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こふみ会・句会物語 №108 [文芸美術の森]

こふみ会・句会ものがたり
 ※コロナ禍による在宅句会 その22
「行くも良い良い、行かぬも良い良い」メデイアは多彩 
 『麦嵐』『早乙女』『古茶』『鰻』

                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

鬼禿氏と一遅氏の連名にて、≪令和4年5月の句会≫の案内状が送られました。
今回はネットとリアルの並進(へいしん)句会です。下記のとおり。ネットとリアルの同居です。

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こふみ会会員各位 『五月こふみ会』のお知らせ

薫風の五月。久しぶりに正調『こふみ会』を開くことになりました。
ただし諸事情で外出できない方のために、電話・メイル・FAX等でも参加できるように致しました。どうぞよろしく。
●開催日=5月15日(日)午後1〜3時ころ
●会場=表参道・TCC 会議室
●兼題=【麦嵐】(麦の風)と【早乙女】
●席題=当日発表(2句)

●ご注意=下記のとおり
*当日TCC・生句会に出席する方は筆ペン・メモ紙と景品3個(全部で1000円程度の食品がよい)を持参して下さい。
*短冊 お弁当・ビール・茶等は会が用意します。

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当日は会場に11名が集まりました。引っ越し作業に忙しい虚視さん、軽井沢に転居していた矢太さんも駆けつけました。来られない兎子さん、茘子さんは電話での参加となりました。医師から注意を受けている孝多氏は事前に送信のあった兼題のみの参加。ということで、出そろった句は下記のとおりです。(14名 54句)

≪麦嵐≫
麦嵐 新品の自転車 背なを押す (兎子)
麦の風吹きわたる日のひとつの死 (弥生)
地平へとうねる大地や麦嵐 (すかんぽ)
半袖の声駆け抜ける麦の風 (なつめ)
草原を駆ける馬あり麦嵐 (玲滴)
野良猫の七厘覗くや麦の風 (下戸)
スケッチの 紙吹き上げて 妻嵐 (紅螺)
遠く8000キロ 傷土ぞ痛し 麦嵐 (鬼禿)
麦嵐今日少年は家を出る (茘子)
麦嵐平穏の日々をかみしめる (一遅)
青のなか 黄熟の麦の 嵐かな (孝多)
別れとはまた逢うことか麦嵐 (虚視)
オデーサははるかに遠し麦嵐 (矢太)
妖精の渡り給ふか麥嵐 (尚哉)

≪早乙女≫
早乙女の唄に晴れ間の覗きけり  (すかんぽ)
腰伸ばす早乙女の頬泥光り  (なつめ)
早乙女は揃いの白髪過疎の村  (虚視)
早乙女の肉置き(ししおき)うれし赤けだし  (鬼禿)
早乙女等はいずこへ消えし令和の田  (茘子)
早乙女の生きて動くや北斎画  (下戸)
裏声で 唄う早乙女 雨もよい  (紅螺)
早乙女の声こだまして谷戸の風  (玲滴)
早乙女はみんな東京さ行ったげな  (矢太)
早乙女の揺らす水面に脛(はぎ)白し  (尚哉)
昔語りのさをとめ赤の裡かな  (弥生)
早乙女の田螺になりたやふくらはぎ  (一遅)
植え終えて早乙女すっくと立ちにけり  (孝多)
早乙女の 我を捨て去り 街を征く  (兎子)

≪古茶≫
古茶ですね前を向くのが無理な日は (兎子)
古茶いれて来し方思う昼下り (紅螺)
古茶がいい笠智衆の北なまり (鬼禿)
古茶淹れて何日続く雨空ぞ  (弥生)
「なぁ」と掛け「さうね」と返し古茶新茶  (すかんぽ)
世の常の勧めに背き古茶を汲む  (尚哉)
古茶新茶並んで座る母娘  (茘子)
峠にて古茶飲む人の白き眉  (下戸)
古茶渋く五十年目の同窓会  (一遅)
喧嘩して素知らぬ顔で古茶を出し  (なつめ)
古茶いれて今日はたねやの水ようかん(玲滴)
一年でこんなに老いちゃった古茶すする (矢太)
古茶もよし変哲も無き庭なれば  (虚視)

≪鰻≫
鰻割く男に修羅の過去のあり  (一遅)
鰻屋でジェンダー語る友達のカレ (兎子)
ふるさとをいまだに知らぬ鰻かな  (虚視)
鰻丼を初めて食った日の夏空  (鬼禿)
大鰻会いにはるばる薩摩富士  (弥生)
路地裏に鰻匂うてあらがえず  (尚哉)
弁当を開けて声立つ鰻かな (すかんぽ)
胃を掴む道いっぱいの鰻の香  (茘子)
古き友鰻待つ間の長話  (紅螺)
名店の格を上げるや鰻顔 (下戸)
鰻丼の味もわからず句会かな (なつめ)
年経りて鰻も梅の身軽さよ  (玲滴)
何万のうなぎ鳴く鳴け黒き海 (矢太)

