SSブログ

検証 公団居住60年 №75 [雑木林の四季]

ⅩⅢ 独立行政法人化して都市再生機構に改組
 
    国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

 3.公団住宅売却・民営化に反対する公団自治協のたたかい

 閣議決定までの経過を、小泉首相が主導する改革推進事務局の提案と、これに「抵抗」をみせた官僚と政治家たちの動きに分けてたどってみる。その根底・背景には、全国の各団地自治会の結束したねばり強い活動をはじめ、国民共同の運動や世論があった。その反映が、国政舞台での「対立」や「妥協」となって現われ、政府「計画」が決められてくることを実感した。団地居住者の運動のもり上がりや世論の広がりこそが「矛盾」を露わにさせ、政治に動きをつくりだした。
 公団住宅についていえば、行革事務局は当初、ほぼ無条件に「新規建設は行わない」「既存住宅は順次売却する」方針をだしていたのにたいし、閣議決定では、「自ら土地を取得して」の建設は行わない、「居住の安定に配慮しつつ、入居者の同意を得た上で」売却に「努める」と、限定句を挿入せざるをえなかった。
 とはいえ、政府が基本方針として公団賃貸住宅の新規建設の中止をきめ、国民の居住不安をかえりみず貴重な国民資産である公団住宅の民間事業者への売却をうちだしたことは決定的に重大である。

 全国自治協は2001年6月30日、7月1日の両日、第28回定期総会をひらいた後、緊急に各自治会によびかけ、まず7月に小泉首相あて「公団賃貸住宅を公共住宅として存続させることを要請する」団地自治会の会長署名(243団地)を振出。9月11日には国会内で自治会代表者要請集会(参加87自治会150人)をひらいた。集会では朝日、NHK、TBSなどマスコミの取材をうけた。ニューヨークで同時多発テロのあった日である。その前後、地方自治協ごとに地元選出議員への要請をくりかえした。全国自治協代表は、内閣の行革推進事務局、国交省の都市公団監理官室、自民党ほか各党の政策担当者と恕談し積極的に意見をのべてきた。
 また各団地自治会は、9月、12月、翌年3月の地方議会にたいし「公共住宅としての存続」をもとめる意見書採択の陳情・請願にとりくみ、全国38議会から意見書、東京、埼玉、千葉、愛知、大阪、兵庫の9市長からは要望書が小泉首相ほか関係大臣、公団総裁に提出された。東京多摩では12市の市長から自治協機関紙にメッセージがよせられた。
 その間、各団地では「公団住宅の存続」「売却・民営化反対」と染めぬいたのぼり旗をはためかせ、宣伝学習活動をつよめた。住民の一一人ひとりが小泉首相と国会議員に万を数える要請のはがき・手紙を書いておくった。全国の団地で住まいの不安と怒りが高まるなかで全国統一行動を展開し、10月26日と12月7日の2次にわたって全国居住者総決起集会を東京・日本教育会館太ホールでひらき(参加154自治会837人、143自治会868人)、それぞれ約35万人の署名を提出し、行革推進事務局特殊法人等改革推進室、国交省住宅局、都市機構本社に要請をおこなった。集会には自民、民主、公明、共産、社民各党の国会議員が出席し、協力のあいさつに立った。
 小泉内閣が「特殊法人等整理合理化計画」を閣議決定した12月19日には、全国自治協はこれにたいする見解を発表した。またその前日の12月18日に全国自治協、日本住宅会議など住宅問題・住宅運動関係の10団体は、「国民の住まいを守る全国連絡会」(略称「住まい連」)を結成し、翌02年2月24日には緊急集会を東京・日本教育会館大ホールでひらき、931人が参加、会場から神田神保町の大通りを錦華公園までデモ行進をした。

 閣議決定にもとづき国交省は公団廃止・独法化法案づくりを急ぎ、公団は新法人設立準備にはいる一方、03年4月の第7次家賃値上げ実施にむけて動きだしていた。全国自治協は2002年6月22~23日の第29回定期総会で当面する活動方針を確認しあった。
 7月16日には全国団地自治会代表者集会をひらき、222団地13.7万世帯、32万人の署名を国交省に提出し、要請をおこなった。地方議会への意見書採択の陳情・請願、首長要望書の提出要請もつづけ、02年度にはいって新たに10市長、4市長会から小泉首相に要望書が送られた。政府の公団住宅廃止方針、公団の家賃値上げが居住者の生活不安をさらに深めるなか、9月におこなった全世帯対象の第6回全国団地生活アンケート調査結果(11月1日に発表)は、その後の活動の重要な場面で大きな役割をはたした。さらにまた12月5日の全国公団住宅居住者総決起集会にむけては全戸署名にとりくんだ。集会には各党代表も出席、会場いっぱいに148団地874人が参加した。代表団が220団地からよせられた約30万人の署名をそれぞれ都市公団総裁と国交大臣あてに提出し、集会参加者は九段下の公団本社玄関前に移動し、「本社前集会」をひらいた。

『検証 公団居住60年』 東信堂


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。