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往きは良い良い、帰りは……物語 №98 [文芸美術の森]

往きは良い良い、帰りは……物語
こふみ会通信 №98 (コロナ禍による在宅句会 その13)
「晩夏」「衣被」「蜩」「朝顔」
  俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

当番幹事(すかんぽ氏&茘子さん)から連名で、下記のような≪令和3年8月の句会≫の案内が届きました。
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こふみ会の皆様、猛暑・炎天・雲の峰、夏らしいお天気が続いています。
クーラーの効いた部屋でのオリンピック観戦もいいけれど、
そろそろ創作意欲が湧きだして、うずうずされている事と存じます。
今月も、すっかり高齢と、もとい、恒例となった【こあみ句会】を楽しみましょう。

今月の兼題
1:【晩夏・ばんか】
2:【衣被・きぬかつぎ】
3:【蜩・ひぐらし】
4:【朝顔・あさがお】

投句〆切は、8月15日(日)
投句一覧配布は、8月18日(水)
選句〆切は、8月22日(日)
結果発表は、8月25日(水)を予定しています。

投句の送り先は8月幹事の茘子とすかんぽまでメールください。
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【上載の通知によって作成・投句された今回の全作品】は下記のとおり  16名 64句

【晩夏】
待ち望む暑さも雨も去ぬ晩夏【兎子】
捨てられし汚れたマスク街晩夏【舞蹴】     
覇者敗者ともに空しき晩夏かな【鬼禿】    
夏深しパンデミックの午後無音【尚哉】     
サラサラと晩夏の風が髪とかす【小文】    
晩夏の夜 別れに踊ったカミニート【紅螺】
海と船オレンジに染め晩夏かな【下戸】    
大器晩成、晩鐘、晩酌、晩夏かな【孝多】
ほろにがき宴のあとの晩夏かな【玲滴】     
乾いた海星(ひとで)海に返して須磨晩夏【弥生】
ブラのあと鏡に映して晩夏知る【一遅】     
石に彫る名前となりて晩夏かな【華松】    
洪水は晩夏の熱地球の復讐か【矢太】
崩れ行く晩夏のなぎさ砂の城【虚視】     
東京行きフェリーは沖へ晩夏光【すかんぽ】  
黄昏の遮断機の空 晩夏かな【茘子】     

【衣被】
老いた手を 土色に染め 衣被【兎子】     
衣被祖母の絣のたすき掛け【小文】      
指の腹かすめし刃衣被【華松】        
ツルリむく童心(わらわごころ)や衣被【弥生】 
衣被 ふるさと自慢 口々に【茘子】      
湯上りのビールの横に衣被【玲滴】      
ゆるやかに時の流れて衣被【虚視】
衣被つるりと昔の男たち【尚哉】       
若き日の 祖母が手渡す 衣被【紅螺】
芋の子に袿(うちき)まとはせ衣被【鬼禿】  
絶妙とはこの事つるり衣かつぎ【孝多】    
衣被つるりと剥けて仲直り【舞蹴】      
きぬかつぎ十草の鉢にかしこまり【一遅】   
深爪を後悔しつつ衣被【矢太】        
スッピンの老婆に戻りて衣被【下戸】     
剥けるとは産まれるごとし衣被【すかんぽ】  

【蜩】
蜩よ 思い出さすな 忘れたきこと【茘子】      
ひぐらしを大の字で聞く山家かな【すかんぽ】   
雨上がり 希望うたえよ 蜩たちよ【兎子】
蜩は時間を止めて鳴き急ぐ【矢太】         
蜩は暑さに未練を持ちてをり【華松】
熊蝉(ワシワシ)に明け蜩(カナカナ)に暮るる宿【弥生】
コロナ禍に人流まばら蜩の降る【玲滴】       
選挙カー立ち去り蜩鳴き始む【孝多】        
この先は怖い怖いと蜩が【下戸】          
疎まれし  母の逝きし日  蜩の鳴く【紅螺】      
蜩の鳴くこの時を君とゐて【小文】        
キキキキキ蜩かなかな鳴きはせぬ【尚哉】
陣痛しばし止んで 蜩の中【鬼禿】         
蜩の鳴き声やまず母が逝く【舞蹴】         
ひぐらしの声ありガラスの摩天楼【虚視】      
永遠(とわ)のごと蜩鳴いて傘寿なり【一遅】     

【朝顔】
朝顔や円周率も狂いけり【下戸】      
歯ブラシを止めてあさがおに朝を聴く【矢太】
朝顔のそっとほどけし夜明けかな【小文】
今朝ひとつ明日ふたつみつ朝顔や【一遅】  
朝顔は蕾までもが左巻く【尚哉】
朝顔の弦のびてなお天を突く【玲滴】    
明日ひらく朝顔数え子の眠る【弥生】    
世を拗ねて? 生き急ぐ甥の描きし朝顔【紅螺】
朝顔や夜の虚空へ蔓伸ばす【虚視】    
天上の青き朝顔 爆心地【鬼禿】     
朝顔の数を数える朝が好き【舞蹴】     
オリンピアン 迎える朝顔うなだれて【兎子】
朝顔の店先に蕎麦こね始む【すかんぽ】
濃き色を秘めて絞るは朝顔か【華松】
溜め息や朝顔市も中止とか【孝多】
空の色映し朝顔 深き藍【茘子】       
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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●彫る名前となりて晩夏かな【華松】
鑑賞短文=毎月のように古い友達が逝く。この句に会って、硬い斬鬼(ママ)の念が胸に沈んだ。(矢太)

