検証 公団居住60年 №117 [雑木林の四季]
第5部 存亡の岐路に立つ公団住宅
国立市富士見台団地自治会長 多和田栄治
3.機構賃貸住宅「改革」のシナリオー団地統廃合と継続家賃総値上げ
2)「団地の統廃合」の名で国公有地跡地処理をねらう
閣議決定が都市機構に「団地の統廃合」の加速化をせまった新たな局面として、国公有地跡地処分のねらいも見逃せない。
近年各都市に庁舎移転・合庁、公務員宿舎廃止、学校の統廃合などで空間地となった国公有地が数多く見られる。「骨太の方針2014」(経済財政迎根改革の基本方針)は「国公有財産の最適利用」を指示しており、財務当局を先頭に地方自治体等にたいし跡地処理のための「地域・まちづくり」(エリァマネジメント)、定住促進・市街地活性化を名目に「コンパクトシティ計画」を推進している。この一連の動きが機構に「近接地」取得を可能にさせる法改正となって現われ、国公有地の跡地処理が、機構の団地統廃合の新たなねらいとして浮上してきている。
そのための法改正が2015年6月19日成立の「独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律」であり、郡市機櫨淡11条13項を一部改正し、17条の2を新設した。
① これまでも団地建替えのさい機構に「隣接地」の取得は認めていた。法改正をして新たに「近接地」(飛び地)の取得をも可能にした。
① 建物を除却したあとの整備敷地の譲渡、賃貸は公募が原則であり、「応募者がいなかった場合にかぎり」機構に業務、投資を認めてきた。法改正をして新たに「第17条の2」を設け、機構が規定する事業に「共同して投資をしようとする民間事業者からの要請」があれば、公募手続きは不要とし、機構が投資できることにする。機構は、これまで参画できなかった初期段階から民間と共同出資して開発型SPC(特定日的会社)を立ちあげ、共同事業をおこなえる枠組みをつくった。
ここで国土交通省が想定する「近接地」とは、主に国公有地をさす。団地の統廃合をすすめるのは、遊休地化した国公有地に建て替えさせるのが目的なのだろう。機構が既存建物を活用する方針を立てている団地についても国公有地への建て替えを促し、既存団地を壊し、跡地に公共的施設の誘致、民間売却を予定している。
機構による「近接地」取得のねらいが、国公有地の跡地処理にシフトし、「コンパクトシティ化」という名の新手の市街地再開発を成長戦略に仕上げようとする思惑にあるとも読みとれる。
公団・機構は、かつては田中角栄金脈につながる広大な山林・原野を買い込み、バブル崩壊後は銀行・大企業の不良債権化した土地を買い取り、こんどは空閑地となった国公有地を引き受ける。借金をしての取得だから、機構財務の借入金依存構造、不健全化は進むばかり。増大する利払いと償還のツケは家賃値上げとなって居住者に回され、住みなれた団地から無理やり追い出され、育ててきたコミュニティはつぶされることになる。
しかし「移転については居住者の同意が前提となる」と国交省の説明文書も注記せざるをえず、国策とはいえ、上記のような移転要請に借家法上の正当事由がないことはいうまでもない。
『検証 公団居住60年』 東信堂
『検証 公団居住60年』 東信堂
2022-08-13 10:34
nice!(0)
コメント(0)
コメント 0