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行くも良い良い、行かぬも良い良い……句会物語 №106 [文芸美術の森]

行くも良い良い、行かぬも良い良い……句会物語
こふみ会通信 №106 (コロナ禍による在宅句会 その21)
「桜鯛」「走り梅雨」「春愁」「蝶」
                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

下戸氏と一遅氏の連名にて、≪令和4年4月の句会≫の案内が全会員に届きました。下記のとおりです。

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こふみ会『4月小網句会』のご案内です。4月幹事  一遅・下戸
目黒川に花筏が浮かぶと、1年で一番過ごしやすい季節が始まります。
ちょっと遅くなりましたが、4月のこふみ会のご案内です。
今月は、いつもよりスケジュールがタイトになりますが
短期集中、イマジネーションをポンと飛躍させて作句しましょう。
よろしくお願いします。

● 兼題 【桜鯛】 【走り梅雨】 【春愁】 【蝶】
● 上記兼題4句を4月16日(土)〜18日(月)に投句して下さい(厳守)
● 選句締切は4月27日です。
投句は下の幹事宛てにお願いします。
   幹事=森田一遅/大取下戸

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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。14名 56句

【桜鯛】
海馬緩む桜鯛一尾跳ねるとき(矢太)
桜鯛えびすがひとつ大あくび(一遅)
桜鯛姿凛々しく板の上(紅螺)
隠し事ぜんぶ打ち明け桜鯛(下戸)
桜鯛左刺身に右蒸しに(尚哉)
瀬戸内に季節告げるや桜鯛(玲滴)
さくら+目出たい=桜鯛(a+b≑c) (鬼禿)
桜鯛良い名をもらったね君は(孝多)
水を切る鰭のとがりも桜鯛(すかんぽ)
去る春の色を喰らうぞ桜鯛(兎子)
頬に鱗光らせ料る桜鯛(弥生)
桜鯛卓上まなかに置かれをり(小文)
桜鯛ただいっときの恋の色(茘子)
染付の微かに透けて桜鯛(虚視)

【走り梅雨】
走り梅雨草木虫魚蘇生させ(茘子)
万物の生命の匂い走り梅雨(鬼禿)
子も母もこぶら濡らして走り梅雨(すかんぽ)
走り梅雨前線あそこ雲の龍(尚哉)
核の傘ズシリと重し走り梅雨(下戸)
走り梅雨濡れた裾ふく軒の下(紅螺)
走り梅雨濡れたからだで駆けてこい(矢太)
走り梅雨小さき命の慈雨となれ(一遅)
忘れ傘今はいづこに走り梅雨(弥生)
ストライプシャツにアイロン走り梅雨(小文)
田の緑やや広がりて走り梅雨(虚視)
もう来たか走りの梅雨の静かなる(孝多)
緑道の童の像や走り梅雨(玲滴)
巣立ちの日決意をくじく走り梅雨(兎子)

【春愁】
春愁か日差しのぬくさに涙ぐむ(兎子)
春愁や船着き場まで2往復(下戸)
孫去りし部屋片付けに春愁う(玲滴)
春愁やラジオは男の長科白紅螺(尚弥)
春愁やまた今日も探しものしている(一遅)
春愁や誰も笑わぬオンライン(尚哉)
日々春愁うれいの秋とはまた違う(孝多)
春愁やとぎれとぎれに二胡聞こゆ(弥生)
春愁や車窓の町の遠ざかり(虚視)
春愁といふ季語虚しジェノサイド(矢太)
春愁の真中に御座す弥勒像(茘子)
春愁の胸にカヌーを浮かべけり(すかんぽ)
春愁や喧嘩相手がいない席(鬼禿)
春うれい深呼吸して髪束ね(小文)

【蝶】
着地まで16コマの蝶となる(下戸)
キャベツ食みやがては白き蝶と飛べ(弥生)
生きている嬉しさに蝶舞い立ちぬ(孝多)
蝶々や黒海渡れ赫き地へ(矢太)
路地裏を広く遊ぶやしじみ蝶(すかんぽ)
しばらくはここにいるよと肩の蝶(小文)
独り居の猫の額に蝶の舞う(玲滴)
蝶々が園児のぼうし数えゆく(鬼禿)
初蝶ですお届け物ですごきげんよう(尚哉)
蝶が舞うひらひら笑う蝶のよに(兎子)
夢というかたちのあらば蝶なるか(虚視)
戦火の報夢に無数の蝶が哭く(一遅)
人混みの街に舞立つ蝶一羽(紅螺)
銀座裏鳳蝶ふわりビルに消ゆ(茘子)

