過激な隠遁~高島野十郎評伝 №71 [文芸美術の森]
ノート10
早稲田大学名誉教授 川崎 浹
帰りゆく里もなき身のなにゆへに
あの御(オン)山にぞゐねざりしかや
三神の峰までつゞく石段に
一とふみごとよ思ふことなく
我が心しづもりあれよ石段の
杉の並木のはても見えねば
物買ひて店の娘のほヽゑみて
手渡しくれし出羽の思ひ出.
久々に筑紫の郷に来てみれば
(今は昔と秋風のふく)
菜の花夢に秋風のふく
行く雲と思ひみる気はなけれども
ついうかと我が心かな
変らぬは今も昔も筑紫野に
空ゆく雲と恩ひみるかな
あかあかと思ひはつきず立ち居れば
筑紫の野辺に日は暮れて行く
『過激な隠遁~高島野十郎評伝』 求龍社
『過激な隠遁~高島野十郎評伝』 求龍社
2022-03-14 23:18
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