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こふみ会・句会物語 №112 [文芸美術の森]

こふみ会・句会ものがたり  
行くも良い良い、行かぬも良い良い……コロナ禍による在宅句会その26 
「野分立つ」「秋茄子」「妹」「踏切」  

                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

幹事のすかんぽ氏から、≪令和4年8月の句会≫の案内状が送られました。

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こふみ会の皆さま、おはようございます。
きょうから、9月。楽しい2学期がはじまります。
お元気でお過ごしのことと存じます。

さて、今月の「こあみ句会」、幹事は、鬼禿/一遅ですすめます。
よろしくお願いいたします。

では、兼題。
1)野分立つ
2)秋茄子
3)妹
4)踏切
※3,4は無季の兼題としました。各自、季語を入れてください。

●投句は9月11日(日)~13日(火)のあいだにお願いいたします。
●投句先は、幹事(鬼禿、一遅)まで、お願いいたします。

●選句締切は9月23日とします。

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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。15名 60句

【野分立つ】
野分立つ猫もしっぽを丸めおり(玲滴) 
野分き立つ月も雲も早送り(孑孑)  
陸橋を駆ければ野分追つてきし(すかんぽ)   
野分立つまっさらな道歩みみる(なつめ)  
野分立つ軒端に張りし蜘蛛いづこ(尚哉)   
今日もまた訃報舞い込む野分立つ(兎子)   
野分立つサマーイズオーバー十五歳(茘子)    
野分立つ小諸浅間は雲の中(鬼禿)      
累々と草木百花野分立つ(虚視)    
野分立つ永久の微笑み野の仏(紅螺)   
街中で湯気見かけたり野分立つ(下戸)   
野分立つ焙煎の香もさらひゆき(弥生)    
今朝もまた偏頭痛あり野分立つ(一遅)    
なにもかも薙ぎ倒して去る野分かな(矢太)   
野分立つ誰かが誰かを想ってる(孝多)   

【秋茄子】
秋茄子の油を吸いてふくれをり(尚哉)   
秋茄子や祖母の手料理思い出す(孝多)   
藍色の勾玉のごと秋の茄子(茘子)    
秋茄子や空老ゆ風老ゆ人老ゆる(矢太)   
秋茄子を食はざりし父今もなぞ(弥生)    
おっほほうひとくちにまいる秋なすび(孑孑)  
喰へぬなら秋茄子となり押し黙る(なつめ)   
秋なすび丸いお尻をひとつ拭き(一遅)    
秋茄子の田楽父の頬ゆるみ(玲滴)   
色即是喰ふ 秋茄子(鬼禿)     
秋茄子の青紫や足るを知る(紅螺)    
秋茄子を焼くぞ裂くぞと独り喰ふ(兎子)    
さしすせそ何も足さずに秋の茄子(下戸)    
妻じつは背丈縮みし秋なすび(すかんぽ)    
秋茄子の焼かれ恥ずかし丸裸(虚視)   

【妹】
嫁ぎゆく妹と仰ぐ秋の虹(茘子)    
秋立ちぬ妹の乳房のまだ硬く(矢太)   
指させば流れる星や姉妹(あねいもと)(孝多)   
妹と偽りて旅霧深し(虚視)    
妹を置き去りにして鬼やんま(すかんぽ)    
コスモスに母よ姉よ妹よ(孑孑)  
通り雨妹似の人とひとつ軒(一遅)    
義妹との距離が近づく障子貼る(兎子)    
幼くして逝きし妹秋の服(紅螺)     
鬼灯に亡き妹の魂(たま)宿る(尚哉)    
妹嫁ぐ宵いっぱいの虫時雨(鬼禿)   
母となる妹待つ庭のめはじきや(なつめ)   
妹は星の語りべ秋のペガサス(弥生)  
妹の別人ぶりや秋祭(下戸)   
妹の零余子摘む手に夕陽さす(玲滴)    

【踏切】
踏切や願う間もなし流れ星(下戸)   
踏切の向こうに父が秋の暮(紅螺)   
地球中 止まぬ踏切 警報機(鬼禿)  
踏切に喪服とコスモスの二列あり(孑孑)   
似た背中追へば踏切無月かな(弥生)   
踏切や渡る人なき尾花風(なつめ)   
踏切に幻を見し残暑かな(尚哉)    
小さなトンネル小さな踏み切り秋深し(孝多)   
遮断機あがり一斉に秋渡る(一遅)  
踏み切りにコスモス揺れて秋の風立つ(玲滴)  
わが家まで踏切ひとつ星月夜(すかんぽ)   
踏切を行ったり来たり赤とんぼ(矢太)   
遮断機のむこうに欠けた月と君(虚視)  
鳥渡る踏切の空旅心(茘子)     
踏切に梨が転がる目を逸ら(兎子)   

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●色即是喰ふ 秋茄子(鬼禿)
鑑賞短文=たかが茄子を人生観にまで昇華させた語呂合わせ。こういうの大好きです。(矢太)

●野分立つ永久の微笑み野の仏(紅螺)
鑑賞短文=何があってもそこにいる。確かな存在が頼もしい。叶わぬ祈りも受け止めてくれそう。(兎子)

●さしすせそ何も足さずに秋の茄子 (下戸)
鑑賞短文=さしすせそで始まる意外な展開。かと思えば、調味料のこと。 秋茄子の美味しさが存分に表現されています。(すかんぽ)

●義妹との距離が近づく障子貼る(兎子)
鑑賞短文=障子貼りも昔は女たちの仕事でした。新しい家族ともこうした家事を通して心を通わせたのでしょう。心が温まる句です。(なつめ)

