SSブログ

検証 公団居住60年 №93 [雑木林の四季]

ⅩⅣ 住生活基本法は小泉構造改革の総仕上げ

   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

 3.公共住宅政策を骨抜きにした住宅関連3法

 住宅政策の分野でも公共責任から市場原理への転換をめざした小泉「構造改革」は、以上みたように、官民あげての答申、提言等々の大合唱を背景に、まずは公営、公団、公庫の各法をひとまとめにして骨抜きをはかった。それが、2005年2月8日に閣議決定した住宅関連3法案である。

1)公的資金による住宅及び宅地の供給体制の整備のための公営住宅法等の一部を改正する法律(公営住宅法等一部改正)
 「公営住宅法等一部改正」と称して、公営住宅法、住宅金融公庫法、都市機構法、地方住宅供給公社法などの法律を一括しての乱暴な改正であった。
 公営住宅法と公社法の一部改正では、公営住宅の家賃収入補助は2005年度をもって打ち切ることをきめ、管理を他の地方公共団体または地方住宅供給公社が代行できるようにする一方、公社は自主的に解散してよいことにした。住宅金融公庫法は2007年3月31日廃止までの経過措置として改正した。
 都市機構法については、資産の含み損が約3兆円にのぼったニュータウン事業の中止にともない特別勘定を設けて造成宅地等の早期処分をおこない、財投資金の繰り上げ償還をすること、家賃収入が大部をなす都市再生勘定から宅地造成等経過勘定への利益の繰り入れをさだめた。居住者から過重な家賃徴収をして10%をこえる純利益をあげ、これを大企業奉仕の事業が出しつづける赤字の穴埋めにまわす法改正であった。

2)地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法(地域住宅特別措置法)
 この特別措置法は、多様な需要にこたえる公的賃貸住宅の整備の推進をとなえながら、すべて国および地方自治体の「努力義務」としている点に特徴がある。都道府県、市町村は、「国が定める基本方針に基づき」地域住宅協議会を組織し、地域住宅計画を作成することが「できる」(「しなくてもよい」)。地域住宅計画を「提出した自治体」にたいして国は、予算の範囲内で交付金を交付することが「できる」。国には「基本計画を定める」以外、公的賃貸住宅整備の義務はいっさいない。国庫補助または負担を廃止して交付金制度にかえ、その整備の責任を主として市町村まかせにし、国は責任から撤退する方向をしめしている。この法律で、国庫補助とともに「公営住宅」の名は消え、2005年度住宅予算は、「公営住宅等」の項目は「住まいの安心確保」にかわり、国費、事業費とも年々ひきつづき目立って削減されている。ちなみに「住宅対策」全体では前年度にくらべ、国費6%、事業費18%の減少にたいし、「市街地整備」に限っては、それぞれ33%、18%の増加であった。地域住宅交付金制度の創設、ごく少額の交付金計上とひきかえに国の住宅予算はばっさり切られていくことになる。

3)独立行政法人住宅金融支援機構法案
 住宅金融公庫は廃止、個人向けローンは、災害対応等を除きすべて民間金融機関まかせになる。新法人は、債権の証券化等により金融機関の支援にあたる。持ち家をもとうとする人は、民間金融の厳しい選別のもとにおかれ、先行き不安定なローン返済を強いられることは避けられない。

 さきの2法案は、2005年4月22、26、27日に衆院国土交通委員会で審議された。関東の5公団自治協を中心に連日60名、延べ180人をこえる団地自治会役員が早朝から駆けつけ、傍聴席を埋めた。質疑のあと27日に賛成多数で可決、10項目からなる法案にたいする付帯決議が採択された。法案は5月10日の衆院本会議で可決され、審議は参議院に移った。
 参議院の委員会審議は6月9、14、1(;日の3日間おこなわれた。14日には参考人の意見聴取があり、浅見泰司(東京大学)、川崎直宏(市浦ハウジング)、多和田栄治(全国自治協代表幹事)がまねかれ、多和田は居住者の立場から公共住宅の重要性を強調する意見をのべた。
 傍聴には6月9日90人、14日110人、16日86人、3日間で延べ286人がつめかけ、田名部委員長の計らいでいちばん広い委員会室で審議をおこない、熱心な傍聴が委員に感銘をあたえた。両法案は賛成多数で可決、10項目の付帯決議が全会一致で採択された。
 両法案は05年6月22日に本会議で可決、成立した。独立行政法人住宅金融支援機構法は7月6日に成立、住宅金融公庫は廃止された。

『検証 小段居住60年』 東信堂




nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。