●朝顔のそっとほどけし夜明けかな【小文】
鑑賞短文=蕾が開く当たり前のことに、励まされ安心します。(華松)

●熊蝉(ワシワシ)に明け蜩(カナカナ)に暮るる宿【弥生】
鑑賞短文=自然界に身を置き何もしない至福の時間。
その1日の時の流れをオノマトペで表現されているのも秀逸です。(小文)

●東京行きフェリーは沖へ晩夏光【すかんぽ】
鑑賞短文=旅立ちの明るさと寂しさと、まさに前途洋洋を感じました。(兎子)

●石に彫る名前となりて晩夏かな【華松】
鑑賞短文=・・・この句の主体は、死者か、それとも残った者か。この6月、母を亡くした身にとっては、そのどちらでもあるように思われます。(尚哉)

●黄昏の遮断機の空 晩夏かな【茘子】
鑑賞短文=オレンジ色に染まった遮断機が紫色になりかけた天を射し、風も心なしか冷たく、夏の終わりの寂寥感のある光景が鮮やかに立ち上がって来た。(虚視)

●絶妙とはこの事つるり衣かつぎ【孝多】
鑑賞短文=句に独特のリズムがあって、そのリズムが衣かつぎが剥ける様と絶妙にマッチしている。とても楽しい句。(下戸)

●崩れ行く晩夏のなぎさ砂の城【虚視】
鑑賞短文=過ぎ行く夏を惜しむ心情を表して素敵です 波の音まで聞こえます (紅螺)

●覇者敗者ともに空しき晩夏かな【鬼禿】
鑑賞短文=開催の是非を問う中で強行されたYOKYO2020を象徴するような句だと思いました。(玲滴)

●乾いた海星(ひとで)海に返して須磨晩夏【弥生】
鑑賞短文=「俳句は相性(あいしょう)男は度胸」ですね。この句の「須磨」が別の場所であったら、私・孝多が選句したかどうか。好きな(気の合う)地名を登場させてくださって、誠に有難うございました。いい気持ちです。(孝多)

●天上の青き朝顔 爆心地【鬼禿】
鑑賞短文=日本人の8月を見事に謳いあげています。壮大で美しいヒロシマ、ナガサキへのレクイエムです。(一遅)
鑑賞短文=あの夏の日の朝、朝顔は変わらず咲いていたのだろう、
人々の営みとともに。辛く、悲しく、無残な事実を、からりと歌い上げて、感服(茘子)

●朝顔のそっとほどけし夜明けかな【小文】
鑑賞短文=「そっとほどけし」という表現(ちょっと可愛らしくて、思わず微笑んでしまう。夜明けのちょっと嬉しい情景が目に浮びます。(舞蹴)

●疎まれし 母の逝きし日 蜩の鳴く【紅螺】
鑑賞短文=疎まれしお母さんを蜩の中に送って‥どうでしたか?
同じ眼目の句がありましたが、あなたの句の凄い所は上五「疎まれし」です。
この一語でお母さんの一生まで見えてきて切ない。次はそろそろ疎まれる番ですね。(鬼禿))

●ひぐらしを大の字で聞く山家かな【すかんぽ】
鑑賞短文=私が蜩に持つイメージは山と夕暮れです。一日の終わりに山の家で大の字になっていると、暮れ行く山の清冽な空気を破って蜩が鳴く。私のイメージそのままに美しい。そして重くなりすぎないかろみも併せ持つ句。(弥生)

●蜩の鳴くこの時を君とゐて【小文】
鑑賞短文=ひぐらしといえば、晩夏。夏の終わりは別れの予感の季節でもありますね。ドラマのようなストーリーをいろいろと想起させてくれる素敵な句です。(すかんぽ)
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≪今月の成績一覧≫

