SSブログ

雑記帳2022-2-1 [代表・玲子の雑記帳]

雑記帳2022-2-1

◆北陸には戦国時代から茶の湯が日常にある城下町がありました。今も市民の暮らしに根づく北陸の茶の湯文化を巡る旅を見つけました。

戦国大名朝倉氏の遺跡は、福井市街からさほど遠くない地に、四方を山に囲まれた谷間にあります。昭和40年代に発掘されてから近年のお城ブームと重なって、今、一乗谷は人気の観光地になっているようです。

朝倉氏について、かって私は、織田信長に滅ぼされた戦国大名の一人のイメージしかありませんでした。 実は、朝倉氏は、15世紀、一乗谷を拠点に越前を統治して、初代孝景から五代義景に至る100年間、町は大いに繁栄、京都からもたらされる高度な文化が花開いていたのです。

初代当主孝景が活躍し、信長に敗れた五代義景が自刃する(1573)までの100年間は、応仁の乱に始まり室町幕府が倒されるまでの戦国時代の100年間とぴったり重なり、まさに、戦国は朝倉に始まり朝倉におわるといってもいいかもしれません。
焼きつくされた町を逃げた人々は落ち着いた先で、城下町一乗谷の智恵を町づくりに生かしたとも聞いています。

田畑になっていた一乗谷遺跡の発掘は昭和42年に始まりました。174万点の出土品の中には多数の茶道具が含まれていました。当時大名の間で茶の湯が流行し、家臣もそれに習って茶の湯をたしなんでいた事が分かります。将軍をはじめとした権力者が中国や朝鮮からの輸入品を飾って権力を誇示したのに対し、中級、下級武士は高価な渡来物に手は出ず、出土した多くは瀬戸や美濃焼でした。千利休がわび茶を世に問う前の時代のことです。

一乗谷には上城戸から下城戸までの1.7キロの間に街並みが拡がり、当時8.000人から10.000人が暮らしていたと言います。城は典型的な山城です。

一乗谷唐門 のコピー.jpg
雪中の唐門を望む この後ろに城があった

山中の、特別名勝となっている4つの庭園は、京都の金閣、銀閣寺、奈良の平城宮、広島の厳島とならんで全国でも6例しかありません。遺跡は特別史跡として、また、全体が国の重要文化財と、なんと、三重指定を受けて、福井市ではロータリークラブの協力を得て、遺跡の管理、保全に力を尽くしています。

おとずれたこの日は一面の雪。 名勝の庭園はビデオで鑑賞、降りしきる雪の中に遠く唐門を望んで、足元を気にしながら、僅かに、復原された街並みをあるきました。ガイドの久保さんは復元をあえて「復原」としたことを強調していました。

復原街並み のコピー.jpg
復原街並みをボランテイアさんが雪かきをしていた
陶器屋 のコピー.jpg
商家の中
下級武士の家 のコピー.jpg
下級武士の家

旅のテーマとは無関係ながら、福井に来たら寄らぬ手はない永平寺も雪の中です。めったにお目に掛かれない雪中の永平寺は美しく見ごたえがありました。

永平寺3 のコピー.jpg

福井の夜は芦原温泉。県内でも、一乗谷は北の荘でしたが、芦原温泉のある地域は若狭と呼ばれ、昔から京都の奥座敷と言われていました。冬の日本海の味、のどぐろの姿焼きが卓にのりました。

あわら温泉6 のコピー.jpg
のどぐろの姿焼き

金沢は言わずと知れた加賀100万石の城下町です。
この地に茶の湯文化をもたらしたのは千利休の曽孫、千仙叟(せんそう)でした。利休が前田家と縁が深かったことから、仙叟は茶道奉行として京都から金沢に招かれ、40年に渡って前田家につかえたのでした。仙叟は茶の湯を武家だけでなく町人にも広め、石川県は現在も茶道人口の割合、和菓子の消費額は全国一だそうです。

仙叟が京都からともなったのが、楽茶碗で知られる楽家の四代の高弟、長左衛門でした。長左衛門の開いた窯は金沢郊外の大樋(おおひ)村の土を用いた大樋焼として代々受け継がれ、現在11代目になりました。

お茶の世界では、一楽、二萩、三唐津の言葉があるように、楽茶椀は最も高く評価されています。大樋焼は、楽焼の伝統をひき、轆轤は使わず手捻りで成形し、ひとつひとつ箆で削りながら造り上げていきます。短期間に窯の温度を上げた後、引き出して急冷するという、温度差の急な焼成は楽焼と大樋焼だけに見られる手法です。初代長左衛門が京都より金沢に出向く際に楽家より与えられたという、独特の飴色は、雪国にふさわしい暖かい味わいだと言われています。

初代長左衛門は茶碗や水差し、香炉など、仙叟好みと呼ばれる器を多く残しています。
メインロードに面した大樋長左衛門窯ギャラリーの後ろに四階建ての大樋美術館が建っていて、初代長左衛門の作品を中心に歴代の器を見ることができます。残念ながら内部の写真は撮ることができないので、初代長左衛門の代表作を一つ紹介しましょう。今まさに飛び立とうとする鳥を象った香炉は、現代人には表現できない想像的な作品だと言われています。写真の、この大ぶりの香炉は、美術館のパンフレットにのっていたものです。
先代の、10代目長左衛門さんは90歳を越えてまだ現役、63歳の11代目をまだまだと言っているそうです。華道家の勅使河原宏氏と東京芸大の同期、2011年に文化勲章を受けています。

