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雑記帳2022-4-1 [代表・玲子の雑記帳]

2022-4-1
◆3月中旬、シニアのための京都の料亭を巡るツアーがありました。今回は食レポをお届けします。

食べるのが目的とはいえ、折角京都まで来たのだからと、立ち寄った先は、観光地としてはさほど知られていない、宇治田原町です。名前からも判るように、周辺一帯は宇治茶の産地です。

京都市内を出て、車窓に茶畑が点在するのを眺めながら、瀬田川に沿って山道をたどること約1時間の所に宇治田原町はあります。山の斜面に小規模の茶畑が点在する風景は、郷里、四国中央市の新宮村(昨年ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さんの出身地です!)によく似ていました。谷を流れる川からは朝夕霧が立ち、その霧がおいしいお茶を生むと言われて、実は新宮茶はその味で全国一になったこともあるのです。

茶畑 のコピー.jpg
お茶畑

その宇治田原町は、江戸時代に永谷宗円が青製(あおせい)煎茶製法を開発したことで知られ、町は「日本緑茶発祥の地」とよんでいます。

日本にもたらされ栽培されるようになった茶は、春に摘み取った新芽を蒸すか、ゆでるかした後乾燥させたもので、茶葉の色は黒っぽいものでした。

青製茶葉製法は、乾燥させる前に「揉む」工程を入れることで、茶葉が緑色にしあがるのです。それまでのものを「黒製」と呼んだのに対して「青製」と呼ばれて、庶民の間でお茶が広くのまれるようになった江戸時代に、品質向上に大いに貢献したのでした。彼一人の発明によるというより、当時民間で流行り始めていた製法を確立して宇治茶の販路を広げたというのが実情でしょうか。
ちなみにお茶漬け海苔の永谷園の創業者は宗円の10代目の子孫にあたります。

宇治田原町にある正寿院(しょうじゅいん)は、駐車場でバスを下りてさらに、狭い坂道を1キロほどのぼった所にある、真言宗の寺院です。800年前、鎌倉時代に建立されました。猪目窓(いのめまど)と言われるハート型の窓や天井画が知られています。

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正寿院のハート型の窓

ハート形の窓など何が面白いのかと思っていたのでしたが、実はハート形の猪の目文様は仏教では重要な要素、1400年前の仏教伝来と同時にもたらされたものでした。厄除けとして様々な所に用いられ、鴨居の釘隠しにも猪の目を見つけることができます。

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釘隠し 猪の目文様が分かりますか?

重要文化財になっている、快慶作と言われる不動明王座像は、寺の所有であるにも拘らず、奈良国立博物館に寄託されています。小さな寺では文化財に指定した国の基準を満たせず、寺内に保管することができないのだということでした。

正寿院に通じる坂は狭いながらも歴史街道、名にしおう「家康伊賀越えの道」でした。本能寺の変を逃れた家康が命からがらこの道を駆けて堺までたどりついたのでした。
道筋に若い夫婦が看板を出している「茶園散歩」の店を見つけました。客は入場料として一杯500円のお茶を買って、飲みながら茶畑を巡る事ができます。若い感性を活かした、京都ならでは、宇治ならではの趣向だと思いました。

さて、夜はお目当ての「下鴨茶寮」の京懐石です。
弥生の献立には早春の食材が数多くちりばめられています。数えてみるのも一興かと。

●先付  蛤、独活、蕗、若布
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●向付    鯛、鴟尾(しび 西では鮪のことをいう)、縞鰺(しまあじ)
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●椀物  玉子豆腐、車海老、こごみ、碓氷豆腐摺り流し
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●八寸   細魚(さより)小袖寿司、赤貝ぬた和え、蕗の薹(とう)厚焼き、飯蛸、
      葉牛蒡、 鶏松風、蓬(よもぎ)麩田楽、白魚香煎
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●鉢物  信田巻き、鯛子、竹の子、天豆
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●焼物    鰆味噌漬け、独活のきんぴら、タラの芽のてんぷら
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●強肴  黒毛和牛、花山葵(わさび)、黄身卸し
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●食事  桜海老釜炊きご飯、留椀、香物 (京丹後産コシヒカリ使用)
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●水物  苺、甘酒ブラマンジェ
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●甘味  蕨餅

食後、むかえのバスを待つ間に、邸内の飾り物を見せてもらいました。
ちょうど雛飾りの季節、そういえば、今年は雛を見にどこにも行かなかったと思いながら、大正時代のお雛様を鑑賞しました。江戸と違って京雛は内裏の夫婦の位置が反対です。
薄暗い廊下に無造作に置かれた(勿論ガラスのショーケースには入っていましたが)茶碗や皿や壺には、マイセンあり、ピカソあり、浜田庄司あり、河井寛次郎あり…。しっかり目の保養でした。

翌日の昼は「美濃吉」本店、竹茂楼です。 こちらも春のお献立。

●先付  櫻寿し、小鮎山椒煮、一寸豆、押し玉子、川海老、花弁百合根、竹の子木の芽和
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●椀   白味噌仕立て(春大根、油目、花弁人参、春菊)
       大根には隠し包丁、油目は山菜(タラの芽が山菜の王様なら油目は山菜の女王)
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●向付    桜鯛、鯉の洗い、あしらい、土佐醤油、酢味噌でいただく
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●焼物    信州サーモン蕗の唐みそ焼、タラの芽、蕗の唐
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●鉢   若筍蒸し、鯛真子、木の芽あえ
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●ご飯  ちらし寿司、赤だし(しじみ)
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●香物    三種盛り
●水物  苺、オレンジ、キウイ、黄な粉アイスのアフォガード

竹茂楼は鴨川のちょっと北よりのところにあります。入口の暖簾には「生州」の文字。その意味があとでわかりました。享保年間に出た絵草紙によると、高瀬川筋三条の北にあった美濃吉は川辺に生州をしつらえて、魚や鳥料理でもてなしたとあります。調理に取り掛かる寸前まで、目の前に生きていた新鮮な魚を賞味するのにこれほどの妙案はない。珍しさもまたご馳走のうちと心得た料理屋があったらしく、座敷の中にまで生州を設けていたという話もつたわっています。また、生州は、料理屋にはお決まりの芸者や琴三味線も必要とせず、ひたすら料理を味わうことを楽しみにやってくる客を相手にしていたのでした。鯉こくや鰻の川魚料理なら、私たちが思う京風ではなく、江戸風の濃い味が好まれたかもしれません。椀の白みそ仕立ては思いの他濃い味でしたから。当時、京都所司代の認可を受けて川魚生州を出す料理屋は8軒あったということです。

昼食前に立ち寄った先は大原です。
三千院や寂光院などに多くの観光客を集める大原は京都の北部にある山里です。京の漬物にかかせない、ここは全国一のしその産地です。大原の土地がしその栽培に適していただけでなく、外来種との交配をさけるための努力は欠かせません。畑に建てられた小さな看板に、固定種が大切に守られていることがわかりました。この度改定された種苗法では、開発された新品種の国外流出防止に力点がおかれ、在来の固定種の保護には配慮はありません。消費者としては食べて応援するしかありません。以来、京土産のしば漬も味わって食べようという気持ちになりました。



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