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浜田山通信 №286 [雑木林の四季]

人類最悪の愚行

       ジャーナリスト  野村勝美

 何事も続くばかりがよい訳ではない。やはりいいことは長く続いてほしいし、よくないことはなるべく早くやめてほしい。しかし世の中、よいことはなかなか長続きしないし、よからぬことはいつまでも続く。コロナは志村けんが死んでからもう一年以上になり、加えて変異性ウイルスなんてものまで現われて、国内の感染者は合計すると50万人を越える。ワクチンも4月末にはくるといっているが、数は少ない。オリンピックは無観客であっても何が何でもやると言っているようで、現に聖火リレーは3月25日から始まった。1本71940円するそうだからランナーになって貰うにしてももの入りだ。外国人観客は入れないというし、日本人も制限される。それでもテレビの視聴率はいいだろうし、スポンサーもつくだろう。いったいいつになったらコロナは終息するのか。
 一方で終わってほしくないものは終わる。2011年の福島第一原発事故をきっかけに毎週金曜日の夜、首相官邸前で行われてきた「反原発デモ」が3月26日の400回で終わりになった。原発は「人類史上最大の愚行」と、私と毎日新聞同期入社の高榎堯君は言い続けてきた。昔は『世界』などに反対を書き続けた。しかしジャーナリズムはいつも新しい者を求め、老人を相手にしなくなる。高榎君の論文、評論が日本のジャーナリズムに掲載されることはなくなった。彼の主張は、たんに、原子爆弾だけにとどまらない。核爆発をともなう原子力発電をもさす。核の平和利用といってジャーナリズムが大騒ぎしたもう50年前から彼の姿勢は一貫していた。いったん生み出された核物質は捨てるにしてもなくすにしても、その方法がない。ドイツのように地中深く埋めてもなくならず、永久的に地球上に残されていく。原子力発電が続々と生み出す使用済み廃棄物は増える一方で人間の手に負えないものになる。
 福島県を見よ、だ。事故10年たってジャーナリズムは大騒ぎしたが、山と摘まれた冷却水のドラム缶の山、漁協などが風評被害を恐れて海に捨てて処分することもできない。冷却水も廃棄物も増える一方で、いったん放射性物質が流れたフクシマの北西方向の地区は、自分の家にも帰れない。
 首相官邸前の抗議デモは、こうした原発反対の象徴として続いてきたものだ。ピーク時には20万人が集まったが、最後は200人になってしまった。10年続けても何の効果もなければ人間だれでもいやになる。国内の原発は、建設中の全60基のうち24基の廃炉が決まり、9基が再稼働したそうだ。東海村の原発は裁判で危険が指摘され、柏崎刈羽原発もいまだにゴタゴタが続いている。
 反対デモのためのステージや大型スピーカーの保管料が払えなくなったのがデモ中止の理由らしい。10年たって反響は年々小さくなり、政府は何かするポーズさえ見せない。一度も反対デモに参加したことのない老人が寂しがる権利もないが、世界中でヒロシマ型原爆を毎日3、4個分燃やしている、人類史上最悪の愚行を何とかとめられないか―。

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