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バルタンの呟き №96 [雑木林の四季]

満月Full Moon

           映画監督  飯島敏宏

昏冥の中天に、まん丸な月が浮かんでいます。眼下には、疎らに並ぶ一筋の街灯と、幾何か漏れ出る家々の窓明かりの他には、灯る光もなく、見降ろせば、蒼い月光が、数々の屋根に降り注ぐ我が街が広がっています。眼下の街には人影もなく、ひたすらに、まるで息をひそめているように、静まり返っています。
深夜ではありません。このところ引き続いている乾ききった晴天がもたらした、見事な夕焼けが、ひとしきり、沈みゆく日の名残りのように、富士の頂を、あたかも白磁の皿一枚を頭上に置いたかと垣間見せて連なる丹沢の山並みのシルエットを際立たせて消えたばかりの、まだ宵の口なのです。
第三次緊急事態宣言とやらのゴールデンウイーク出だしの効果が、大方の予想を裏切ることなく、思わしくない感染蔓延状態で、Stay home ! の都府県知事の悲痛な声明に準じて(殉じて?)、あるいは、バイデン米大統領初の外国首脳直接招請に欣喜して飛び立った菅総理大臣初の直接外交経験の効果の不発、ファイザー薬品CEOとのワクチン交渉の曖昧感、その追い打ちに、直近の選挙戦で対野党三戦全敗、で連打されて、このところ頓に低姿勢(視線?)になった総理の、国民に対する声明ならぬお願い会見に、不承不承、或いは同情で、この街の住民の皆さんが、鎮(しん)と息を潜めて、何処へも行かずに、自家でお造りになったか或いは出前、宅配、お持ち帰り、での食事などなさっている光景なのです。 
僕の場合、ママ(カミさんのことです)が、ため息つきながら(かどうか不確かですが)宅配された素材に添付されて来た、電子レンジで自動簡単チン出来レシピ、を無視して、永年かけて会得した我流の味付けで造ってくれた食事を、昭和男の、口には出さねど感謝のこころ、をこめて済ませ、すでに一年間を超えた蟄居で、或いは加齢で、昨今殊さらに衰えた足腰のために、我が家からほんの100メートルほどの、昇る私道地道の、真ん中が、東京都と神奈川県の境となる森の石段を上り切って、昨秋の落ち葉枯れ敷くまま、古木は蔦に巻きつかれるままの丘の頂上に置かれた誰方かの善意の古びたプラスチックベンチに倒れ込んでの、息継ぎがてらの月見休憩、という訳なのです。
先ほどから、人通りが全くないのは、東京都知事神奈川県知事切望のリモートワーク、人間移動休止通達の徹底のせいなのでしょうか。最寄り駅まで徒歩15分の峠道です。僕が50年近く前(ああ!)にこの住宅地を買った時には、たった15分の道でも、雉や鶉、時には狸という尾根伝いの並木道でしたが、峠の先は、いまでは駅まで家が連なり、車も通り、小型ですが地域のバスも走るコンクリートの道を、ようやく30分で駅に至る程度の歩きざまになってしまいました。
ところで、卒爾ながら、full Moonが、満月の英語だとご存じでしたか? 恥かしながら、僕は、なんとこの歳になるまで、この見事に造形的な英単語を見知りませんでした。フルムーンとは、かつて交通公社(JTB)が新幹線旅行の目玉商品?として、熟年夫婦のグリーン車割引と温泉旅行を特典的に扱って普及したネーミングだったと思いますが、その比喩が単語と馴染みすぎて、満月の英語名だという事を、僕は、失念したのか、それとも全く知らなかったか、フルムーンがfull Moon由来で、満月の事だと、今にして気が付いたのです。

閑話休題、ここで、Go!to travel!to eat! キャンペーンに思いは跳びます。それにしても、この始末を、この第4波では,どうつけたら良いのでしょうか。いや、それよりも何よりも、2020改め2021東京オリンピック・パラリンピックです。
返上、或いは4年先へ、との声もあった昨年、2020を2021にと延期した安倍総理の衣鉢を継いで、つい先日まで、「人類が新型コロナウイルスを克服した証拠(あかし)として、開催します」と胸を張ってきた菅総理ですが、あと100日も切ってしまった今、新型コロナの方は、そうはさせじと、次々に変異しているにも関わらず「国民の皆さんの命と暮らしを守る・・・」こともままならず、経済効果インバウンド(inbound)どころか、開催によって、とんでもない変異コロナウイルス持ち込みのリバウンド(rebound)まで危ぶまれるゴールデンウイーク入りになってしまいました。今こそは、「鬼滅の刃」のためにではなく、「コロナ滅」の為に、専門家の方々のご意見を、「ながら聞き」するのではなく、おっしゃる通りしっかりと「全集中」して聴いて、対策に臨んで頂きたいものです。

以上が、フルムーン旅行も断念して、ママと二人、子も孫も訪ねることもできない、いまや手狭どころか広すぎるリビングホールで、ささやかにワイン一杯自家飲みして、小声での呟きです。 間違っても、知事が「来ないで!」と叫ぶ都心に、すでに手の足りない自衛隊医療班を都心に派遣して、テレワークの現役老人や、退役老人がワクチン求めて都心に押し寄せるような奇手の矛盾を、大声で叫びたいのを押し殺して・・・マスクしての呟きです。


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