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バルタンの呟き №91 [雑木林の四季]

「東風吹かば」

          映画監督  飯島敏宏

中庸という、最近では、あまり聞かなくなってしまった言葉があります。かたよらずつねにかわらないこと。不偏不倚で過不及のないこと。中正の道。(広辞苑)。福沢諭吉が唱えた独立自尊の詞でもあります。このコラムでも僕、バルタンは、恒にそう心がけて、呟いているつもりです。
ところが、57年前の東京オリンピック、日本列島大改造、東京近郊大開発時代に、奥深い里山であったこの地域を東急が大開発して、大手証券会社系不動産が分譲した広範な戸建て住宅街である我が街の中央公園で、15年ほど前から、元旦を除く一年364日欠かさず早朝ラジオ体操会が、行われているのですが、その、ほぼ中心を占める団塊世代のサラリーマンあがりの後期高齢老人仲間が、ラジオ体操を待ちながら、ベンチの周辺で腕立て伏せをしたり、或いは、子供用の運動遊具(ジャングルジム)にぶら下ったりしながら交わす世情談義の論調は、主要メンバーが、証券会社、銀行、商社などの東証一部上場会社OBであるせいか、ややライトに偏っているせいか、僕が問われて何か言うと、反駁はしないまでも、
「監督は、かくれ自由主義(リベラル)者だから」
という事になってしまって、中庸という立場を認めてもらうのが、なかなか難しいのです。
ところが、最近、永年の構図に、変化が生じてきたのです。ウーマンリブ。これも、今ではあまり使われずに、懐かしくなってしまった言葉ですが、今、アメリカのトランプ騒動で黒人系の人たちが、差別に抗議してブラックライブズ!とコールしているように、女性の地位向上をシンボライズした言葉です。つまり、近ごろこの公園ラジオ体操に参加する方が増えてきた高齢女性たちが、女だてらに、その談議に参加する傾向があるのです。永年の間サラリーマン夫人だったご婦人たち(子育てはおろか、孫育てさえ終えた方々が主流、しかも過半数がすでに独身!)は、かくれなき自由主義(リベラル)者であられるので、僕の中庸発言に賛意を示して下さるのです。
というわけで、偶にですが、早朝ラジオ体操に同行するママ(カミさんの事です)から、
「パパ(僕です!)、なんか、最近モテてるみたいじゃない!?」
と、言われているのです。
ま、せめて40年以上前の「金妻」監督時代でしたら、同調して下さるご婦人のお手製のキャラメル数粒のお手渡しにも、幾分の心騒ぎがあったでしょうけれど・・・
閑話休題、昨今騒がれているオリンピック関連の森さんの失言問題では、わが公園ラジオ体操男性陣のやや森さんに同情的な論調には、(流石に白い服お揃いの抗議まではありませんでしたが)女性蔑視の論調と、かなりの盛り上がりを見せていました。加えて、近頃の世界各国の政界、各団体、組織での、女性トップの活躍が目覚ましいことも一役買っているのでしょう、近い将来、この早朝ラジオ体操放談も、ウーマンリブのせいで、時間が長くかかることになるでしょう。
近々行われるだろ市議会議員選挙、および行われるかもしれない国会議員選挙では、従来のように、投票日が近付くと、ラジオ体操その他行事に現われたり、後援会優待バス旅行(これはコロナで出来ませんが)などで、従来どおりに票を、と望まれている候補者の方々は、これからは、所属政党で決められた政見の棒読み(棒語り?)でなく、自らの政見を旗幟鮮明に語らないと、握手代わりの肘合わせぐらいでは、いずれ、旦那様方と同じに投票、とはならずに、予想外な結果に慌てさせられるかもしれない、と警告してあげたいほどの目覚めようなのです。
これは、若しかすると、わが街の高齢女子だけの出来事ではなく、今回のコロナ禍が齎した、全国の、未成年をも含めた、全女性たちの政治的関心を高めた出来事の一環かもしれません。
たしかに、近ごろ、テレビの報道番組などで、街頭で呼び止められて感想を求められた際に、男性に引けを取らず、きちんと自己の主張を言葉にする女性たちが、老若問わずに増えてきた気がします。
わが国では、戦後初めて(76年前ですが)女性に被選挙権が与えられて(思い出してください!そうなのですよ!)、多数の女性国会議員が登場したものの、まるで一時的な流行り風邪のように、高度経済成長以降の、経済政策偏重の政界から、重用に応えて目覚ましい活躍をする女性議員の姿が見えなくなったしまったではありませんか。
現在、コロナ禍、東京オリンピック・パラリンピック是非に揺れる今こそ、女性復権の機会、いや、テニスの大阪なおみ選手、水泳の池江璃花子選手のように、男性を凌駕するほど自己の見識をストレートに表現するような女性たちが政界に進出する萌芽が見える、と呟くのは、矢張り、中庸を越えて、かくれ自由主義者(リベラリスト)と言われてしまう呟きなのでしょうか・・・
今朝の早朝ラジオ体操放談も、菅首相に「失礼だ」と言われるほど舌鋒するどく突っ込んだ蓮舫議員を反日と評し、森JOC代表辞任問題に止めを刺した、といわれる小池都知事の四者会談欠席の意志吐露を、女帝が、と唾棄しようとするベンチの旦那方に、
「いや、ともすれば男は単眼で見るけど、女性は、複眼で物事を判断しますからね・・・」
と、男女双方の顔を立てた中庸の答えを言い残して戻ったのですが、やはり、これも、団塊世代以上のわが街のお爺ちゃん方には、
「監督は、隠れ・・・」
で、片づけられたでしょうか。
傍らで聞き耳を立てていた独り身のお婆ちゃん方から、明日の朝、出来ればお手製のキャラメルでなく、行列のできるお菓子屋さんあたりのクッキーにでもありつければ、バレンタインデーの義理チョコ以上の幸いですが・・・


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