大樋美術館 のコピー2.jpg
大樋美術館
大樋焼香炉「.jpg
初代長左衛門作の釉明烏香炉
大樋長左衛門窯4 のコピー.jpg
長左衛門窯ギャラリー

お茶にお菓子は欠かせません。長左衛門窯の道路を挟んだ正面には、前田家ゆかりの老舗菓子店、「森八」があります。寛永2年(1625)創業、前田利常が江戸に献上した落雁「長生澱」は、新潟県長岡の「腰の雪」、島根県松江の「山川」と並んで日本の三大銘菓の一つになっています。2階の金沢菓子木型美術館には、森八歴代の当主が刻んだ菓子木型が千数百点も展示されています。
俗にいう勝負菓子が東京なら虎屋の羊羹とするなら、金沢なら森八のお菓子なのだそうです。ガイドさんに紅白の求肥のまんじゅうがおいしいと勧められて、長正澱と一緒に四国の妹におくったところ、煎茶で食べるのはもったいなくて、久しぶりに抹茶を点てたと、後で電話がありました。森八は本店以外にもひがし茶屋街に店を出していました。

森八 のコピー.jpg
森八本店
森八長生澱.jpg
落雁「長生澱」の命名、字は小堀遠州とか

ひがし茶屋街は金沢でも人気の観光スポット。石畳の通りに格子戸の古い建物が並ぶ街並みは重要伝統的建物群保存地区に指定されて、散策する若者が引きも切りません。
中でも特に目を引く建物があります。文政3年(1820)に創立され、典型的なお茶屋の造りをそのままのこしている、国指定の重要文化財「志摩」で、抹茶をいただきました。お菓子は「南天」でした。

志摩6 のコピー.jpg

お茶屋は封建制度のもと、町方にわずかに許された娯楽と社交の場でした。上流町人や文人が集い、琴や三弦、舞に謡、茶の湯から俳諧までこなして、客は芸妓と遊んだのです。芸事はもちろん、芸妓の衣装や髪飾り、宴を彩る優美な道具なども一体となって茶屋文化は形成されました。そのぜいたくさは途方もなく、藩は何度となく禁止令を出しましたが、10年もたたないうちに復活したということです。

客が座敷に通される前に案内される前座敷の、ベンガラの壁や、床の間にかかる狩野元信の絵(正月には三幅の探幽だったそうです)、螺鈿の琴の胴を見るだけでもそのぜいたくさがわかるというものです。

ひがし茶屋街4 のコピー.jpg
ひがし茶屋街の街並み
志摩8 のコピー.jpg
前座敷床の間 掛け軸は狩野元信
志摩7 のコピー.jpg
座敷への入退出を告げる触れ太鼓は散財太鼓と呼ばれた

北陸の茶の湯を巡る旅の最後に訪ねたのは富山県高岡市の金屋町です。
加賀百万石の二代藩主、前田利長は早くに引退して高岡に移り住み、高岡城を築いて城下町の町づくり、産業づくりに励みました。慶長16年(1611)河内の流れを組む鋳物師(いもじ)7人を呼び寄せて住まわせたのが金屋町です。400年を経た今も、当時の街並みのまま、千本格子の家並みが続く町は、金沢のひがし茶屋街と同じく重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。重要伝統的建造物群保存地区は武家町、商家町、宿場町や山村集落などの指定が多く、モノづくりに係わる町は極めて少ないとされ、金屋町は唯一「鋳物師の町」として選定された個性的な町なのです。
そのうちの1軒、畠春斎さんの工房を見学させてもらいました。

金谷町 のコピー.jpg
石畳も美しい金屋町の街並み

釜師3代目の畠さんは、茶瓶や茶釜を制作しています。
茶瓶は、重い上に、錆びるのが嫌われて、せっかく求めても手放す人が多いようです。それでも、鉄で沸かした湯で入れたお茶はまろやかだと知人に勧められて、私も数年前に南部鉄瓶を買いました。
茶道具から生まれた畠さんの鉄瓶は、普段使いが目的の南部鉄瓶に比べると値段はずっとはるようでしたが、表面に漆をやきつけるという話を聞き、手間のかかるすべての工程を一人でこなしている工房を見せてもらうと納得がいきました。そして、いつか、その鉄瓶を使ってみたいと、そんな気持ちになりました。
錆止めの効果はあるとはいえ、焼き付けた漆はなんども重ね塗りをする漆器と違って、長い間使っているうちにいつかは剥がれてきます。鉄瓶は湯を沸かすだけなのでごしごし洗う必要はないのです。やさしく扱ってくださいと、畠さんの言葉です。

畠工房 のコピー.jpg
畠さんの工房
畠家4 のコピー.jpg
畠さんの茶釜や茶瓶

この日のお昼は金沢城のそばのホテルで、フレンチのフルコースでした。

城の石垣をみながらの贅沢なお昼です。食材は特に加賀産にこだわってはいませんでしたが、色鮮やかなキッシュやくっきりした金沢らしい(?)味のメインの肉や魚に目も舌も満足でした。

ランチ2 のコピー.jpg
色鮮やかな色彩の前菜
ランチ4 のコピー.jpg
メインの魚と肉はひとつのプレートで

nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。