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エラワン哀歌 №1 [文芸美術の森]

あのころ

              詩人  志田道子
 
 かがみとかがみを合わせて
 かたがわから顔を突っこむと
 いくつものわたしの顔がそこにあった
 三人もいたし 五人もいたし
 それぞれが少しずつ違って
 わたしにはいっぱい
 きょうだいがいるみたい
 だれもいない家に帰っても
 きょうだいたちが待っていた
 それぞれがわれ血肌をもりていて
 しけんのときには答える役をぶんたんした
 算数のとくいな やすえ
 国語のせんせい なつこ
 お絵かき上手な かりん
 庭にはぶどうの棚があって
 かなぶんがやって来て
 葉っぱに穴がいっぱいあいて
 レースみたいになっていたけど
 秋にはむらさき色の実もつけた
 いっぱい いっぱい
 実をつけた

『エラワン哀歌 志田道子詩集』 土曜美術社


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