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検証 公団居住60年 №117 [雑木林の四季]

第5部 存亡の岐路に立つ公団住宅

   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治
 
3.機構賃貸住宅「改革」のシナリオー団地統廃合と継続家賃総値上げ

 今回の閣議決定が従来と大きく異なる特徴は2つある。1つは「民営化」の文言が消えたこと、もう1つは、都市機構を5年ごとに組織および業務を見直し、廃止までの橋渡しを使命とする「中期目標管理型の法人」としながらも、この先20年、2033年度までの経営戦略をかかげ、「持続的な機能実施」を強調しはじめたことである。
 政府年来の機構賃貸住宅「民営化」方針も高額家賃物件の売却方針も、現実にはその見通しも立たず、破たんを認めざるをなくなったのだろう。「民営化」とは、公共が担うべき事業を外部の民間企業に移すこと。当面外部化はできず、機構そのものの営利企業化を強めることで完全民営化を先延ばしする、せざるを得なかった。いわば「政府の民営化」に踏みだしたといえる。
 都市機構の存在にかんしては独立行政法人の使命を変え、業務内容は変更しても組織自体の廃止は視野から外した。国土交通省住宅局長も機構理事も口をそろえて、民主党政権から自公政権にもどり今回の閣議決定のおかげで「もう民営化も機構廃止の心配もなくなった。あとは経営体として生き残るだけ」と語っていた。都市機構が「経営体として生き残る」こと、閣議決定の実施が、公団住宅居住者にとっては何を意味し、何をもたらすか。

1)賃貸住宅ストック再生・再編への実施計画
 閣議決定が団地再生・再編の「具体的な実施計画」を2014年度内に策定するよう指示したのにたいし、機構は今後の検討方針だけを述べた文書を「実施計画」と題して発表し、個別団地ごとの「方向づけ」は2018年度までに先送りした。
 ストック再生・再編方針は2007年12月の発表以来、18年度までの12年間に約10万戸着手、5万戸削減を計画、実績は13年度時点で、7年間に5万戸着手、2万戸削減したという。その間1.8万戸を新規建設しているから、実際に削減したのは3.8万戸である。
 賃貸住宅の総管理戸数では、06年度末の76.9万戸が13年度末で74.8万戸、18年度末には72.2万戸に減少する。つまり以後5年間に新規0.5万戸増、3.1万戸を削減する計画である。15年後の2033年度末には65万戸程度を目標とする。
 2018年度末までに団地ごとの具体的な再編計画を確定するにあたっては、従来の団地別整備方針を見直し、つぎの新たな2つの視点から評価、方向づけるという。①団地ごとの収益性に着目した評価と投資の実施、②同一生活圏とみなすエリア単位での団地再編とその加速化。この視点から現在約75万戸の団地をつぎの2つに大別する。

 ①「戦略的に投資を検討して収入増を図る団地」47万戸(うち「収益性が高く、集中投資を検討する団地」17万戸)
 ②「エリア単位の団地再編や団地単位の集約等により規模縮小を検討する団地」28万戸(このなかに「近接地建て替え」の新たな項目をふくめている)

 機構が示した投資型、縮小型の団地2分法は、団地経営の考え方の2本柱でもあり、すべての団地について収入増と資産縮小の二兎を追うことになる。これにたいし居住者は、正当事由制度に守られた借家権、居住の権利への自覚を高め、自治会は「当事者」と.して、また「団地の主人公」として自治体をふくめ機構の3者でねぼり強く協議し対応する構えと力量が求められている。

『検証 公団居住60年』 東信堂



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