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往きは良い良い、帰りは……物語 №92 [文芸美術の森]

こふみ会通信 №92 (コロナ禍による在宅句会 その7)
「春が来た」「鷽(うそ)」「春炬燵」「水曜日」

                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

連名で、2人の幹事さんから下記のような≪令和3年2月の句会≫の案内が届きました。

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鬱陶しい緊急事態宣言下の中にも、季節は立春。もう春の句会です。
今回は、勝手に鬼禿と一遅が幹事を務めます。よろしくお願いいたします。
●在宅句会です。
●投句の締切は2月10日といたします。
●兼題:①【春が来た】来た、来る、来いなど、言い回しは自由。
     ②【鷽(うそ)】
     ③【春炬燵】
     ④【水曜日】この語は無季です。各自、季語を選んで作句をお願いします。

●投句先:大谷鬼禿<h-otani@amber.plala.or.jp>
        〒231-0023横浜市中区山下町58-1304
     森田一遅<mrthjm@globe.ocn.ne.jp>
        〒113-0031文京区本駒込2-28-1B-1505

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【通知によって作成。投句された今回の全作品】 16名  64句

【春が来た】 
手の平に乗るほどの幸春が来る(舞蹴)
整然と針目が並び春が来た(華松)
命あれば各人停車で春は来る(尚哉)
ゲルニカに一輪の花春が来る(弥生)
鬼が来る春が来ぬ鬼が来る(矢太)
春が来た パステルで描く 妻の背な(紅螺)
万物も少し狂わせ春来たる(虚視)
春来るや猫のおなかのもふもふと(すかんぽ)
大太鼓ふるえる夜に春がくる(下戸)
春が来て 子等の裸足が 土を蹴る(茘子)
なくしもの 数え数えて 春が来た(兎子)
グンググンと伸びし球根春が来た(小文)
春が来てもどこか歪んだ地平線(鬼禿)
春がきた君のスキップ軽やかに(玲滴)
春が来た日本一の 朝寝かな(孝多)
テレワーク気になる人いて春よ来い(一遅)

【鷽(うそ)】
ささやかな幸福の予感鷽の頬(小文)
嘘つきの 男に惚れて 鷽替えし(茘子)
嘘なら知ってるが鷽なんて知らん(矢太)
鷽鳴きて人間界は面白き(舞蹴)
天平の 乙女香し 鷽の声(紅螺)
恐竜の進化形かや鷽渡る(尚哉)
鷽が来て何やらついばむ母の家(一遅)
鷽鳴きてなほ静けさの深まりぬ(虚視)
鷽替えて深く息するホーム端(華松)
ひょうきんな友かと向けば鷽の声(すかんぽ)
たはむれに口笛吹いて鷽をよぶ(弥生)
壊れゆく函庭のいろ鷽の朱(鬼禿)
鷽だけど 私のままで 好かれたい(兎子)
言葉と言うおそろしきもの嘘の鷽(孝多)
ごめんねと鷽替え誘うにくい人(下戸)
鷽鳴いて胸の赤きに思いよせ(玲滴)
◆残念な句がありました。「鷽替え」は新年の季語。「鷽」は春です。

【春炬燵】
馴れ初めを聞かされてをり春炬燵(弥生)
春炬燵心配性のバロメータ(華松)
春こたつ猫背となりて蹲り(虚視)
ものぐさが逃げ込んでいる春炬燵(孝多)
ワクチンを射つの射たぬの春炬燵(すかんぽ)
屋形船 炬燵の下で 魚(ウオ)跳ねる(茘子)
夢甘し春の炬燵や脚の指(鬼禿)
北斎の終のアトリエ春炬燵(下戸)
生きるのも死ぬのも嫌な春炬燵(舞蹴)
友待つや 春の炬燵で ソーダ水(紅螺)
春炬燵の底に巨きな岩眠る(矢太)
パソコンとプリンタ載せて春炬燵(尚哉)
ねこの居たときの名残や春炬燵(玲滴)
旅の夢 搭乗ゲートは 春炬燵(兎子)
コショコショと内緒話の春炬燵(小文)
あれにそれ亭主に根が生え春炬燵(一遅)

【水曜日】
ミャンマーの放水二月の水曜日(矢太)
水曜日あとは在宅フリージア買う(華松)
春の風邪寝ていたいまだ水曜日(小文)
猫の恋ながめて暮らす水曜日(下戸)
春ショールわたし水曜ノーワーク(尚哉)
在宅を 抜け出し走る 水曜日(兎子)
流れくる野焼きの匂い水曜日(虚視)
水曜日セールに菜花見つけたり(玲滴)
水曜日今日は五時間光る風(弥生)
余寒とは誰とも会えない水曜日(鬼禿)
雪降れば幼児となりて水曜日(舞蹴)
水曜日 休診の女医の 春セーター(紅螺)
水曜日 退院延びて 春逃げる(茘子)
水曜日人生後半不甲斐なし(一遅)
もう水曜日まだ水曜日山笑ふ(すかんぽ)
水曜日 週の真ん中 眠き春(孝多)