●遮断機あがり一斉に秋渡る(一遅)
鑑賞短文=たぶん二学期を迎えた賑やかな学童たちでしょうか。秋物に衣替えした人々もいるでしょう。秋の荷いっぱいの軽トラも走って行ったでしょう。(孑孑)

●遮断機のむこうに欠けた月と君(虚視)
鑑賞短文=言葉の選び方が句に美しいリズムを生んでいるとおもいました。踏切とせずに遮断機としたこと、なんとか月にせずに欠けた月としたことなどが句を趣深くしているとおもいました。(弥生)

●妹の別人ぶりや秋祭(下戸)
鑑賞短文=この句の「妹」とはどんな人か?兄から見た妹なのか?姉から見た妹なのか?両親から見た妹なのか?近所の人から見た妹なのか?いろいろ想像してみると、とても楽しい句です。佳句をお示しくださいまして有難うございました。(孝多)

●おっほほうひとくちにまいる秋なすび(孑孑)
鑑賞短文=「おっほほう」に一目ぼれ(?)しました。至福の作者の顔がみえるようです。
(玲滴)
鑑賞短文=焼茄子なのかなぁ。熱々のうちにほうばりたい気持ち、わかります。アッチッチという声まで聞こえてきそうです。俳句は楽しい!(虚視)

●妹と偽りて旅霧深し(虚視)
鑑賞短文=・・・・兄と妹で旅行、というのもなかなかないこと。バレてもいい、いや、バレてほしい、みたいな、複雑な感情。いやいや、奥深いです。(尚哉)

●秋茄子や空老ゆ風老ゆ人老ゆる(矢太)
鑑賞短文=深く心の中にしみいりました。今、この歳でなければわからない気持ち。(茘子)

●野分立つ小諸浅間は雲の中(鬼禿)
鑑賞短文=吹く風も肌に冷たく、高原の秋は物寂しいですね。心にしみます。(紅螺)

●秋なすび丸いお尻をひとつ拭き(一遅)
鑑賞短文=丸いお尻をひとつ拭き・・・家庭のやさしさ、温かさが伝わってきます。(下戸)

●妹を置き去りにして鬼やんま(すかんぽ)
鑑賞短文=兼題「妹」と季語「鬼やんま」の距離感が見事ですね。読む人にそれぞれの妹像を描かせます。気持ちのいいイラストのようです。赤とんぼでなく鬼やんまがミソ。飛び方が違う。(鬼禿)

●母となる妹待つ庭のめはじきや(なつめ)
鑑賞短文=どうも自分は謎めいた俳句が好きなようだ。益母草とも呼ばれる産後の妙薬メハジキを季語に、子供を産んだばかりの妹を迎える。この仕組まれた句は憎い。(一遅)

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≪今月の天地人≫

総合天:孑孑さん 45点
        代表句=おっほほうひとくちにまいる秋なすび
総合地:紅螺さん 31点
    代表句=秋茄子の青紫や樽を知る
総合人:下戸さん 30点
        代表句=妹の別人ぶりや秋祭り
        
以上、9月の結果は、8月から参加された孑孑さんが、一転、大量得点。秋茄子の美味しそうな臨場感に、得点をさらわれました。孑孑さん、おめでとうございます。

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≪幹事より、ひと言≫

14・15号と矢継ぎ早やに来る台風の最中、(虚視さん!宮崎大丈夫でした?)「野分立つ」とノー天気な兼題を出してしまいました。困られたことでしょう。
ほかに「妹」「踏切」無季の兼題+季語=新境地の句も多く生まれたようです。全体にそれぞれのドラマの1カットを演じておられます。共鳴点も多く秀作も沢山ありました。
拙い題に関わらず素晴らしい作句をありがとうございました。
ただ私感ですが、昨今、異常なほどの世界的な鬱事(戦争・飢餓・疫病・温暖化、そのうえ馬鹿げた国葬など)に対して、俳句17文字では何も言えないものなのでしょうか。
読み手の不勉強でしょうか、その手の句がなかったようでした。過日、元首相が撃たれた日、読売が載せた石田五千石の句《万緑や死は一弾を以て足る》を、私は忘れられません。
皆さんからご意見をいただければありがたいです。(鬼禿)

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≪孝多より、ひと言≫

何冊か、手元の歳時記で当ってみると、「秋茄子」の説明には、(ちょっと、大げさに申せば)、どれにも載っている「事実」があることが分かりました。
「秋茄子は嫁に食わすな(棚に置くとも)」です。
しかもこれには、いくつもの解釈があって……
ひとつは、美味だから、もったいなくて、嫁には食べさせられない、というのと、体が冷えるから、というのと、さらにもうひとつは、種(たね)が少ないためにエンギをかついで、子孫のハンエイ(繁栄)の妨げになることを怖れてのことである……とまで説明している歳時記があります。それぞれに懇切・丁寧です。勿論、例句もあるし。
比べて読んでみましょう。時には「歳時記読み」も楽しいものです。

                    令和4年9月末日   多比羅 孝多
                    
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今回、≪幹事より ひと言≫で投げかけられた課題は重いものでしたが、早速メール上に異論、反論が寄せられました。オンライン句会ならではだと思います。そして、誰かの意見で結論が出るるわけではない、でも思ったことは口にする、投げる側も、応える側も、皆さん、楽しい句会にしたいと思っている。こんな自由な雰囲気がこふみ会が長く続いた所以だと思わされました。ちなみに私は新参者です。
                                                     (編集 横幕)



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