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日めくり汀女俳句 №104 [ことだま五七五]

十一月五日~十一月七日

    俳句  中村汀女・文  中村一枝

十一月五日
玉霰(あられ)雪ゆるやかに二三月
           『汀女句集』 霰=冬

 医療ミスの多きにははじめの内驚いていても、段々なれっこになる。痛院に入院している時も点滴のぴんを見ながら、薬間違えたらこわいな、と不図思った。絶対起きる筈はないという確信があったから想像もできる。今ではそれが現実だからこわい。ただ入院していると、病棟のお医者さん、看護婦さんの忙しさはいやでも目に入る。当時、待遇改善のビラが壁にはられていたがひそかに共感していた。あれだけ働いたら、疲れもたまる、注意力も散漫になるのは当然に思える。それでも笑顔を絶やさない多くのナース達はやはり、白衣の天使にみえた。

十一月六日
雨寒き池に金魚のよく泳ぐ
        『芽木威あり』・寒し=冬

 駅の改札口を出た所で、夫婦らしい二人がしゃがみこんでごそごそやっている。やがて二人の間から白いプードルがぴょんととび出した。バッグの中に入れ電車に乗ってきたのだろう。十年前には同じことをしていた私は、思わず笑ってしまった。ずっと犬を乗り物に、それも素で乗せて貰いたいと思ってきたが、いまだに龍やバッグに入れないと乗車拒否。かつて十三キロの犬を運んできた体力はもうない。犬の乗車賃をとるなり、人犬共用車輌を作るとか、1Rも考えてくれないかな。もちろん飼い主のマナーは一番として。

十一月七日
吹きもどす風ぞはげしき落葉かな
         『芽木威あり』 落葉=冬
 辻井喬氏の近著『風の生涯』。モデルになっているのが戦後異色の経営者といわれ、敵にも味方にも畏怖された元産経新聞、フジテレビ、文化放送社長水野成夫。私の父尾崎士郎とは肝胆相照らす友人であった。私はその緑で文化放送に入った。
 本を読みながら、子どもの頃接したおじさんの茫洋として温かい人柄が懐かしく思い出された。彼は自分流の全社再建のため辣腕(らつわん)を振い、多くの人に憎まれもした。私の友人たちの中には、いまだに彼を敵としている人が多い。同じ一人の人間の裏表、どちらも真実だと思う。

『日めくり汀女俳句』 邑書林



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