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日めくり汀女俳句 №95 [ことだま五七五]

十月九日~十月十一日

   俳句  中村汀女・文  中村一枝

十月九日
ひとり帰すことさびしけれ柳散る
        『薔薇粧ふ』 柳散る=冬

 同じ十月二十七日の紙面に、久女も叉句を寄せている。
 ……九月十一日汀女さんに舟をこいで頂いて江津湖上を一めぐりす……
  水葱(なぎ)の花に舳(へさき)むきかへ漕(こぎ)よれり
  秋水に鯉透き泳ぐ雨輪かな
 十四日牛後汀女さんに送られて江津のお家出立、
  別るるや培しきは汝が秋涙
 久女と汀女の深い友情は、汀女が結婚する迄続く。そして離れ、昭和七年『花衣』の発刊で復活する。結婚の年月日が明らかに違うのも加わって、何か謎がありそうである。

十月十日
人波にしばしさからひ秋の暮
        『都鳥』 秋の暮=秋

 同い年の友達が「息子の嫁がね」と言うのを聞いて耳の中がむずむずする。私の方がこだわり過ぎかな。
 自分が嫁だった頃、姑から「嫁が」と言う言葉を聞き、文章を見せられるとイヤで仕方なかった。嫁という言葉、女の虐げられた歴史がのぞいて見えるのだ。まわりでは嫁が、嫁が、という言葉は増える一方だ。皆よく平気で呼び捨てにすると思っていたが、ある時気がついた。嫁が嫁がと言いながら今の姑、皆いちように腰をかがめ、お嫁さんのご機嫌伺いつつ事なきよう、披立たぬよう気を使っている。

十月十一日
子とありて笑へる声や秋の暮
          『汀女句集』 秋の暮=秋

 ア二の出生の秘密が明かされた。ア二は七年前、息子の友達のピーグルの雄の子供ということでわが家にきた。来た時からピーグルには違いないが、顔つき、体つきが今ひとつ違う感じがした。ピーグル特有のずんぐりさがなく精伴なのだ。私はひそかにピーグルもどきと呼んだが、長ずるに従いまったくピーグルになった。
 この間、息子が 「アニのお母さん見たよ。見たこともないような変な犬でさ」と言う。
何犬といっていいかわからない雑種だった。ピーグル父さんとの恋の結果生まれた四匹すべてがピーグルだったそうだ。

『日めくり汀女俳句』 邑書林


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