SSブログ

エラワン哀歌 №12 [文芸美術の森]

夜、高尾山頂

       詩人  志田道子

 薬王院の裏山に
 聖天様の両はあって
 雨が降る
 アルミの傘を被っただけの
 裸電球に照らされた
 杉の木肌に色はない

 かすかな羽音は
 人か
 鳥か
 ガナハチイ・ビナヤカ。
 いちど限りの
 うる居のh氏と
 信じたその夜

 光立ち
 音落ち
 水散り
 火おののく

 泣くは眼窩

 瞳は闇に
 闇は……

 人の手が招く

*「ガナハチイ・ビナヤカ」は、大聖歓喜天の真言(古代インドの呪文)。
「ガナバチ」はシバ神の子供。眷属を統括する軍神で象頭人身の鬼神。
昔マラケラレツという王様が居り、牛肉と大根を好んだ。そのうち牛が居なくなってしまうと、人の死肉を食べ、それも無くなると生きた国民の肉を食べ始めた。耐えかねた国民が反旗をひるがえすと、王は大鬼王ビナヤカ(毘奈夜迦)となって眷属とともに空中に飛び、逃げ去った。
その後ビナヤカの崇りで国中に悪い病気が蔓延した。人々は十一面観音に助けを請い、観音は女身となって王に近づき、これを回心せしめた。歓喜天(聖天)像は、一般には象の頭をした男女が相抱く姿。

『エラワン哀歌』 土曜美術社出版販売


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。