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行くも良い良い、行かぬも良い良い……句会物語 №101 [文芸美術の森]

行くも良い良い、行かぬも良い良い……句会物語
こふみ会通信 №101 (コロナ禍による在宅句会 その16)
「コロナ」「読書」「冬薔薇」「風呂吹き」
                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

当番幹事(今回は三人、一遅氏、鬼禿氏&弥生さん)から連名で、下記のような≪令和3年11月の句会≫の案内が届きました。

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雲ひとつない文化の日です。
皆さま、どのようにお過ごしですか?
 
早や11月、季語ではもう冬ですね。
今月のご案内は、弥生と、+2名(鬼禿・一遅)ですすめますので、
よろしくお願いいたします。
 
コロナもやっと収束に向かいつつあります。
2年に及んだ鬱陶しい気持ちを、今月は『兼題』のひとつとします。
 
兼題①【コロナをテーマとした句】
     ※「コロナ」の語は必ずしも入れなくても構いません。
兼題②【読書】または【本を読む】 
     ※いずれも季語ではありません。「読書週間」とすれば季語です。
兼題③【冬薔薇(ふゆそうび)】または【冬の薔薇】
兼題④【風呂吹き】 
以上4句投句願います。
兼題①②は、必要とされる方は季語を入れて下さい。無季句でも結構です。
 
● 投句は11月12日〜14日(日)でお願いいたします。
● 選句締切は18日といたします。
● 投句先:
  整理の都合上 投句先を2つに分けます。ご協力ください。
  (女性会員は 弥生・鬼禿へ)
  (男性会員は 弥生・一遅へ)

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【上載の通知によって作成・投句された今回の全作品】は下記のとおり  15名  60句

≪コロナ》
マスクが隠したのはあなたの心です (矢太)
マスクして曇る眼鏡や見えぬ明日 (舞蹴)
目で笑い目で語る術おぼえたり (尚哉)
良い事よコロナの後にきっと来い (一遅)
木枯らしやマスク着たまま床に入る (下戸)
マスク越し届かぬ想い冬銀河 (虚視)
家籠り今日は豆煮て日向ぼこ (弥生)
魑魅魍魎 鎮めてワクチン 三回目 (紅螺)
小春日や口紅の色新しき (小文)
美徳かな皆でマスクの日本人 (すかんぽ)
とびら開け 不要不急のシクラメン (兎子)
秋風や つい独り言 ウイズ・コロナ (孝多)
秋深しコロナ下に知る訃報かな (玲滴)
ムンク叫ぶ 地球畑の間引き菜ぞ (鬼禿)
コロナ禍に 今生きて見る 冬夕焼 (茘子)

≪読書≫
文学の青痣ありて読書せず (下戸)
また同じページを開く夜長かな (矢太)
拾いたる落葉のしおり読書かな (舞蹴)
指つくる影眼のやうな読書灯 (尚哉)
ページ繰る微かな音してカフェテラス (一遅)
問うてくる 古書の書き込み 霜夜かな (茘子)
読めば我が身 認知症ルポ 暮れる秋 (孝多)
年経りて読書の秋も遠ざかり (玲滴)
犬が啼く 小春日和にページ繰る (兎子)
くるまって読書三昧古毛布 (弥生)
長き夜の一灯に置くサリンジャー (すかんぽ)
本を読む 夜間飛行の 席灯り (紅螺)
枯葉散る若き日の本読み返し (虚視)
とりけもの眠る読書の冬の月 (小文)
本を読む 失ひし言の葉枯木立  (鬼禿)

≪冬薔薇≫
ウソの私 ホントの私 冬のバラ (孝多)
老いたりといへど夜半の冬薔薇 (矢太)
少しだけ時計を止めて冬の薔薇 (すかんぽ)
五円玉転げし路地に冬薔薇 (下戸)
日溜りに嘘の如くに冬薔薇 (舞蹴)
冬の薔薇 空き家の庭で散り始め (兎子)
潔くひげを剃りたし冬薔薇 (小文)
競い合い黒き口紅冬薔薇 (虚視)
盲目の 奏者の胸の 冬薔薇 (紅螺)
モノクロの世界に一凛冬薔薇 (玲滴)
あえかなる薄紅愛(かな)し冬の薔薇 (弥生)
磔刑の紅き滴か 冬薔薇 (鬼禿)
冬の薔薇 明日咲く蕾 明日の命 (茘子)
くさぐさの終息飾れ冬薔薇 (尚哉)
冬薔薇銀座四丁目駆ける人 (一遅)

≪風呂吹き≫
風呂吹きや因数分解解けぬ夜 (矢太)
風呂吹きや喉をするりと通り抜け (舞蹴)
風呂吹きや僧侶100人うぅーと吹く (下戸)
風呂吹きの熱き沁み入る旅のあと (小文)
風呂吹きや湯気の向うにしかむ夫 (玲滴)
竹串を 風呂吹きに通す 手にえくぼ (紅螺)
風呂吹きの透ける大根(でえこ)は母の白 (鬼禿)
風呂吹きの湯気まぼろしの団欒図 (弥生)
風呂吹きの 湯気吹く父の 無精髭 (茘子)
風呂吹きや 飲みつ語りつ 笑いつつ (孝多)
風呂吹きで 私は私の母になる (兎子)
風呂吹きを十字に割りて妻偲ぶ (尚哉)
風呂吹きとちろりが繰り出す武勇伝 (一遅)
ほつこりと妻の風呂吹妻の頬 (すかんぽ)
風呂吹やはふはふと火傷する覚悟 (虚視)

