉(たばこ)すふけむりの垂るる夜長かな
◇多葉粉すふけむりも垂れし夜長かな
◇多葉粉すふ煙も垂るる夜長かな

・春雨や檜(ひのき)は霜に焦げながら
・春雨や霜に焦げたる杉ながら
・春雨や霜に焦げたる杉のうら
・春雨や霜に焦げたる門の杉
・春雨や霜に焦げたる杉の杪(はし)

句会で言えば各グループの中からどれをひとつ、ベストとして選んで投句するか、大いになやむところです。
芥川の句、あなたでしたら、投句するのはどれですか。

                      令和4年11月末日        多比羅 孝多

                                              (編集  横幕玲滴)

nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。