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行くも良い良い、行かぬも良い良い……句会物語 №105 [文芸美術の森]

行くも良い良い、行かぬも良い良い……句会物語
こふみ会通信 №105 (コロナ禍による在宅句会 その20)
「青踏」「山笑ふ」「囀り」「流氷」
      俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

矢太氏と小文さんの連名にて、≪令和4年3月の句会≫の案内が全会員に届きました。下記のとおりです。

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小網句会のみなみなさま

どこまでつづく網句会。
どこまでつづくコロナかな。
三月小網句会のご案内です。

「兼題」 
 青鞜
 山笑ふ
 囀り
 流氷
「青踏」は、このままでもいいし「青き踏む」と開く使い方でもいいです。青鞜会の如しです。もちろん本来の「踏青」でもよし。ということでお使いください。

●三月十日までに、幹事(矢太、小文)宛に、投句お願いします。
●選句締め切りは三月十七日。

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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。14名 56句

「青き踏む」 
青き踏む遠国の戦争憂いつつ (一遅) 
青き踏む戦車はいのちの赤き踏む(矢太)
青き踏む 一歩一歩よ 足の裏 (孝多)
放たれて舞うごとくなり青き踏む(玲滴)
子と吾れと夫を支へて青き踏む (弥生) 
一歩二歩小さき足跡青き踏む(小文)
いざゆかん青鞜の道まだ険し(兎子)
踏青や地球はアンダンテにて回る(尚哉)
青鞜のアマゾネス等は 愛を摘む (茘子) 
鳥 獣 日差し仰いで 青き踏む(紅螺)
踏青や柔らかく土脈打ちて (虚視)
ひまわりと青踏み躙(にじ)る狂キャタビラ(鬼禿)
青き踏む尻で背中で逆立ちで(すかんぽ)
末娘手作りドレスで青き踏む(下戸)

「山笑ふ」
雲間より光を浴びて山笑ふ(玲滴)
溪の音苔の匂いや山笑う(弥生)
眠たくてまだ眠たくて山笑う(小文)
急坂を登りきったら山笑ふ(兎子)
ゼフュロスに樹々くすぐらせ山笑ふ(尚哉)
あの時もそう 今年も山は笑はない(鬼禿)
ひかり号刺さるトンネル山笑ふ(すかんぽ) 
紫の暖簾くぐれば山笑ふ(下戸)
法螺貝の叫び走って山笑う(一遅) 
山笑ふ人ひとりだに笑はぬに(矢太) 
指で作る 小さなハート 山笑ふ(孝多) 
ふるさとの改札抜ければ山笑う(茘子) 
山笑う 獲物仕留めて 重い肩(紅螺) 
車窓より流れ去る村山笑う(虚視)

「囀り」
まだ下手な囀りありていとをかし(弥生) 
囀りやこぼるる音の枝葉より(小文)
囀りで夜があけるよと知らされる(兎子)
囀りをくぐりくぐって富士の前(一遅) 
囀りはスマホを啄く指ばかり(矢太) 
囀りを 聞くや両手を 腰に当て(孝多) 
ジャニーズのひと塊で囀れり(すかんぽ) 
アイフォンで庭の囀り採取して(下戸)
囀りに目覚める朝のぬるさかな(玲滴)
囀りにピーターと狼始まれり(尚哉)
囀りやなまり満載ローカル線 (茘子) 
絶え絶えの 囀り縄文 杉の中(紅螺)
囀りで迎える朝の真新し(虚視) 
総出演カーテンコールの囀り(鬼禿) 

「流氷」
流氷に青と黄色の風が吹く(小文)
岬まで流氷の鳴く宿ひとつ(下戸)
奇声あげ 流氷の群れ 岸離る(紅螺)
流氷の行き先だれも知らぬまま(矢太) 
流氷に 幻(まぼろし)か白い 熊を見し(孝多) 
流氷に別れの季(とき)を惜しみけり(玲滴)
オホツクに流氷吼える夜のありと(弥生) 
あてもなく令和を漂う流氷のごと(一遅) 
あの国と架け橋になれ流氷よ(兎子)
流氷寄す極東はいま波静か(尚哉)
オンザロック遥か想う流氷の音 (茘子) 
流氷や消え去るだけの長き旅(虚視) 
流氷の本音は九割水の下(鬼禿) 1
最果てに佇つや流氷鳴き止まず(すかんぽ) 