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●春愁の胸にカヌーを浮かべけり(すかんぽ)
鑑賞短文=いま鬼の胸はウクライナでいっぱい。そんな隙間にカヌーを胸の上に浮かべる血
              は・・。うまい。ほんとうにカヌーでも笹船でも浮かべたい気持ちです。
             (鬼禿)
鑑賞短文=何となく気だるく心の晴れぬ時、心にヌーを浮かカべることは詠者にとって癒し
             であり希望の象徴なのでしょう。魅力的な句でした。(弥生)

●しばらくはここにいるよと肩の蝶(小文)
鑑賞短文=ふと、蝶と心が通い合うかに思える瞬間が見事に捉えられています。春ですね
              ぇ。(虚視)

●夢というかたちのあらば蝶なるか(虚視)
鑑賞短文=蝶は、ギリシア語でプシュケー。人の魂の変じたものです。独自の切り口で、兼
              題を消化されていますね。(尚哉)

●ストライプシャツにアイロン走り梅雨(小文)
鑑賞短文=ストライプ柄が雨垂れを想起させて、とてもいい取り合わせです。アイロンの乾
              いた印象が走り梅雨と響き合っています。(すかんぽ)

●万物の生命の匂い走り梅雨(鬼禿)
鑑賞短文=錆びついた五感を蘇らせてくださる句です。(小文)
鑑賞短文=さまざまな命のはじまる季節。雨の匂いの中に希望が見えます。いい句ですね。
             (一遅)

●春愁やとぎれとぎれに二胡聞こゆ(弥生)
鑑賞短文=二胡の音色は、心ふさぐ春の心情そのものですね。(紅螺))

●路地裏を広く遊ぶやしじみ蝶(すかんぽ)
鑑賞短文=中7の「広く遊ぶや」で決定でしたね。小さな蝶の舞う姿や、まわりの様子など
              までも、くっきりと浮かびあがって来ます。良い句をご提示いただき有難うござ
              いました。(孝多)

●春愁やまた今日も探しものしている(一遅)
鑑賞短文=年老いてひょいと物を置いて置き忘れ、探しまわっては落ち込む日々、これが春
               の季節ともあれば憂いはなおのことと、身につまされる句でした。(玲滴)

●去る春の色を喰らうぞ桜鯛(兎子)
鑑賞短文=発想の秀逸さに脱帽!(茘子)

●桜鯛ただいっときの恋の色(茘子)
鑑賞短文=桜鯛は季節限定の名前、それを「ただいっとき」としたところが上手い。色っぽ
              い。恋の色のくだりは、感動的です。(下戸)

●忘れ傘今はいづこに走り梅雨(弥生)
鑑賞短文=あの忘れ傘、この忘れ傘。いろんな忘れ傘があるなあ。でも、どの忘れ傘も思い
              出せない。(矢太)

●初蝶ですお届け物ですごきげんよう(尚哉)
鑑賞短文=ほのぼのと、あっけらかんとして、のびのびとしている。暗いニュースばかりの
              この時期に、心が軽くなりました。(兎子)

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≪今月の天地人≫

【天】鬼禿四三点
    代表句=万物の命の匂い走り梅雨
【天】すかんぽ四二点
    代表句=春愁の胸にカヌーを浮かべけり
【人】弥生三五点
    代表句=春愁やとぎれとぎれに二個聞こゆ

◆上位作の皆さん、おめでとうございました。

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≪幹事より、ひと言≫

パンデミックや戦争など、なかなか日々の季節感を明るく楽しむ日常ではない時代です。こんな時、自分の気持ちと俳句を、どのように折り合いを付けるのか、あまり答が見いだせずにいます。これからも、こふみ会にその答を探し続けていきたいと思います。  ( 一遅)
                                                 


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