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●小春日や口紅の色新しき (小文)
鑑賞短文=禍が過ぎつつある(といいけど)、今にピッタリな句。マスクをはずす開放感と、前向きな姿勢。いいですね。悲観的になるのは、もういいです。(尚哉)

●風呂吹きで 私は私の母になる (兎子)
鑑賞短文=ムカシ、お母さんがそうだった。今、私はそれにそっくりです。風呂吹きを作って、食べさせて、やさしいお母さん! (孝多)

●風呂吹きの透ける大根(でえこ)は母の白 (鬼禿)
鑑賞短文=息子達がこのような気持ちになって私を思い出してくれるだろうか?と羨ましくなりました。そして私も「でえこ」が食べてみたくなりました。(小文))

●くるまって読書三昧古毛布 (弥生)
鑑賞短文=ソファに寝転がり、愛用の毛布にくるまり、好きな本を好きなだけ読む。なんて贅沢時間。理想の読書の形が表現されていて嬉しくなる句です。(舞蹴)
鑑賞短文=心地よい肌感覚が伝わってきます。(紅螺)

●また同じページを開く夜長かな (矢太)
鑑賞短文=「また同じページ」というエンドレス感が不思議で、妙に夜長に合っています。
(すかんぽ)
鑑賞短文=どう読むか、ですが、かなり怪しくなってきた自分と共鳴。年寄ると毎日が同じページのようです。(鬼禿)

●風呂吹きを十字に割りて妻偲ぶ (尚哉)
鑑賞短文=同じ風呂吹きを割るにも十字という言葉の意外性に惹かれた。静かでドラマチック。(下戸)

●マスクして曇る眼鏡や見えぬ明日 (舞蹴)
鑑賞短文=コロナ禍での先の見えない不安感を、さらりと表現していて、うまい!大人の句ですね。(茘子)

●文学の青痣ありて読書せず (下戸)
鑑賞短文=若き日の、後悔がいまなお胸を締め付ける。あの頃のみずみずしさを取り戻したい。その気分に共感しました。(兎子)

●磔刑の紅き滴か 冬薔薇 (鬼禿)
鑑賞短文=鮮烈な赤の色に心がふるえそうです。(玲滴)
鑑賞短文=確かに、神からのメッセージに違いない、残酷な美しさ。(矢太)

●あえかなる薄紅愛(かな)し冬の薔薇 (弥生)
鑑賞短文=ものみな枯れ行くなか、寒さに耐えながらも凛とした佇まいで咲いている一輪の薔薇、胸締め付けられる様な気持ちに共感しました。(虚視)

●マスク越し届かぬ想い冬銀河 (虚視)
鑑賞短文=マスクで覆われた顔は表情をうかがい知れない、物をいっても明瞭ではない。冬銀河という季語がそのもどかしさと切なさにぴったり。(弥生)

●とりけもの眠る読書の冬の月 (小文)
鑑賞短文=メルヘンのような静寂。読書する喜びを輝く月まで動員しての表現は見事。(一遅)

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≪今月の成績一覧≫

◆トータルの天=弥生さん・49点
代表句=くるまって読書三昧古毛布
◆トータルの地=小文さん・38点
代表句=とりけもの眠る読書の冬の月
◆トータルの人=鬼禿さん・32点
代表句=磔刑の紅き滴か冬薔薇
◆トータルの次点=矢太さん、兎子さん・23点
代表句=また同じページを開く夜長かな (矢太)
    風呂吹きで私は私の母になる (兎子)
おめでとうございました。以上、上位作。

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≪幹事より、ひと言≫

●選句は難しい。森羅万象に知識がないと、無知ゆえに佳句を見逃すことがある。後になって、ああそういうことなのねと悔いてももう遅い。私にとっての俳句の勉強はあらゆることに興味を持ち知識を増やすことかもしれません。(弥生)

●選句で、天句と地句。どちらをどちらに、と迷いました。17文字で生まれるイメージ世界。ちょっと不思議な句が自分は好きだなと、このごろ感じます。じっくり句をながめて比べられるネット句会の魅力もまた格別です。(一遅)

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≪リアルなこふみ会を開きたい≫

●鬼禿からお伺いします。
月例の「こふみ会」をネット句会に切り替えて2年目が終わります。
そこで「年末」又は『新年」にリアル「こふみ会」を開きたいと思うのですが如何でしょうか。意見を鬼禿までお聞かせください。A.まだその時期ではない  B. まず忘年会から  C.新年会を D.その他の意見。というふうに。

●これに対して同人各位から、いろいろ申し出がありましたが、最終的には『3回目のワクチンが済んでからが良い』『第3回ワクチンの経過を見て再考しよう』ということで、ムカシのような、一堂に会して、わいわいとやる句会の復活のハナシは、残念ながら、一時ストップになりました。鬼禿さん、有難うございました。

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コロナと付き合うのは、全く、タイヘンです。刃向かっては駄目。かと言って、言いなりになってたら、のさばるばかり。
こちらも知恵を働かせながら「したたかに、生きましょう。」それが、今を時めく澁澤栄一流なのだそうですね。
それでは、どうぞ、皆さん、心と体を、お大事に。(孝多)
                            令和3年12月1日
                        


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