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●青き踏む尻で背中で逆立ちで(すかんぽ)
鑑賞短文=肉体の実感だけで、人生のすべてを表象した。でっかい叙情です。(矢太)
鑑賞短文=草を踏む喜びを全身で表すってこういうことなんでしょうか。春になった喜びが
     素直に伝わってきます。(茘子)
鑑賞案分=幼い少女が歓声をあげて、スカートを翻して春の訪れを喜んでいるのでしょう。
     読む方も心が弾みます(紅螺)
鑑賞短文=草の上で跳ねたりもするでしょう。嬉しい楽しい季節の訪れ。下5の「逆立ち」
     で決まりです。佳句をお示しいただき有難うございました。(孝多)
鑑賞短文=待ちわびた春が来た!全身でその喜びを表現している様子に幸せな気持ちになり
     ます。(小文)
鑑賞短文=そうなんです。絶対こうしたい。でも、靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、そっと裸足で立
     ってみる私です。この句は絶対、一遅さんだと思うのだけれど、違うかな。
    (虚視)

●溪の音苔の匂いや山笑う(弥生)
鑑賞短文=昔山を歩いていた頃、春になって雪解け水が流れる音を足の下に聞いたことや日
     陰の草の匂を嗅いだことを思い出しました。(玲滴)
鑑賞短文=清涼な空気があります。みずみずしい香りがあります。辛いこと、苦しいこと、
              嫌な出来事ばかりのこのときに、洗い流されるような情景です。(兎子)

●ゼフュロスに樹々くすぐらせ山笑ふ(尚哉)
鑑賞短文=ゼフュロスという言葉の選びで、自然界に命を吹き込み、句が壮大な叙事詩に変
     わった。うまい。(矢太)

●山笑ふ人ひとりだに笑はぬに(矢太) 
鑑賞短文=ウクライナ女性の泣き顔が目について、どうしても『山笑う』の句ができない。
     同じ考えの人の句を選ぶ。僕のよりうまい。(鬼禿)

●オンザロック遥か想う流氷の音 (茘子) 
鑑賞短文=オンザロックにやられました。流氷とのカップイングが文句なしにいいですね。
     流氷のなく音を肴に、一杯やりたくなりました。(下戸)
鑑賞短文=オンザロックの氷の触れあう音を聞きながら遥か最果ての流氷に思いを馳せる、
     ロマンチックでお洒落な句。 (弥生)

●流氷や消え去るだけの長き旅(虚視) 
鑑賞短文=まさしく、人生も業界も、流氷のごとく消え去るのみの旅ですね。(すかんぽ)
鑑賞短文=・・・・流氷は、タンチョウヅルと違い、元へと戻ることが出来ません。北海道
     へと押し寄せるのは、「死出の旅」なのですね。(尚哉)

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≪今月の天地人≫

天:虚視トータル55点
   代表句=流氷や消え去るだけの長き旅
地:すかんぽトータル54点
    代表句=青き踏む尻で背中で逆立ちで
人:弥生トータル26点
    代表句=渓の音苔の匂いや山笑う

◆上位作の皆さん、おめでとうございました。

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≪幹事より、ひと言≫

3月の小網句会の前にロシアの侵攻が始まり、世界中が不穏な空気に包まれました。皆さまからお預かりした句にはそのお心が反映されたものが目立ちました。
また、心浮き立つ句にも、早くそのような世の中に戻って欲しいと思わずにはいられませんでした。
そして天句に選ばれましたすかんぽさん、おめでとうございます。選者6人全てが「天」とは素晴らしいことです!  (小文)

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筆者休養のため、≪孝多よりひと言≫のコーナーは暫くおやすみします。
皆さま、お元気に。

                令和4年2月末日
                                                   (編集 横幕玲滴)

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