地球千鳥足Ⅱ №11 [雑木林の四季]
テーブル・マウンテンは見た、ケープ半島の夜明け
~南アフリカ共和国②~
小川地球村塾塾長 小川彩子
ケープタウンロッジに着くや否や窓からテーブル・マウンテンの姿が目に飛び込んできた。それはまさにテーブルそのもの、その上にかかった雲はテーブルクロスと呼ばれるが、その日はクロスなしで客を招いていた。すぐに飛び出し、タクシーで麓まで。だが午後は風のためロープウエイは連行中止だった。風は全く感じられず、がっかりしたが、海抜1087メートルへ回転しつつ登っていく、世界に3つしかないこのケーブルカーは安全第一だ。翌日は無事岩盤テーブルへ。なんと素晴らしい展望だろう。草花が咲き乱れ、遊歩道は完備、眼下にケープタウン市街、テーブル湾が広がる。夫が以前ピースボートで来た時「ここにカメラを忘れた」という思い出の場所も見た。レストランもあり、高所にしてはお値段は安くサービスは璽同だ。ケープタウンの象徴と言われるこの特異な山は人々の悲しみの歴史をはらはらしつつ見下ろし、「遠い夜明け」を待ち続けて来たことだろう。
私の脳裡に今でも鮮明に焼き付いているニュースがあるが、黒人の自由を主張して27年間刑務所に入れられていたネルソン・マンデラさんが1990年に(私がアメリカに来た年だ)釈放されたことだ。先住民、サン族、コイ族がいた南アフリカにオランダ人が入植してケープ植民地を作り、その後イギリスが植民地として奴隷解放を宣言したが、奴隷に頼っていたオランダ系の農民の反乱や武装蜂起、イギリス軍との確執の後、南アフリカ連邦成立、最初の首相、ボータ以降、黒人を=疋居住区に隔離する人種隔離政策、人種間通婚禁止法、背徳法、パス法等の人種差別法が次々と成立し、黒人運動の指導者、ピコは殺され、マンデラは投獄され、長く刑務所で過ごすことになったのだ。そのマンデラさんは釈放後に大統領となり、新憲法発効、今は別の大統領だが昨年はFIFAワールドカップ
も成功裏に終わった。
配色の美しい国会議事堂のそばに南アフリカで最古の庭園、カンパニー・ガーデンズがある。ケープ植民地創設者が作ったこの公園には世界から寄贈された珍奇な巨大植物が生い茂っており、日本政府が日本人の保護のお礼に贈ったという大灯籠があるが、79年前、夫の生まれた年の寄贈であった。小さなインターネット・カフェの経営者が日本品屑だというので日本語を教えてあげ、その近くの路上で太鼓を打っているグループに招じ入れられて暫しアフリカの太鼓に打ち興じた。この地でジンバブエ行きの切符を手配し、マラリァの薬を処方してもらい、いざジンバブエへと千鳥足の旅は続く。
(旅の期間‥2011年 彩子)
『地球千鳥足』 幻冬舎
『地球千鳥足』 幻冬舎
2022-10-29 19:44
nice!(1)
コメント(0)
コメント 0