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論語 №129 [心の小径]

四〇六 子のたまわく、われかつて終日食わず終夜寝ねず、以て思う。益なし。学ぶに如かず。

        法学者  穂積重遠

 孔子様がおっしゃるよう、「わしは前方、一日飯も食わず、一晩マンジリともせずに考えたが、得るところがなかった。学ぶに限る。」

 孔子様は「思」と「学」と平行すべしと言われるのだが(三一)、ここでは「思いて学ばざる」者に対して投薬されたのである。そしてこれは仮設ではなくて体験らしい。現に自身で、「憤りを発しては食を忘れ」たと言われた(一六五)。

四〇七 子のたまわく、君子は道を謀りて食を謀らず。耕すや餃その中に在り、学ぶや禄その中に在り。君子は道を憂えて貧を憂えず。

 孔子様がおっしゃるよう、「君子たる者が学問をするのは、いかにしたら道を求め得ようか、というのがねらいで、衣食をはかるのではない。農民が耕すのは食を得るのが目的だろうが、いくら耕しても凶年にあえば食を得ないで償えることもあるではないか。反対に、学問するのは衣食が目的ではないけれども、学成ればおのずから俸禄を受けることにもなるのじゃ。それ故に君子は、適の得られざるをこそ心配すべけれ用いられずして鮮腱なのを心配する理由はないぞよ。」

四〇八 子のたまわく、知これに及ぶも、仁(じん)能(よ)くこれを守らざれば、これを得と誰も必ずこれを失う。知これに及び、仁よくこれを守るも、荘(そう)以てこれに涖(のぞ)まざれば、すなわち民敬(けい)せず。知これに及び、仁能くこれを守り、荘以てこれに涖むも、これを動かすに礼を以てせざれば、未だ善からざるなり。

 孔子様がおっしゃるよう、「人君たる者、知がその位に適応しても、仁徳をもってその位を守ることができなければ、その位を得てもやがてそれを失うであろう。知がその位に適応し、仁がその位を守るに足りても、威厳をもって民に臨まなければ、民は君を敬わぬであろう。知がその位に適応し、仁がその位を守るに足り、威厳をもって民に臨んで、民を使い動かすに礼をもってしなければ、まだ理想的でない。」(参照 -一九・三六)

四〇九 子のたまわく、君子は小知せしむべからずして大受(たいじゅ)せしむべし。小人は大受せしむべからずして小知せしむべし。

 本章の「君子」「小人」は、徳不徳または上下よりは、むしろ大人物、小人物。

 孔子様がおっしゃるよう、「大人物には、区々たる小技術を扱わせ得ないが、国家の盛衰興亡を引受けさせ得る小人物には、天下の大事は担任させ得ないが、雑用小事務は扱わせ得る。」

 古証にいわく、「君子の務むるものは大なり。書算(しょさん)米塩(べいえん)一切の巧徹なる技芸の如きは、必ずしも多能ならず。これ小知せしむべからざるなり。孤を託し命を寄せ(一九〇)、君を堯舜にし、人民に沢(たく)する等の如きは、其の重任を受くるに足る。これ大受せしむべきなり。」

『新訳論語』 講談社学術文庫



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