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検証 公団居住60年 №98 [雑木林の四季]

XV「規制改革」の名の公団住宅削減・売却、民営化方針

   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

1.答申そのままに「規制改革推進3か年計画」を閣議決定

 小泉政権は国民生活の基本的な分野にわたって強引に「構造改革」をおしすすめ、住宅政策では、公団を独立行政法人にかえて都市再生機構に改組したのを皮切りに、2006年6月に住生活基本法を制定して、住宅政策の理念も体系も大転換した。これをうけ「規制改革」の名において具体化にとりかかったのが安倍晋三内閣であった。
 安倍内閣は2007年6月22日、「税制改革推進のための3か年計画」を閣議決定した。この計画は、首相の諮問機関である規制改革会議の第1次答申(07年5月30日)と、その前身の規制改革・民間開放推進会議(議長はともに草刈隆郎経団連副会長)の第3次答申(06年12月25日)をそのまま、速やかに措置すべき政府の方針として打ちだした。
 政府はこれまで行政の各分野について概ね7,000項目の税制改革を実施してきたが、「改革はなお途上、岩盤のごとき困難な課題があり、これらにたいし強力にとりくむべく3か年計画」を定めた、と書きだしている。「競争と効率」の市場原理を拡大し、民間開放をすべき重点対象として、「官業」、教育、住宅・土地、福祉、医療、農業、雇用など国民生活の基本的な各分野をあげた。
 そのうち官業改革は重点を都市再生機構におき、標的は賃貸住宅事業にあった。機構の賃貸住宅について「現在の77万戸の規模が過大である。機構本来の役割を果たすべく」、以下の措置を講ずるとし、「平成20(2008)年度までに結論、結論を得しだい措置」を指示した。

a.公営住宅階層の居住者が大半を占めているものは、機構本来の役割に徹するべく地方公共団体に譲渡するなど、機構の業務から切り離すため、当該団体と協議する。
b.建て替え事業には機構法26条1項2号の基準[事業選定の基準は建設年代の古さではなく市場性・需給本位、市街地中心、事業単位は団地ではなく住棟]を厳格に運用し、居住者は周辺棟・団地等へ積極的に移転させる。移転にともなう家賃減額は縮小の方向で見直す。
c.建て替えの際、建物を広域的に集約化し、その結果生じる整備敷地(余剰地)の売却により資産の圧縮に努める。
d.77万戸の賃貸住宅について今後の削減目標を明確にする。
e.既存賃貸住宅への新規入居者との契約には、建て替え予定以外の団地においても、幅広く定期借家契約を導入する。
e.  管理業務は、入札などをおこない、民間委託を拡大して、業務の効率化とコスト削減を図る。

 「3か年計画」はそのほか、ニュータウン事業からの撤退、保有敷地の売却・証券化、繰越し欠損金解消時期の前倒し、関連会社等の整理合理化と株式売却、関連会社以外への外部発注業務の競争化について提起している。
 くわえて「住宅・土地」分野では、既存の普通借家契約からの切り替えをふくめ定期借家契約の拡大と、正当事由制度について、建て替えや再開発、立退き料を正当事由の要件とする法改正をあげた。
 なお機構の都市再生事業について「3か年計画」は、財界の強欲丸出しの.1つの措置をあげた。

a.権利関係が輯醸し調整が難しい、採算性が低いなど、民間事業者では負担しきれない事業リスクを機構が負担する基準を明確化する。
b.機構の進行中の事業で、リスクが少なく民間に売却可能なものは売却を進め、民間の事業機会創出のバックアップに努める。
c.土地の有効高度利用を図ることによって売却価額の高額化をはかるなど、事業総価値の最大化をめざす。

 公団住宅削減・売却、民営化方針が本決まりになると、マスコミは「団地20万戸削減計画、都市機構の資料で判明」(しんぶん赤旗、6月30日付)、「公団賃貸住宅145団地15万戸の〈追い出し〉〈更地化・削減〉大計画」(サンデー毎日、7月15日号)の見出し、団地名をあげて報じた。居住者には寝耳に水、ショックは怒りに変わった。

[検証 公団居住60年』 東信堂



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