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【天句の鑑賞】
各人が「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に述べあいました。

●麦嵐今日少年は家を出る (茘子)
鑑賞短文=麦の収穫のころに吹く麦嵐のさわやかさと、ひとり立ちするのでしょうか家を出る少年のさわやかさが響き合う気がします。(弥生)
鑑賞短文=「私も家を出たのは、そんな季節だったなあ」と誰しもが思い当たる共感!
誰もみな家を出て一握の麦となったのだもの。(矢太)
鑑賞短文=うねる麦は少年を新しい世界へと押し出す。(虚視)

●オデーサは遥かに遠し麦嵐(矢太)
鑑賞短文=大きな事件や事故で犠牲者が出るたび、当事者でないことの何とないうしろめたさを感じてしまうのですが、ウクライナはまさにそのまんまです。「はるかに遠し」が重いです。(玲滴)

●古茶ですね前を向くのが無理な日は (兎子)
鑑賞短文=あります、あります・・自分の全部を否定したい日、そんな日は いつもの茶をズズズ〜っと静かにいただく・・か (鬼禿)

●古茶もよし変哲も無き庭なれば (虚視)
鑑賞短文=なにもない日常も句にするうまさが光ります。(一遅)

●別れとはまた逢うことか麦嵐 (虚視)
鑑賞短文=本日のこふみ会にまことにふさわしい天句ではないでしょうか。(下戸)
鑑賞短文=花に嵐のたとえもあるぞ・・・と井伏鱒二は言ったけど、御句の麦嵐は、虚視さんへの挨拶句にふさわしい風となった。(すかんぽ)

●古茶いれて今日はたねやの水ようかん (玲滴)

●「なあ」と掛け「さうね」と返し古茶新茶 (すかんぽ)
鑑賞短文=長年連れ添った夫婦の苦味や甘味の歴史が表現されていると思います。(なつめ)

●早乙女の生きて動くや北斎画 (下戸)
鑑賞短文=実際の早乙女は見たことがないけれど、北斎の画なら、強い既視感を誘います。空気感の中に感情移入できます。(尚哉)

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≪今月の天地人≫

久々のリアル句会です。詠題の下にメンバー星取表を張りだし、得点記入していきました。
結果は下記の通りです。

総合天は、今回のタイトル冠にふさわしく虚視さんで44点のダントツ。
代表句=「別れとはまた逢うことか麦嵐」
宮崎へ行かれても、こあみ句会には、ぜひ、引き続きご参加ください。

総合地は、すかんぽさんと、リモートの茘子さんが同点の34点です。
代表句(茘子さん)=「麦嵐今日少年は家を出る」
代表句(すかんぽさん)=「なあ」と掛け「さうね」と返し古茶新茶

総合人は、23点で尚哉さん。
代表句=早乙女の揺らす水面に脛(はぎ)白し

◆上位の皆さん、おめでとうございました。

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句会の間、電話の対応も含めて幹事さんは大奮闘。
幹事さんが手配してくれたお弁当は松屋「美国屋」の鰻です。
幹事の鬼禿さんが、勤め始めて初めて食べたのがここの鰻だったという、思いいれのあるお弁当でした。
そして、これも松屋で調達した「たねや」の水ようかん。またはゼリーがデザートについていました。

2022.5月4 のコピー.jpg
久々のリアル会場でもマスクして作句の風景
2022.5月7 のコピー.jpg
これは「松」ですね!美国屋の鰻弁当

2022.5月8.jpg
壁に貼り出された絵入り兼題と席題も久しぶり。

2022.5月9 のコピー.jpg
天・地・人の3人(左から尚哉、虚視、すかんぽさん)
得点表のコピー.jpg
後日幹事さんよりメールで送られて来た星取表   

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≪孝多より、ひと言≫

リアルとネットの折衷句会(並進句会)のアンケートについては……
全員に個人的なメイワクが生じる恐れがあるので……
その点を重く見て……貴重な資料として保存しながら……
ブログには載せない……
ということに致しました。
失礼しました。          (孝多)
                     令和4年5月吉日

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2年ぶりに開かれた正調『こふみ会』は、リアルとネット、双方の良さを改めて確認できた句会になりました。
こふみ会って、良い会ですね、と、つくづく思います。皆さん、タイヘンな時こそ、強く結束します。その意気込みで、500回を越えてつづいてきたこの句会を、みんなして、更に続けていけることを願っています。
『往きは良い良い、帰りは……物語』から始まったこのブログもあしかけ5年になりますが、この間にも、みなさんの意見を採り入れながらタイトルを変えたり、読みやすくする工夫もしてきました。これからも微力ながらお役にたちたいと願って居ります。

                                        (編集 横幕玲滴)

                    

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