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【天句鑑賞】 

●万物も少し狂わせ春来たる(虚視)
観賞短文=寒い冬からやっと春へ。しかしこの今の閉塞感は初めての体験かも。万物もそりゃ狂いたくなるでしょう。「少し狂わせ」ていうところが絶妙!(舞蹴)
観賞短文=こんな春の捉え方があるのですね。東洋医学では自然と人間は相似関係にあるといいますが、人間だけでなく万物そうであると思います。春にはめまいや情緒不安定が多いそうです。春は生物を元気 にする一方少し狂わせるのかもしれません。(弥生)

●北斎の終のアトリエ春炬燵(下戸)
観賞短文=描きかけの絵が散らばる北斎の部屋が、眼の前に展開するようでした。(虚視)

●大太鼓ふるえる夜に春が来る(下戸)
観賞短文=大太鼓・夜・春の取り合わせがセンス抜群、すっきりしているのに余韻があります。(華松)

●鷽鳴きて人間界は面白き(舞蹴)
観賞短文=すこし引いた、客観的な視点がいいな、と思いました。鷽=嘘を軽く感じさせる程度に抑えているのもいいかな、と。(尚哉)

●ごめんねと鷽替え誘うにくい人(下戸)
観賞短文=サラッとできるこういう人に弱いのです。(小文)

●水曜日 休診の女医の 春セーター(紅螺)
観賞短文=「水曜日」お題がとても難しい中、素敵に切り取られたと思います。休みの女医さんの解放された気持ち、春セーターの色やテクスチャーまでイメージがひろがる、素敵な句。(茘子)
観賞短文=何でもない普通の現象を、驚きの念をもって捕えて表現したお手柄。秀句を示して頂き、有難うございました。(孝多)

●鷽鳴きてなほ静けさの深まりぬ(虚視)
観賞短文=鷽の鳴き声を聞いたことはありませんが、甲高く鋭く鳴いて、鷽が飛び去ったあとの早春の爽やかな空気を表現して鮮やかです。(紅螺)

●馴れ初めを聞かされてをり春炬燵(弥生)
観賞短文=男の考える春炬燵とは違って、女性らしいよくある光景、いかにも春の句です。(鬼禿)
観賞短文=自分はストーリーを感じる句が好きですが、これはまさにそれ。「聞かされてをり」のやむなく感が面白い。(一遅)

●生きるのも死ぬのも嫌な春炬燵(舞蹴)
観賞短文=春炬燵から離れづらい気持ちを、俳諧味をもって見事に詠まれていると感服しました。(すかんぽ)

●手の平に乗るほどの幸春が来る(舞蹴)
観賞短文=ほのぼのと身に染みていいなあ。(玲滴)

●春炬燵の底に巨きな岩眠る(矢太)
観賞短文=うららかだけど、不穏と始まりの予感が秘められている。(兎子)

●あれにそれ亭主に根が生え春炬燵(一遅)
観賞短文=ほのぼのとした家庭の雰囲気が伝わってくる名句。今となっては「昭和」の風景ではあるが、そうだからこそ味わい深い。「あれにそれ」の5文字は、何気ないようでいて、こちら側の想像力を刺激する。こんな春炬燵、私もしてみたい。(下戸)

●命あれば各人停車で春は来る(尚哉)
観賞短文=そうありたいなあ。(矢太)

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【今月の成績一覧】
トータルの天=虚視・59点
    代表句=鷽鳴きてなほ静けさの深まりぬ
トータルの地=舞蹴・41点
    代表句=手の平に乗るほどの幸春が来る
トータルの人=弥生・38点
    代表句=馴れ初めを聞かされてをり春炬燵
トータルの次点=下戸・33点
    代表句=北斎の終のアトリエ春炬燵

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近ごろ、オンラインでは、とても熱心に、いろいろな意見が交わされているようです。たとえば、当番幹事役の決め方。たとえば、天をもらった人が天に選んでくれた人へのお礼の気持ちを伝える方法。また、たとえば、オンリーアナログの人への対処の仕方。などなど、嬉しいことです。有難いことです。これからも、新鮮な風を会に吹き込んで頂けるよう、よろしくお願い申しあげます。では、また3月。皆様お元気に。(孝多)

……と書いて、そのすぐあとに、心配のお知らせです。奥様からのご連絡によると、田村珍椿氏が体調を崩され、2月10日、入院されたとのこと。ご快癒の一日も早からんことを祈りあげるばかりです。どうぞ、どうぞ、お大事に。
                   令和3年2月28日  多比羅 孝

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