SSブログ

検証 公団居住60年 №104 [雑木林の四季]

XV「規制改革」の名の公団住宅削減・売却、民営化方針
 
   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

8.公共住宅に定期借家契約の導入・拡大をねらう

 機構は「規制改革推進3か年計画(再改定)」がでた直後の09年4月3日、「UR賃貸住宅における定期借家契約の幅広い導入について」を発表した。
 それによると、09年度においてはストック活用類型の団地から全国32団地をえらんで約3万戸を、再生事業を予定している団地戸数にくわえ、全77万戸の約2割を対象に試行実施するといい、定期借家契約による入居者募集をはじめた。09年度は試行というから、その後幅広い導入を本格実施するとの構えをみせた。
 定期借家契約の導入実績は、建て替え等の用途転換、耐震改修、住戸改善など理由の違いはあるが、2012年3月末現在で導入戸数は15,648戸、77万戸の2%、目標の1割にとどまっている。
 団地内の空き店舗はすべて3年の定期借家契約による募集だという。3年の期限つきでは融資も得られず、モトが取れるわけもない。借り手がつかず、団地商店街はシャッターがおり、寂れていくばかりである。団地居住と商店にも差別をもちこみ、コミュニティを破壊していく。
 問題は、公共住宅に定期借家契約の導入・拡大を迫ってきている点である。衆院法制局・建設省住宅局監修『実務注釈・定期借家法』(信山社2000年刊)は、定期借家契約が住宅弱者の居住をさらに危うくする懸念にたいし、「家主に責任を負わせるべきではなく、公的な救済措置に委ねるべきである」「公営住宅への優先入居などによって対処すべきである」とし、「公営住宅制度は居住が継続することを前提として成り立っていることからして、定期借家契約にはなじまない」とも明記していた。
 公共住宅に「なじまない」を明言したのは制度創設の当初だけで、02年になると主として公明党議員からの国会質問をつうじて公営住宅への導入に道をひらいてきた。そこでも「一般論としてはなじまないが」「公営住宅法の趣旨を逸脱しない範囲で」と質問者も政府答弁も断らざるをえなかった。しかし、やがてすぐ国交省は、住宅関連3法の地域住宅特別措置法の成立をまって05年8月に、「公営住宅の公平かつ的確な供給」を理由に定期借家制度(期限付き入居)の活用を「図るものとする」、07年9月には「図ることが必要である」と告示するにいたった。
 借家人に明らかに不利な、民間市場でさえ普及していない定期借家契約を、住宅セーフティネットとして法的にも位置づけ、その救い手になるべき側にある機構の賃貸住宅に、国と地方が幅広く導入する非理、暴挙は許されないばかりか、進捗する見通しは当局にも立つまい。

【検証 公団居住60年』 東信堂


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。