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検証 公団居住60年 №108 [雑木林の四季]

 XⅥ 規制改革路線をひきつぐ民主党政権、迷走の3年余

   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治 

2009年8月30日の総選挙で民主党が大勝し、政権について3年余、その間つぎつぎ自らの公約をやぶり国民の期待を裏切って12年12月16日の総選挙で敗退した。
 この3年余の民主党政権下における都市再生機構とその賃貸住宅事業にたいする政策対応にかぎって特徴点をみていくことにする。

1.「事業仕分け」で仕掛けた公団住宅廃止・民営化戦略

 民主党のマニフェストは、国民の期待にこたえるいくつかの公約にあわせ、独立行政法人の「全廃をふくむ抜本的見直し」をかかげていた。9月16日に鳩山由紀夫内閣が発足するとすぐ、18日の閣議で内閣府に行政刷新会議の設置をきめ、自公政権の「構造改革」路線継承をあらわにした。その始まりが行政刷新会議による11月11日からの「事業仕分け」であり、劇場型パフォーマンスを打ち上げた。
 10年4月23日に事業仕分け第2弾がはじまり、2日目の26日、都市機構について、審議するには無理なレベルの仕分け人たちの放言と、これに答える国土交通省の、主として住宅局長のもっぱら受け身の言いわけと妥協的な回答に終始した約3時間のやりとりの末に下した評決は、「高齢者・低所得者むけ住宅の供給は自治体または国に移行、市場家賃部分は民営化に移行する方向で整理」であった。
 翌27日には早々と所管の前原誠司国交大臣は仕分け結果にたいする政策判断を示唆し、「この結果にもとづいて改善策を講じていきたい」「10兆円ほどの負債がありますので、いくらで売却できるのか、残すべき事業を何に限定するのかといった整理も必要」と記者会見でのべ、同日衆院国土交通委員会では、都市機構の廃止、民営化を求めたみんなの党の委員にたいし、「解体的見直しが、ぼくはいちばん適切だと思っている」と答弁している。事業仕分け結果については、国交省に設ける「都市機構のあり方に関する検討会」に検討をゆだね、その報告をまって政治判断すると言明した。
 事業仕分けに先だち4月11日のテレビ番組で枝野幸男行革刷新担当大臣は「UR後は一部民営化、一部廃止」を公言していた。

2.借家法と公営住宅制度の改意の動き

 行政刷新会議は「独立行政法人の聖域なき見直し」をきめ、事業仕分けにあわせ「規制・制度改革」「地域主権改革」を慌ただしく進めた。
 2010年3月末をもって設置期限がくる自公政権期の税制改革会議をひきついで、「規制・制度改革に関する分科会」(のちに「規制・制度改革委員会」と名称変更)を発足させた。委員には税制改革会議の議長、議長代理の草刈隆郎と八田達夫をはじめ安念潤司、翁百合などがここでも名をつらねている。第1回会合では、税制改革会議が提出した「税制改革の課題」「更なる税制改革の推進に向けて-今後の改革課題」(げれも2009年12月4目付)をもとに「官業の廃止・縮小、民間開放の促進」が検討された。
 規制改革は「新成長戦略」に不可欠として、公営・公団住宅については定期借家契約の導入、さらには「借地借家法における正当事由制度」改革を緊要の検討テーマにあげた。「建物の老朽化、耐震性、再開発など」それだけで明渡し請求の正当事由とする(=借家契約を解除できる)ことの経済効果に言及し、積極的な姿勢をみせた。
 地域主権改革一括法は、09年12月15日の閣議決定「地方分権改革推進計画」にもとづいて関係42法律の改正が強行された0「地域のことは地域に住む住民が責任をもって決める地域主権への転換」を理由に、国民生活のあらゆる分野にわたって提起された。公営住宅や福祉施設にかんしていえば、設備・運営基準の国からの「義務づけ」をやめ、つまり国は責任を放棄して地方の条例にゆだねていく。国の政策が貧弱なうえ、国の最低限基準(ナショナル・ミニマム)さえ取り払い、地方自治体まかせになれば、施策はさらに後退し、市場の食いものになっていくことは目に見えている。自治体は公営住宅を建てない、整備水準を下げる、入居の資格要件をせばめて居住者追い出しをはかることがいっそう危惧された。

『検証 公団居住60年』 東信堂



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