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雑記帳2021-3-15 [代表・玲子の雑記帳]

2021-3-15
◆水の郷、日野を歩く

立川に隣接する日野市は水の豊かなまちだと聞いていました。
多摩川と浅川の二つの川に囲まれて、台地や丘陵地の崖線に湧水を多くもち、用水路が縦横に流れる田園風景を歩いてみました。

JR中央線の豊田駅は不思議なかたちをしています。
改札を出て階段をのぼり、北の出口に出ると、そこが台地の上だという事がわかります。駅前広場が台地の上にあるので駅舎はまったく見えない、地下鉄でもないのに、こんな駅はほかにないくらいめずらしい地形なのだそうです。

駅から北東方向に細長くつづく約1.7キロの段丘崖は、東京都の「東豊田緑地保全地域」に指定されています。崖下から染み出る湧水を活用して、黒川清流公園は昭和60年頃に整備されました。
冬は雨が降らないので湧水の量も減っているとはいうものの、池にはコイの姿も見られます。

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なだらかな段丘崖がつづく東豊田緑地保全地域
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池には鯉の姿も

緑地の中ほどにある施設は、その名も「カワセミハウス」。日野市の豊かな環境情報を発信する場です。同時に市はここが市民の新たなコミュニティになるのを期待しているのだそうです。カワセミは日野市の鳥なのです。
ちなみに都内には50の緑地保全地域があり、立川にも矢川緑地が指定されています。

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カワセミハウス

黒川清流公園からいったん駅にもどり、駅の南側にでます。そこから500mほどの所に市立中央図書館があります。図書館の窓越しに見えるのは八幡神社。実は図書館は八幡神社の敷地にたっているのです。
神社の鳥居は台地の下です。湧きだす水量は市内でも2番目だということで、泉には誰が植えたのか、ワサビがそだっていました。かっては湧水のいたるところに見られたワサビでしたが、水温が高くなった今ではほとんど見られなくなったということです。

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八幡神社の社
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神社の鳥居は崖下にある。崖上の建物は中央図書館
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崖下の湧水

八幡神社下の湧水は東京の名湧水57選にも選ばれています。
湧水の流れのそばにたつのはNBC.メッシュテック、旧日本篩絹の工場です。
篩絹とは昭和初期に開発された生活用・産業用の絹の篩(ふるい)です。この地で製粉用篩絹の製織から出発した会社は今、その技術を生かしたグローバル企業になっています。そして、篩絹の製織には豊富な水が必要だったのです。

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NBCの本社工場

流れはやがて浅川から取水された豊田用水に注ぎます。
幅2メートルの石積み護岸がつづく用水は、段丘沿いをゆったりと流れています。
今はなくなりましたが、かって周辺には広大な水田がひろがっていました。四季折々の植物や野鳥とともに、コイヤハヤの泳ぐ水路はまちに溶け込み、人々の心に潤いをもたらしました。

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幅2メートルの石積みの用水路
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用水路にはサギやカモも観察できる。

用水沿いに、歴史を偲ばせる黒塀や蔵、欅の大木のある家を見つけました。明治の終わりごろ、豊田の耕地整理や駅の誘致に尽力したY邸です。豊富な地下水を利用してビールを作っていた時期もあったそうです。残したい風景ですが、残念なことに、区画整理によって、家を取り囲んでいた生垣や浅川の石を使った石積みの塀も取り壊されたのだそうです。

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Y邸

市内は今、あちこちで区画整理がすすんでいます。
市民生活の安全を優先すれば、新しいまち並みには2メートルもの水路はもはや望めず、風景もかわっていかざるをえないのでしょうか。

自宅裏の崖下から出る湧水で、野菜などの洗いものに利用している家がありました。
昔はもっと水量も多く、飲み水にも利用されていたのだそうです。洗い場は「カワド」と呼ばれていました。

豊田用水から浅川へむかう堀之内緑道沿いに日枝神社があります。
境内のムクノキは樹齢300年をこえるといわれています。

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日枝神社本殿の裏にある樹齢300年を超えるムクノキ

かっては汚染されていた浅川は、下水処理場が整備されてからは水もきれいになり、生物の住みやすい環境になりました。アユがのぼり、メダカやコイのほか、10種類以上の川魚が住んでいます。歩いたこの日、カワセミこそ見なかったものの、コサギやチュウサギ、カモの姿を見ることができました。
浅川からは豊田用水の他にも、日野用水、上田用水など、何本もの用水がとりこまれて市内を縦横にながれているのです。

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向島用水の取水口

中でも向島用水は、かってはコンクリート護岸でしたが、素掘りの親水路として再整備され、市民の憩いの場になりました。
500mの遊歩道沿いには水車やあずまやがあり、子どもたちが水遊びや魚とりもできるように工夫されています
向島水車は臼が2基ある本格的な水車です。これを活用しようと、有志が集まって、精米や発電の実験を公開しながら、昔の智恵を伝える活動を始めました。

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親水路に変わった向島用水
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遊歩道の周辺は向島緑地
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向島水車

もともと農業用に造られた用水は活用されなければやがてきえていく。
水車活用プロジェクトをを立ち上げた佐藤美千代さんは、向島用水がそばを流れる畑を借りて「せせらぎ農園」を開きました。 近隣約200世帯の生ごみを回収して堆肥化し、無農薬・無化学疲労で野菜や花を栽培する自然循環型のコミュニテイガーデンです。2008年のことででした。2015年には田んぼも復活させて稲づくりも開始しました。

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せせらぎ農園入口の看板

農園は市の委託金170万円で運営され、週3日の農作業日には誰でも気軽に参加することができる。決まりはなにもないのだそうです。参加者はお礼に作物をもらって帰ります。
近隣の保育園や幼稚園児の農体験の場にもなっていて、異なる世代が集える場、地域に開かれた農園として親しまれています。
堆肥は直接畑にまいて土と混ぜた生ごみをシートで覆って発酵させるのがミソ。手間もかからず、好気性のバクテリアがよく働いてくれるそうです。

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発酵している土は暖かい

残念なことに、せせらぎ農園も区画整理の対象になって、13年続いた農園は、来年3月には閉園になるそうです。それでも佐藤さんは、場所を変えても活動を止めるわけではないと元気でした。
日野市は「水辺のある風景 50選」を策定、「水の郷、日野」のまちづくりに活かそうとしています。   

  

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