SSブログ

バルタンの呟き №95 [雑木林の四季]

「まん防」とは?

              映画監督  飯島敏宏

爛漫の春、全国各地のサクラガ咲き揃って、山々は、緑に萌えています。山笑う、という季語がありますが、わが街を取り囲む丘陵も(火事を怖れて多数の老木を伐採したので、かなり浅くなりましたが)濃く、薄く、緑に輝いています。今年は、筍が豊作なのでしょうか、毎年この時季に筍を売り出す地元の山持ち農家ばかりか、今年は、なんと街にただ一軒残る本屋さんまで、「朝採れの」と銘打って、大根などと一緒に巨きな孟宗竹筍を店前に並べているのです。それとも、筍の作柄とは関係なく、際限なく長引いているStay home! の影響で、「筍料理にでも挑戦してみようか」というお宅が増えたのでしょうか、本屋のおばさんの話では、「売れてるよ!」ということです。
米寿を過ぎて、小説という新たな分野への挑戦を試みている僕、バルタンの呟きとしては、筍料理ばかりではなく、時間があるなら、ぜひ、紙の本を買い求めて読んでくれないかなあ・・・という所なのですが、
「おっ!店内から子供連れの若いお父さんが出てきた!」
と、思いきや、手にしているのは、「鬼滅の刃」と「ドラえもん」の漫画版なのでした。
聞けば、高校の今年度検定国語教科書から、ついに文学作品が消えてしまったとか・・・
プレゼンの技能開発の為というならば、必要な決まり文句などは、PCやAIからポンと打ち出せばいいのに、味もそっけもない勉強で、情操などは不要という時代なのでしょうか。
執筆中の小説の為に、僕自身の少年期の記憶を呼び起そうと(コロナで図書館行きが怖くて)改めて取り寄せた文庫本で「樋口一葉・たけくらべ・にごりえ」を耽読して、まだうら若い樋口一葉の綴る旧い日本語が持っていた熟度や、簡潔さと読みのリズムに感嘆しながら、ふと「そうか、一億総デジタル化ニッポンのpay pay ! カード支払いなど、菅内閣の目玉政策であるデジタル改革で、5,000円札が不要になったら、樋口一葉も忘却の彼方へ、か」と、ため息を吐きました。

ところへ、今回のコロナ感染対策で放った菅内閣のキャッチフレーズ「まん防」です。「まんぼう」という音から「蔓延防止等重点措置」という聞きなれない言葉に連想が届きますか? むしろ、その音から、僕の頭の中には、あの、水族館のプールでガラス越しに見る、マンボウの漂い浮かんでいる姿が、描かれてしまうのです。「まん防」が、新型コロナウイルスCovid 19変異型の急増感染予防のために、緊張感の緩みを防止する目的で発動される措置のキャッチフレーズとは、到底思えないのです。
しかも、総理と官房長官、各大臣の口から、異口同音に発せられる「緊張感をもって」とか「スピード感をもって」の感とは、どういう効果を持つ言葉なのでしょう。どうせカタカナ英語を使うならば、「スピーディーに」と言えばいいでしょうし、緊張して、と直截に言えばいいものを、なんだか及び腰の言葉で、責任を曖昧にしている感があるのです。ともかく、「まん防」は、いただけません。「国民の生命と財産を守る」ための「非常事態宣言に至らないために」造り出したキャッチフレーズとしては、緊張感がありません。間もなく始まるまさしくゴールデンな長期一斉休暇に、「国民の皆さんのコロナ感染に対する緩みを改めて、緊急事態宣言に至らないように発動するのです。ぜひマンボウにご協力をお願いいたします」と頭を下げられても、一端はGo!to travel,eat!と散々煽られた末に、国民の「気の緩み」が感染を拡げたと責任転嫁されながら「まんぼう!」と叫ばれても、譬え感染してもただの風邪、と蜜を怖れずに歓楽街に押し寄せたりする若者ばかりか、当の庇護されるべき高齢者までが、数名での会食や、カラオケに興じ続ける緩みを是正する期待は空しく消散してしまうのではないでしょうか。「まん防」なる冗漫で意味不明なキャッチフレーズで、Go ! to travel以来、独り身の侘しさを紛らわし、他人との交流を求める気持ちからでしょうか、幾何かの私鉄株を保有して、株主優待券を利用したり、各駅停車限定のJR青春割引切符を手に、有り余る時間を過ごすために全国の名勝地を旅する孤独高齢者の増加などを留めることは、不可能ではないでしょうか。
感染防止よりも経済活性化を優先強調するかに見える長期間の緊急事態宣言よりも、短期間の完全封鎖いわゆる「ロック・ダウン」を決然と行い、出遅れたワクチン接種を、「スピード感をもって」でなく、迅速に実行して、「人類がコロナを克服した証として2021東京オリンピック・パラリンピック競技大会を迎える」のではなく、巧みに新型コロナウイルスCovid 19との共生を実現して、「国民の皆様の生命と財産を守る」ことこそが、真の幸福な未来志向ではないでしょうか。
間もなく、菅総理大臣が、主要各国の首脳との直接会談に旅立つようです。まさに、FOIP「自由で開かれたインド太平洋」を言葉通りに実現するために、同盟国米国を軍事的に偏重して中国包囲網を敷くのではなく、中ロ鮮はじめ、東南アジア諸国に真の「自由で開かれたインド太平洋圏実現」を説いて回るのが、正しく非戦争国日本が、悲惨な戦禍に巻き込まれるのを免れる「一本の道」ではないでしょうか・・・BON VOYAGE ! 
 憲法を押し曲げて実現する超高価な敵基地攻撃可能な武器生産や購入、今や宇宙戦争に奔ろうとする軍事同盟に偏重せずに、何れの側にも、グローバルな平和への道を説く日本・・・夢物語でしょうか。いえ、それこそが、平和大国ニッポンが自信を持って誇るべき大道です。
 戦争の悲惨を、僅かながら身に染みて経験した僕、バルタンの空耳であってほしいのですが、このところ、夢現に戦争の足音が聞こえるのです。未知未経験の、悲惨な戦争の・・・
 


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。