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検証 公団居住60年 №100 [雑木林の四季]

XV「規制改革」の名の公団住宅削減・売却、民営化方針
 
   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

4.都市機構「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」

 2007年12月24日に「独立行政法人整理合理化計画」が閣議決定されると、2日後の26日に都市機構は「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」を発表した。組織見直しは3年後に先送りしたとはいえ、機構の団地再編方針は待ったなしに始まった。

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 2018年度までの10年間に、再編に着手する約10万戸のうち約8万戸を除却し、新たに3万戸建設する計画と、あわせて繰越し欠損金の前倒し解消計画をたてた。そのため機構は全国77万戸、1,806団地を4つの類型に大別し、この10年間の団地別整備方針を定めた。

①「団地再生」の類型は3つ、建て替え事業着手済みの団地を中心に「全面建て替え」4万戸、同一団地で既存住棟をのこす継続ブロックと、除却・整地して民間売却、一部に機構が新規貸賃住宅を建設する事業ブロックに二分する「一部建て替え(複合型再生)」4万戸、団地規模を縮小し、売却するだけの「集約化」8万戸の3方式がある。
②「用途転換」1万戸は、団地を丸ごと更地にして民間売却する。
③「土地所有者等への譲渡、返還」3万戸は、地主が不動産企業等にかわっていて民間マンション、事務所ビル等への建て替えが予想される。集約化と用途転換、返還の類型は、とくに北海道に多く、宮城、北九州、東海でも目立つ。明らかに経営効率本位に、住宅セーフティネットまでも地方切り捨ての政策がみられる。
①「ストック活用」は、戸数では7割以上をしめ、従来どおり計画修繕等を実施することを基本にしながらも、団地ごとの立地・特性に応じて住戸内外の改善をはかるとするが、方針策定の段階でこの類型を、投資の重点化をはかるため、グレードアップ団地、収益改善投資団地、投資抑制団地、現状管理維持団地に4分類している。この類型の団地も、10年先といわず、やがて売却・削減の予備軍となりうる。

 「税制改革」の正体は、やがてすぐ露呈し、公然と批判を浴びることになる。もっぱらその一環として打ちだされた団地再編が、国民の住生活向上に資する、まして団地居住者の居住の安定を図るものでないことは誰の目にも明らかである。計画の妥当性はもとより、実現の見通しも立たず、政府がこれを強引に押しすすめれば、居住者にとっては多大の犠牲が予想される。
 団地再編は、まっ先に多数の居住者に移転を求めることになる。第一に、居住者が移転に応じるかである。機構がこの方針を「国策」と理由づけようと、現行法では借家人に明渡しや移転を求める正当事由はなく、借家権をカネで買うしかない。
 政府がいち早くとった予算措置が、2008年度の「セーフティネット型出資金制度」創設であったことをみても、居住者の移転が団地削減・売却の成否のカギであることがわかる。国土交通省は、異例ともいえる400億円もの出資をして居住者移転に並々ならぬ構えをみせた。ただしこの制度は、民主党政権にかわり09年11月の「事業仕分け」において中止された。

『検証 公団居住60年』 東信堂



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