SSブログ

検証 公団居住60年 №102 [雑木林の四季]

XV「規制改革」の名の公団住宅削減・売却、民営化方針
 
   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

6.税制改革会議の第3次答申一公団住宅の「部分民営化」と定期借家契約の拡大

 機構賃貸住宅の削減・民営化をめぐる政府方針は実に目まぐるしく揺らぎ、空回りしていた。
 2007年6月の閣議決定「経済財政改革の基本方針2007」、「規制改革推進のための3か年計画」に始まったものの、9月に安倍首相は政権を投げだした。福田康夫首相が就任すると、税制改革会議は12月24日に3か年計画の「具体的施策」をせまって第2次答申をだした。福田内閣は翌08年3月25日、答申どおりに3か年計画の「改定」をおこなった。
 同会議はさらに7月2日、2次にわたる計画の実施状況を点検して「中間とりまとめ-年末答申に向けての問題提起」をだしハッパをかけたが、9月には福田首相も辞任し、政権の迷走がつづく。
 麻生内閣になって同会議は12月22日に「税制改革推進のための第3次答申-規制の集中改革プログラム」をだした。この第3次答申は、08年9月アメリカに発した金融危機(リーマン・ショック)の影響を新たにもちだしてきて、「税制改革推進が今まで以上に重要である」と強調し、蛮勇をふるって改革すべき分野として、くりかえし医療、保育、農業、教育など「硬直的な規制の下にある分野」と「官自らが事業を行っている分野」をあげる。「官業」については、「その存在自体が民間における産業の発展を阻害する結果をもたらしてきた」として、官業の廃止・縮小、民間開放に力をこめた。
 都市機構の賃貸住宅事業にかんして第3次答申が重点をしぼって打ち出したのは、①可能な部分から急ぐべき「部分民営化」と、②新規入居者すべての定期借家契約の適用であった。
 答申は、「民間の事業機会創出」のために、「全部民営化」のリスクは避けて手っとり早く儲かる団地にかぎって部分民営化を急げと号令をかけ、危借家契約の効用についてはこう説明する。「定期借家契約であれば、期間満了時の家賃改定、退去の要請など柔軟に対応が可能であり、機構の整理合理化にも資する契約形態である。また家賃改定に伴うさまざまなトラブルについても多くの問題は解消し、紛争処理コストも大幅に下がる」と。機構の定期借家契約の導入は遅々として進んでいないと業をにやし、民営化の妨げになる居住者の借家権を早急に措置するよう迫っている。
 財界の強欲丸出しのこの号令には、国民に貧困と格差を広げてきた「規制改革」の破たん、「構造改革」の行きづまりが見えてきた、それへの胴推進派のあせり、苛立ち、巻き返しのたくらみ、さらには税制改革会議自体の存在の危機感さえみられる。
 税制改革会議の第3次答申をうけて、麻生内閣は09年3月31Llに[3か年計画(再改定)」弓閣議決定した0答申がしめす「間題意識」と「具体的施策」をもとに政府の決定は、答申の「すべきである」を「する」に変えたほかは一言一句そのままに措置事項を列記している。
 「官業改革」の目的は「独立行政法人等公法人の業務の廃止・縮小、民間開放」であるとし、都市機構については賃貸住宅業務のみを対象に、①組織のあり方の検討と業務の縮小、民間的な経営手法の活用(2010年度措置)、②全禅賃住宅の約2割、新規入居者には全戸に定期借家契約の導入(09年度措置)を指示した。
 「税制改革推進3か年計画(再改定)」がでた2009年3月3川に、04年7月に発足した都市機構の第1期中期目標・計画は終わり、この先5年間の第2期のそれがはじまる。
 第2期中期目標とその計画は、当然ながら上述の税制改革会講の答申事項とそれらを丸呑みした閣議決定、これにしたがう機構の既定の方針と計画を転記したものでしかない。その最大の目標は、①繰越し欠損金、期間中に2,200億円削減(18年度末に解消)、②都市再生の推進、③住宅ストック量の適正化にある。
 賃貸住宅事業については、「再生・活用の推進によるストック量の適正化」「定期借家契約の幅広い導入」「住宅管理コストの縮減」の3項目にしぼり、期間中の数値目標をかかげる0ストック削減は、期間中に4万戸程度の再編着手、2万戸程度の削減、第3期の2018年度までに約10万戸再編着手、約5万戸の削減計画をあげる。定期借家契約の導入については、第1期が建て替え対象団地での一時的利用に限定していたのにたいし、第2期はこの限定をなくし「賃貸住宅全戸数の約2割」に拡大した。機構の住宅管理では、第1期の「国民共有の貴重な財産であり、居住者の居住の安定を図りつつ、適切維持管理を行う」をけずり、第2期は「競争性のある契約方式への移行等により、賃貸住宅管理コストの低減に努める」目標に変えた。


『検証 公団居住60年』 東信堂


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。