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日めくり汀女俳句 №105 [ことだま五七五]

十二月二日~十二月四日

   俳句  中村汀女・文  中村一枝

十二月二日
木枯の吹き抜けんとす人波に
       『薔薇粧ふ』 木枯し=冬

 一年ぶりに、太鼓集団「鼓童」の公演を見に行った。私は太鼓が好きで、ここ十年ほど鼓童の公演、林英哲の大太鼓、あるいは毎年国立劇場である「日本の太鼓」もよく聴きに行く。大太鼓の響きが母親の胎内で聞いた最初の音、心臓の鼓動につながるところから、鼓童と命名したとパンフレットにあった。確かに、大太鼓の最初のひと打ちは打ち手によって、ずーんとおなかの底に響き渡る。その感触に魅せられたのが、太鼓を好きになった始まりである。
 若者の、男たちの躍動するいのちのきらめきに心をゆさぶられる。

十二月三日
都鳥行きつくまでの道のりに
        『芽木威あり』 都鳥=冬

 友達が本屋で『源氏物語』を求めると、セットでございますね、と瀬戸内寂聴さんの『源氏物語』を出してきたそうである。彼女 は母校のオープンスクールや、他のカルチェアの教室で『源氏物語』を聴講しているが、どこへ行ってもいつも満員だそうだ。
 私も、高校時代与謝野晶子の源氏を読んでから、谷崎源氏も、少しばかりは原文も、そしてその度ごとに魅力にひかれている。八百年も前に女性の手で書かれた小説、それだけでも凄いことなのに、まったく時世の違ってしまったような現代になお、生きて語り継がれている。それも圧倒的に女性の心にアピールしているのだ。

十二月四日
時をりに夜風は強し聖樹市
        『都鳥』 聖樹=冬

 十二月に入ると、いよいよ町は歳末に向かって動き出す。ここ何年かの傾向だが、東京の住宅地では、クリスマスイルミネーションや玄関のデコレーションが年々華やかになり、街行く人の目を楽しませてくれる。クリスチャンでもないのに、と目くじら立てることもないだろう。
 犬の散歩をしていると、いろんな家で趣向をこらした屋内外のライトアップや玄関先の飾りつけが目に入る。毎年洗練され、色も形もさまざまな工夫があって楽しい。世の中暗い事が多いから、せめて見かけだけでもほんのりした気分でいたい。

『日めくり汀女俳句』 邑書林



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