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多摩のむかし道と伝説の旅 №73 [ふるさと立川・多摩・武蔵]

            多摩のむかし道と伝説の旅 
                            -小江戸川越の旧跡を巡る-4

                    原田環爾

 富士見櫓を後にし元の辻を越えてそのまま街路を東に進むと三芳野神社の前に来る。参道入口に歌碑が立ってい川越7.jpgる。歌碑は伊勢物語からのもので「我が方に よると鳴くなる三芳野の 田面の雁を いつかわすれむ」と刻まれている。参道に入ると右側一帯は初雁公園で、その昔、この辺り一帯は三芳野の里と呼ぶ沼沢地で雁が飛来することから初雁の名が生まれたという。川越城も別名初雁城と呼ぶそうだ。参道の先に鳥居をくぐって本殿がある。平安時代の大同年間(806~810)に創建された。大宮の氷川神社あるいは京都の北野神社を勧請したと言われる。祭神は素盞烏尊、菅原道真など。室町時代、太田道灌は川越城の築城に際し当社を鎮守とした。江戸時代以降は徳川幕府直営の社として庇護を受川越8.jpgけたという。境内は結構広く、その一角に「川越城七大不思議碑」と「わらべ唄発祥の碑」が立っている。ここで言うわらべ唄とは童唄の「とおりゃんせ」、すなわち「ここはどこの細道ぢゃ 天神様のほそみちぢゃ」を指す。「とおりゃんせ」はこの三芳野神社が舞台という。そのわけは神社が川越城の天神曲輪にあったため、庶民には容易に参詣出来ない所にあった。そこで信心深い庶民の為に時間制限して参詣を許した。しかし参詣するには城の南大手門より入り、田郭門、天神門をくぐらなければならず、これに紛れて忍びが城内に入り込まないよう帰りは厳しく調べられた。そのことから「行きはよいよい、帰りは怖い」と唄われるようになったと言う。また三芳野にはこんな話もある。伊勢物語によれば、昔、都から貴公子が当てもなく三芳野にやってきて一人の娘に求婚した。娘の母は名門藤原の出だったので、貴公子へこんな歌を詠んでやった。「三芳野の 田面の雁は ひたぶるに 君が方にぞ よると鳴くなる」と、これに対し貴公子はこう返歌した。「我が方に よると鳴くなる三芳野の 田面の雁を いつかわすれむ」と。つまり「三芳野の田面の雁は貴方の方に寄ると言って鳴いている」と詠むと「私の方に寄ると言って鳴く三芳野の田面の雁をどうして忘られようか」と返したというのである。この貴公子は一説には在原業平とも言う。
川越9.jpg 三芳野神社本殿の左横を抜けるとそのまま川越城本丸御殿の前に来る。本丸御殿と言うだけあって、大変風格のある大玄関になっている。入館は有料で100円とな っている。川越城は長禄元年(1457)扇谷上杉の上杉持朝が、古河公方に備えるため、家 臣の太田道真・道灌父子に築城させた城である。しかし道灌が亡くなると、上杉は山内上杉と扇谷上杉両家の勢力争い、家臣の長尾景春の反乱、更には古河公方との争いなど本格的な戦国時代に突入する。やがて小田原北条氏の台頭により天文6年(1537)川越城は奪われ、武蔵の支配権は北条氏に移る。その北条氏も天正18年(1590)豊臣秀吉に滅ぼされ、江戸に入府した徳川家康の支配下に入る。家康は川越城を江戸防衛の最も重要な城として、三河以来の譜代の家臣酒井重忠を初代城主とする。道灌が築城した当時は本丸と二の丸を合わせた程度の敷地であったが、江戸時代になってから曲輪や大手など大々的に改修された。なお現在の本丸御殿は嘉永元年(1848)松平斉典が造営したものである。
川越10.jpg川越11.jpg  本丸御殿の前を北に向かうとすぐ大きな車道「初雁城通り」と丁字路でぶつかる。正面には市立博物館があり、その前の庭の一角に川越城七不思議の一つとされる「霧吹きの井戸」がある。井戸は普段は蓋がしてあるが、敵が攻めてきて危なくなると蓋を開ける。すると中から霧がもうもうとたちこめ、たちまち城を包み隠してしまうという。このことから川越城は別名「霧隠城」とも呼ばれたという。ちなみに初雁城通りに沿って西へ500~600m進めば川越市役所があり、その前庭に太田道灌像が立っている。なお道灌像の左を南北に走る車道は小江戸川越の発展に大きな役割を果たした旧川越街道だ。
川越12.jpg 次に川越氷川神社に向かう。初雁城通りの交差点「廓町」から北へ向かう街路に入る。300mも進めば広い車道に丁字路でぶつかる。そこに氷川神社がある。欽明天皇即位2年(540)武蔵国足立郡氷川神社を分祀したしたものという。祭神は素戔嗚尊、大己貴命など五柱。太田道真・道灌が川越城を築城するに際し、道灌は当社を篤く崇敬したという。例大祭は10月14日、川越氷川祭として十数台の山車が市内を練り歩くという。(つづく)

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