過激な隠遁~高島野十郎評伝 №70 [文芸美術の森]
ノート9
早稲田大学名誉教授 川崎 浹
ふるさとも今はなき身の海に来て
母にまみゆる母よ我がうみ
海は私のお母さん
古郷も今は無き身の海に来て
母にまみゆる母よ我がうみ
思はず 聾の限りに
呼びかけて見ると 必ず
適確な返事をつぶやき返してくれる
巻いて来る白狼の沖から
水平線の難方から
海はわがはは
いかにせん海動かずは我がいのち
探空の雲も流れざらまし
海うごく故にぞ渉る人もあらん
岩上に立てばせんすべもなし
月うかぶ空のまことのむなしくも
我が身のほどの思ひ知らる
羽黒山登るによろしたゞ一人
息つき居れば山鳩のな
三山の峰をも越えで帰り来し
我れ老ひ知るや知らず老ひしか
『過激な隠遁~高島野十郎評伝』 求龍社
2022-02-26 17:47
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