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日めくり汀女俳句 №109 [ことだま五七五]

十二月十一日~十月十三日

     俳句  中村汀女・文  中村一枝

十二月十一日
耳立ちし黒犬坐る大根畑(だいこばた)
          『紅白梅』 大根=冬
 ペットのミダックスの人気が高い。わが家にも三年前まで、スタンダードグックスの雌がいた。彼女で三代目だったが、すっかりダックスファンになっていた。もともとドイッの猟犬で、あの長い体を武器に、横穴にもぐり込んでアナグマを追い出す。賢さと怜利さ、さらに勇敢さと野性味を持つ。今は室内犬としての、ミニが全盛だが、本来スタンダードの質実剛健さこそ取り柄なのだ。あの足の短さでと思うほどよく走り、テニスをしていると途中でポールをうばい取る精惇さ。愛玩犬だけにしておくのは惜しい。

十二月十二日
さし寄せし暗さ鏡に息白し
       『春雪』 息目し=冬

 師走に繁盛するもの、美容院。
 美容院は、女性にとって一種のリラクゼーション。美容院選びには、それぞれの好みがはっきり。「今度来た男の子何とかってカリスマに似てない。カットの手つきも」と若い女の子。おばさまの品定めはまた別に何てったって清潔さよ。タオルもブラシもいつも新品同様よ」「がさつだけど速いの。それでいてツポはわかってる。ベテランだわ」「話が面白くてね。あっと言う間に終わっちゃう」。美容師心得、心理療法士であり、はなし家でもある。話題は常に新鮮にして豊富。口の固いことも。

十二月十三日
お城裏雨に流るる落葉坂
       『薔薇粧ふ』 落葉=冬

 熊本の銀杏がようやく黄ばんできたと「熊本日々」に。熊本は南なんだと実感した。暖かかった秋が終わり、強い北風が乾いた歩道を吹き抜けてゆく。今年も暖冬だと、予報は告げている。いかに暖冬でも冬は冬。また暖かい日向や、暖房のぬくもりが恋しい季節が始まる。
 出先の駅前で匂いに誘われ、焼き芋を買った。一本七百円には、えっ、と目をむいたが、電車に乗っている間中、焼き芋の匂い。身の置き場に窮した。家に帰って食べたが、案に相違して不味かった。この気持ちのやり場のなさよ。

『日めくり汀女俳句』 邑書林


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