◆トータルの天=小文・47点
代表句=蜩の鳴くこの時を君とゐて
◆トータルの地=鬼禿・42点
代表句=天上の青き朝顔 爆心地
◆トータルの人=すかんぽ・40点
代表句=ひぐらしを大の字で聞く山家かな
◆トータルの次点=虚視・30点
代表句=崩れ行く晩夏のなぎさ砂の城
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≪幹事より、ひと言≫
●何もせぬ幹事を務めさせていただきました。今回皆様の句、夜空の花火を見るように様々な夏を見せていただきました。幹事の役得でしょうか、投句、選句、それぞれの方からいただく度に。お会いするより深くその方を感じることが出来、文字の上だけのお付き合いも、なかなかと感じました。(茘子)
●今月の天様は小文さん。いつも品のよい句を投句される小文さんですが、今回の朝顔の写生句にはたくさんの選が集まりました。次回にもおおいに期待したいですね。
鬼禿さんの力強い句、すかんぽの力の抜けた句が同点で地句に。総合点もこの順になりました。16点13点と高得点をふたつ獲られた虚子さんが客様。さすがです。(すかんぽ)
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◆幹事さん、連絡やら集計やら、いろいろな心づくし、有難うございました。おかげさまにて、コロナ禍の中ながら皆さん、それぞれに、良い句会を楽しむことがが出来たと思います。
◆この句会を、更に充実させたいとの願いから、下記のとおり、アンケートを行うことに致しました。お力添えのほど、お頼み申します。
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アンケートのお願い
第1回として、こふみ会同人の方々だけが対象のアンケート調査です。皆様、どうぞよろしくお願い申しあげます。
★回答の宛先=このブログのコメントへ
           またはFAX  042-527-9926  (横幕玲滴)
★皆さまからの回答の締切は令和3年9月20日とします。
★匿名でも結構です。
★回答のための文字数に制限はありません。

●アンケート①
『俳句はタテ書きであるべきだ』という声があります。あなたは、これをどう受けとめて居られますか。
      賛成である   反対である   どちらともいえない
   その理由は。(文字数は自由)

●アンケート②
『俳句では旧仮名づかいを使うべきである』という声に
  賛成である   反対である   どちらともいえない
   その理由は。(文字数は自由))

●アンケート③
『俳句は5・7・5である。上5(かみご)、中7(なかしち)、下5(しもご)である。故に文字の間(あいだ)をあけるべきである。字あまり、字たらずの場合でもアケルべし』という声に
      賛成である   反対である   どちらともいえない
      その理由は。(文字数は自由)
    
●アンケート④
『ていねいに 入れ歯を磨く おばあちゃん』などというふうに、無季の俳句を作っても、そのまま投句してよろしい、という声に対して、
      賛成である   反対である(句のワキに「無季」と記しておくべきだ)   
    どちらともいえない
     その理由は。(文字数は自由)
    
★アンケート①から④まですべてに、お一人で(同一人にて)回答してくださいますよう。
★アンケートの結果はこのブログ上にて、後日、ご報告申しあげます。
                                                    (以上 孝多)
                          令和3年9月1日


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コメント 5

森田一遅

アンケート回答①反対です。
・理由:これからの俳句は、漢字、ひらかな、カタカナ、アルファベット、文字記号なども入ってもいいと思います。とすれば、縦書きシバリにすると大変、表記しにくくなると思います。
②反対です。
・理由:こふみ会でも、時折、旧かなづかいや古文法なども混じった作品があります。少し、使い方に疑問を感じるものもあります。やはり、普段の言葉だからこそ、読み手に意が通じるのでは?
③どちらともいえない
・理由:俳句は基本、読み手に思いが通じることが大切です。1字開けで通じやすくなるなら、いいかも知れない。ただ、自分はしない。
④賛成です。
・理由:無季も俳句の、ひとつのジャンルです。こふみ会は「無季は禁」とはいわれていませんので。
以上


by 森田一遅 (2021-09-01 18:00) 

下戸

●アンケート①
どちらともいえない
その理由は、縦書きでも横書きでもよい、こだわらないから。

●アンケート②
『俳句では旧仮名づかいを使うべきである』という声に
  反対である
  その理由は、令和の句会だから。俳句は自由でよいと思う。

●アンケート③
どちらともいえない
その理由は。開けた方がよい場合はあける。そうでもない場合は続けて書けばよいと思う。

●アンケート④
『ていねいに 入れ歯を磨く おばあちゃん』などというふうに、無季の俳句を作っても、そのまま投句してよろしい、という声に対して、
反対である   
  その理由は。季語があるから俳句はおもしろい。



by 下戸 (2021-09-17 14:42) 

岩永嘉弘

①どちらとも言えない。現在書式のほとんどがデジタル通信で横書きだから。
②反対。俳句がガラバコスになっちゃうよ。
③反対。俳句でなくなってしまう。
④反対。季語のない句は、俳句ではない。
こふみ会の「句則」を作ろうとしているのですか?、だったら、このアンケートは没にしてください。自由がモットーで始まった句会ですから。さらに、このアンケートの結果をブログで公表するのもやめていただきたい。外部の人に知らせることではないでしょう。
以上、矢太
by 岩永嘉弘 (2021-09-17 20:22) 

chinokigi

アンケートへの回答、ありがとうございます。
お願いの項目にはトクメイ(匿名)でも可と明記してあり、回答のまとめはグラフにしようと思っています。
理由の文字数は自由としたのはグラフを読むときの説明文にやくだてようと考えたからです。
おっしゃるようなこふみ会の句則をつくろうとしているわけではけっしたありません。by孝多
by chinokigi (2021-09-18 10:46) 

匿名さん

アンケート③への回答
ご参考に。
https://haikuvariety.blog.fc2.com/blog-entry-58.html
by 匿名さん (2021-09-18 23:48) 

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