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検証 公団居住60年 №95 [雑木林の四季]

ⅩⅣ 住生活基本法は小泉構造改革の総仕上げ
 
   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治 

5・住生活基本法をめぐる自治協要求と国会の法案審議

 法の目的は、住宅施策について「基本理念」を定め、「国等の責務」を明らかにするとともに、理念実現を図るための基本的施策、「住生活基本計画」その他の基本となる事項を定めることにより、「国民生活の安定向上と社会福祉の増進を図る」との通例の結びにくわえ、「国民経済の健全な発展に寄与すること」としているのが象徴的である(第1条)。
 この法では、住宅建設計画法が定義していた「公的資金による住宅」は消え、公的賃貸住宅の用語もなく、公営住宅をはじめ、公庫融資の住宅、都市機構の賃貸・分譲等を「公営住宅等」に一括している(第2条)。
 法の基本理念として、「良質な住宅の供給等」「良好な居住環境の形成」「住宅を購入する者等の利益の擁護および増進」「住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保」の4項をあげ、これら各項が「図られることを旨として、行われなければならないものとする」に終始している(第3~6条)。
 基本理念にのっとり施策を策定し、これを実施する責務は、国および地方公共団体にあるとしながらも(第7条)、これと並べて住宅関連事業者(第8条)のはかに、公営住宅等の供給を行なう者、居住者、地域において保健医療または福祉サービス等の提供者など関係者は相互に連携協力するよう努めなければならない、としているのも新たな特徴である(第9条)。
 そのうえで基本的施策(第2章、11~14条)と、施策の推進をはかるための「住生活基本計画」(全国および都道府県計画)にかんする事項をさだめ(第3章、15~20条)、全22条からなっている。
 全国自治協は法案審議をまえに、2006年2月24日は家賃値上げ、団地管理の民間委託、住生活基本法案の3つをテーマに、3月28日には住生活基本法案勉強会と銘うって、団地自治会代表者国会要請集会を国会内でひらいた。両集会にはそれぞれ全国各団地から100人をこえる参加と、自民、民主、公明、共産、社民各党議員の出席をえた。衆参両院の関係議員にたいしては委員会可決の直前まで要請をかさね、付帯決議採択にも働きかけた。
 要請項目としては、①居住をすべての国民にひらかれた権利として明文化すること、②居住水準と住居費負担のナショナルミニマム(最低限度の基準)を明確にすること、③公共住宅の役割を再確認し、縮小ではなく発展をはかること、④居住者を住生活の主体と位置づけ、基礎自治体の役割を保障すること、の4項目をあげた。
 法案は衆議院で06年4月18、21、28の3日、参議院は5月30日、6月1日の両日それぞれ国土交通委員会審議がおこなわれ賛成多数で可決、付帯決議は全会一致で採択された。審議内容には、事前の要請活動と連日100人をこえる熱心な委員会傍聴の影響がみられ、付帯決議の各項目に自治協要請が一部反映したのは事実である。住生活基本法は6月2日に成立、同月8日に公布・施行された。
 しかしここで確認しておくべきは、法案審議をつうじ政府が一貫して、居住を国民の権利として明記する要求をはねつけ、居住安定の要である居住費の負担限度と国の保障義務にかんする言及を拒んだことである。北側一雄国交大臣は「法律全体は憲法13条または25条の理念にもとづいて構成されていると理解している」「基本法の目的である居住安定は住宅セーフティネットによって確保する」をくりかえすにとどまった。両院の付帯決議作成にも政府側がつよく介入したのか、付帯決議をよりどころに自治協が要求実現にせまる手がかりは文面から注意深く取り除かれており、都市機構法付帯決議のレベルから明らかに大きく後退していた。

『検証 公団居住60年』 東信堂


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