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検証 公団居住60年 №107 [雑木林の四季]

XV「規制改革」の名の公団住宅削減・売却、民営化方針
 
   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

11.2009年4月家賃値上げ「当面延期」

 2007年9月から翌08年9月までの1年間に安倍、福田、麻生へと政権が揺らぎ、大看板の「規制改革」路線そのものが与党代表から公然と批判をあびる政治状況のなかでの公団住宅削減・民営化方針であった。団地住民の自治協側も反対運動に一定の手ごたえを感じていた。しかし緊張を緩めることはできなかった。機構は団地再生・再編方針の実施と定期借家契約拡大にむけて動きだし、くわえて第10次継続家賃改定の09年4月実施をめざし準備をすすめていた。
 全国的には市場家賃の下落傾向がみられるなかでも、とくに東京都心部については大幅な家賃値上げも予想され、東京23区自治協は緊急に、09年4月の家賃値上げの中止を要求する署名をあつめ、6月26日に12,130世帯分を機構東日本支社に提出した。署名には3,941世帯が切実な声を記している。築43年になる東京都港区南青山3丁目第2住宅の3Kにすむ高齢女性は2003年に11,100円、06年9,900円と毎回大幅に値上げされ、住みつづけられないと訴えていた。
 機構の継続家賃値上げ表明にたいし、自治協、各自治会は、団地生活アンケート活動にとりくむ一方で、「値上げ見合わせ」をもとめ、地方議会には意見書採択の請願・陳情を、地元選出国会議員へは要請活動を展開した。
 各団地では家賃値上げに反対する意見書採択の請願・陳情を9月、12月地方議会におこなった。東京23区4区議会、東京多摩13市議会、千葉茨城3市議会、埼玉7議会、神奈川1県5市議会、関西5市議会、計38議会が意見書、ほかに5市の市長が要望書を提出した。
 党派をこえて各党国会議員は、全国および地方自治協の「家賃値上げ中止」の要請にこたえ、金子一義国交大臣に積極的に働きかけ、ついに「家賃値上げ当面延期」を実現した。この要請活動では、集計したばかりの第8回団地アンケート調査結果の活用が大いに力となった。
 2007年の「規制改革3か年計画」をめぐる運動の盛りあがりをそのままに、自治協は08年6月以降、家賃値上げ中止要求を中心に団地再生・再編、定期借家問題もあわせて国会要請をかさね、各党議員は国交大臣への働きかけを強めた。
 08年6月11日、自民党・公団住宅居住者を守る議員連盟の会合が衆院第1議員会館でひらかれ、伊藤公介議連会長、臼井日出男副会長、菅義偉事務局長をはじめ衆院議員12人、18人の議員代理が出席、関東地区の団地自治会役員93人が参加した。また都市機構から尾見理事ほか、国交省から和泉住宅局長、川本審議官他が勢揃いした。この席で全国自治協は「居住の安定」と「家賃」ににしぼった要望内容を説明し、各団地から切実な訴えがだされた。
 11月27日にも自民党議連の総会がひらかれた。機構理事が値上げの槻頻を説明すると、各議員から異論がだされ、伊藤会長は「いまは値上げすべきではない。国交大臣、総理につたえる」とのべ、臼井副会長の提案で「家賃を値上げしない」決議をした。翌28日、同議連の伊藤会長ら16人の議員が金子国交大臣をたずね、決議文を提出し要請をした。
 家賃値上げの中止と求める要請は、民主党が11月12日、公明党は11月28日に国交大臣にだした。日本共産党は10月2日、機構本社に家賃値上げ中止や団地削減・再編計画の撤回を申し入れた。社民党、国民新党の両党も国会議員が12月4日の総決起集会に出席し、値上げ当面延期を評価し今後の活動への協力を約した。
 こうした経過をへて12月2日、金子国交大臣は記者会見で「きびしい経済状況を考慮したうえで対応するよう再検討を機構に指示した結果、来年4月からの継続家賃値上げは当面延期することとなりました」と語った。同日機構も家賃改定(引き上げ)の当面延期を記者発表した。

『検証 公団居住60年』 東信堂                

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