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浜田山通信 №284 [雑木林の四季]

逆ワイロ
 
       ジャーナリスト  野村勝美

 賄賂(わいろ)というのは、公務員などが職権を利用して仕事の便宜をはからってやり金品を受け取る不正行為をさす。総務省の幹部11人が放送事業会社「東北新社」から高級レストラン、料亭などで多数の飲食接待を受け、減給や戒告などの処分を受けた。近い将来の次官候補がズラリ、もうどうしようもない。こうなったのも接待した側に菅首相の長男、菅正剛氏がいたからだったのは、もう国民皆が知っている。
 総理の嫡男に呼ばれたら役人たるものよほどの勇気がなければ断ることはできないだろう。宴会の場でああしてほしい、こうしてもらいたいなどのヤボな話は出ないが、放送事業関係でいずれ要望がなされてくる。東北新社というのは、電通のような企業で、CM制作など放送事業全般に関係してくる。TVを見ていると、総務省を退職し、処分の対象にならない山田真貴子内閣広報官だけが大きくとりあげられている。彼女は年の割にはスレンダーで若く見える。内閣広報官としては適任といってよい。処分された総務省の役人連中は、首相長男との繋がりも薄い。しかし、だからこそマスメディアは内閣広報官を取り上げる。総務省の役人は次官候補もバタバタ減給処分になったが、権力者にとってはこんなものはへでもない。
 かんじんの贈賄側の東北新社や同社部長の首相長男のことはその後一切マスコミに登場しない。東北新社は、メディアにCMを提供する企業である。民間放送はここからのコマーシャルをとめられたらやっていけない。生殺与奪の権(古いなあ)を握られているのだ。
 菅ソーリの長男がどうやってそんな力をもつ企業に入り、若くして部長職になったのか。総務省に長く君臨した父親の仕事、権力を直接見てきて、父親の権威を体現できるマスメディアの中枢に入り込もうとしたのは当然だろう。この親にしてこの子あり。子は親の監督下にある役人たちを接待づけにした。一人当たり7万円の飲食がどんなものか、高級レストランや料亭などもう何十年も離れている私には見当もつかない。
 菅ソーリは当初、「長男は別人格」ととぼけたが、さすがにそんなへりくつが通るわけもなく、のちに「私の長男が関係して結果的に違反行為をさせてしまったことについては大変申し訳なく、国民の皆さんにおわびしたい」と陳謝した。往生際の悪いのはこのソーリの得意芸で、役人がワイロを受けて減給処分で一巻の終わり、接待側には何のおとがめもない。
 こうして権力の監視役だったマスメディアは、権力をサポートする側に廻り、東北新社同様、権力に不都合な報道はしなくなる。菅ソーリの長男に7万円のごちそうを接待された高級官僚たちは言うことをきかないとこうなるぞというみせしめにされた。接待というワイロにまんまと乗った役人が悪いのか、のせた奴が悪いのか。ワイロには逆の場合もある。
 

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