SSブログ

検証 公団居住60年 №79 [雑木林の四季]

ⅩⅢ 独立行政法人化して都市再生機構に改組
 
     国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

8.賃貸住宅の経営状況
 
 韓貸住宅とその土地の資産
 賃貸住宅資産は住宅、施設、住宅等土地から成る。賃貸住宅および土地資産の規模と価額(資産価額は減価償却累計額を除く)の1991年度、2000年度、2004年6月30日現在との対比は、つぎのとおり。
          (表略))
 ここでよく分からないのは、賃貸住宅戸数の微増にもかかわらず、資産価糊が大幅に増加したことと、賃貸土地は面積の微減に反しほぼ倍増した理由である。
 住宅にかんしては、戸数と新規住宅の床面積の微増のほか、建て替えや住宅リニューアルなどによる住宅資産簿価の引き上げはありうる。そのほか、従前は建設原価を70年償却で回収する方式で家賃を算足したのが、築後40年くらいで建て替え、未償却分を新たな住宅の原価に組み入れ資産価額は上がるともいえるが、比率に表われる程とは思えない。公団の建て替えは、敷地を何十倍にも上がった時価をもとに再評価し、家賃を3倍にも4倍にも引き上げたうえ、高層化して余剰地をつくりだし民間に売却するのがねらいだから、住宅用地の資産価額がはね上がることは考えられる。しかし、それにしても建て替えの建設戸数は全戸数の9.0%にもおよばず、住宅・土地資産の全面的な倍増ともいえる価額急増の説明には到底ならない。
 あと推量すれば、機構へ移行の開始バランスシート上、債務超過にさせないために、賃貸住宅部門以外は資産価額を大幅に引き下げざるをえない状況のもとで、安定的に純利益をあげている賃貸住宅とその用地の資産価額を引き上げるはかなかった、作為ではないか。

 賃貸住宅経営の収入と費用
 賃貸住宅の管理収入は家賃、共益費、施設・倉庫賃貸料などの収入であり、経常費用としては賃貸住宅管理諸費(管理業務費と資産減価償却費)、一般管理費、財務費(支払い利息)がある。先にならって、各年度の損益計算書から1991年度から2004年6月30日現在までの数値をならべてみる。
          (表略))
 バブル崩壊後のこの時期、賃貸住宅の新規建設はほぼ終息していた。公団は家賃の増収を継続家賃のくりかえし値上げと、建て替え、住宅リニューアル等による増収にたよった。91年に第4次、95年に第5次、2000年に第6次、03年には第7次改定と家賃値上げ攻勢をかけてきた。さきの行政監察局報告も「96年度の民間住宅は2年前にくらべ、譲渡価格は75%、家賃は93%に低下しているのに、住都公団の分譲住宅は108%、家賃は107%上昇し民間の価格動向に逆行」と指摘していた。公団収益の柱である家賃収入のこの「安定的な確保」、引き上げが、居住者の生活に具体的にいかなる犠牲を強いているか、公団住宅の性格を歪めてきたかは、ここであらためて述べるまでもない。

 都市公団経営の評価と課題
 都市公団の財務構造と賃貸住宅経営の特徴と問題点をみてきた。その総合的な評価については、1996~2002年の公団経営を分析した山口不二夫論文「都市基盤整備公団の経営分析と土地保有機構、ナショナルトラストセンターへの可能性-三井不動産(株)との比較を通じて」(青山国際政経論集59号、2003年1月)から、総括的な要旨を引用しておく。山口は03年5月の都市機構法審議のさい、わたしとともに衆院国土交通委員会で参考人発言をした。
 ①本業で見た公団の経営は、高い営業利益を出しており、決して不効率ではない。効率である。②とくに効率的で、経営成績に貢献しているのは賃貸部門である。問題点としては、③自己資本比率が極端に低く、④高い営業利益水準を食いつぶす過多の借入による資金調達であり、金利負担が極めて大きい。また調達金利も高利である。96年から02年の分析対象の期間はバブル崩壊後の厳しい不況下の時期で、この時期、三井不動産では資産を整理し資産の健全化を図ることで経営を立て直し、高い経営成績を達成していることとは対照的に、⑤公団は資産を増加させている。それも経営状態の非常によくない都市開発部門で急速に土地の購入が行われている。⑥そのうえ借入過多依存のなかでの借入金による資産の購入である。現状では、ますます金利負担が重くなり、これがまた経営を圧迫することになる。
 借入過多依存型の経営体質の改善と不健全である都市開発部門の見直しが必要である。このような改善なしには、健全で効率的な賃貸部門までもが悪影響を受けてしまう可能性がある。
『検証 公団居住60年』 東信堂


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。