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往きは良い良い、帰りは……物語 №90 [文芸美術の森]

こふみ会通信 №90
(コロナ禍による在宅句会 その5)

       俳句「こふみ会」同人  多比羅 孝

【令和2年12月の句会のまとめ】
当番幹事のお二人(岩永矢太氏と清水華松さん)よりお知らせが送られました。内容は次ぎのとおりでした。
  ☆在宅句会・兼題=「冬の虹」「波の花」「寒卵」「美留さん さようなら」
  ☆投句締切=12月13日
  ☆竹内美留さんを偲ぶ会にしましょう。

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下記は通知に従って作成・投句された72句。≪12月こふみ会の全句一覧≫

「冬の虹」
1冬の虹若人に何語るべき(可不可)
2赤岳の尖りにかかる冬の虹(小文)
3明日を見つめる少年の目に冬の虹(弥生)
4冬虹や空の底より生え出づる(尚哉)
5手品師の取り出すように冬の虹(舞蹴)
6冬の虹美留さんのまなざし遥(はる)かより(孝多)
7冬の虹たしかに神は天にいて(矢太)
8冬の虹 コロナの街を清めしか(華松)
9まぼろしか 湿った朝焼け 冬の虹(兎子)
10子供らの 縄跳びの空 冬の虹(茘子)
11窓開けて 仕事はなくても 冬の虹(一遅)
12いま一度あいたいひとや 冬の虹(鬼禿)
13いまごろはハワイ暮らしよ冬の虹(すかんぽ)
14黒々とアスファルト濡れ冬の虹(虚視)
15あらそいて悔し涙に冬の虹(玲滴)
16雨上がり空いっぱいに冬の虹(珍椿)
17やさぐれて 男が見上げる 冬の虹(紅螺)
18老犬がのっそり吠える冬の虹(下戸)

「波の花」
19波の花言葉消えゆく怖ろしさ(可不可)
20垂れ込める空の鉛や波の花(小文)
21誰もいない能登外浦に波の花とぶ(弥生)
22波の花井沢八郎降ろし度(たく)(尚哉)
23波の花意志あるごとくぶつかりぬ(舞蹴)
24美留さんを返せと飛び散る波の花(孝多)
25波の花いのちのかけら空に舞ふ(矢太)
26その下に 悔ひを溜めるや 波の花(華松)
27波の花 雪か涙か 空に散る(兎子)
28波の花 海難の碑は 海を向き(茘子)
29はるばると 傷心を洗いに 波の花(一遅)
30地の果ての思ひぞ渡れ 波の花(鬼禿)
31海鳴りの夜は懇(ねんご)ろ波の花(すかんぽ)
32車窓過ぐ浜みな無口波の花(虚視)
33波の花舞う沖けぶる佐渡の島(玲滴)
34北の海岸辺に舞う波の花(珍椿)
35沖遠く 北前船や 波の花(紅螺)
36コンビニに家出する子ら波の花(下戸)

「寒卵」
37善き日かな黄身二つあり寒卵(可不可)
38朝腹の温しひとつの寒卵(小文)
39掌(て)に包むほの温かき寒卵(弥生)
40寒卵陽に透かせばほら日食(尚哉)
41嘘ひとつため息ふたつ寒卵(舞蹴)
42美留さんを偲ぶ夕べの寒卵(孝多)
43てのひらに温い天体寒卵(矢太)
44真っ先に 子らに食べさす 寒卵(華松)
45夜も更ける 鍋でくるりと 寒卵(兎子)
46ポケットに 寒卵一つ 身籠もれり(茘子)
47コケコッコ ひとつちょうだい寒卵(一遅)
48盗人の手に生温かき 寒卵(鬼禿)
49百年を生きるつもりの寒卵(すかんぽ)
50突けどなお己保ちて寒卵  (虚視)
51コロナ禍に行けぬ見舞いや寒卵(玲滴)
52あばら家と熱々の飯寒卵(珍椿)
53手にとれば まだ温かき 寒卵(紅螺)
54大つぶの寒卵わる受験ママ(下戸)

「美留さん さようなら」
55悲報ありただひたすらに葱刻む(可不可)
56冬日向君笑ふこそとこしなへ(小文)
57童女のごとき笑顔偲びて菊一輪(弥生)
58姐逝きて表参道散紅葉(尚哉)
59在りし人亡きが不思議の冬句会(舞蹴)
60句は人柄さようなら美留さんさようなら(孝多)
61じゃあまたね今度いつ逢える流れ星(矢太)
62山茶花を 空から愛でる ひとおもふ(華松)
63やさしさと つよさと笑顔を ありがとう(兎子)
64言の葉を 愛せし女(ひと)散る 冬の華(茘子)
65美留逝きて近句に見える命の火(一遅)
66いま讀めば 生きたい美留さんの息使い(鬼禿・)
67はにかめば真白き少女冬の薔薇(すかんぽ)
68ハモニカに鳴らぬ音あり冬銀河(虚視)
69薔薇香水手首に着けし君逝きぬ(玲滴)
70行き泥む一人逝く身の花畑(珍椿)
71「生き延びしこと」と詠みし美留さんまたいつか(紅螺)
72花散るらん美留さん、さようなら(下戸)

★選句の結果★
トータルの天=虚視 64点
   代表句「ハモニカに鳴らぬ音あり冬銀河」

トータルの地=可不可 55点
    代表句「悲報ありただひたすらに葱刻む」

トータルの人=茘子 38点
    代表句「波の花海難の碑は海を向き」

トータルで20点以上=すかんぽ(29点)。鬼禿(27点)。舞蹴(24点)。玲滴(20点)。

★天の句への鑑賞短文(順不同)★
下記のとおり鑑賞の短文が≪≫の中に書かれております。

●虚視選 下戸作「老犬がのっそり吠える冬の虹」 
≪異なものを見て、バウバウと大きな犬が退屈を紛らわすように吠えている。「のっそり吠える」と言う表現がピッタリとはまっている。≫

●孝多選 鬼禿作「いま一度あいたいひとや 冬の虹」
≪平明で奥深い句。平仮名を多用してあるのも配慮の現れ。その人の、やさしさを表現しているのでしょう。良い作品を読ませていただいて有難うございました。≫

●茘子選 可不可作「悲報ありただひたすらに葱刻む」
≪辛い時、悲しい時、心を無にしてひたすら何かする。悲しみをダイレクトに表現せずに悲しみの深さを表現していて、素晴らしい。≫

●矢太選 可不可作「悲報ありただひたすらに葱刻む」
≪美留さんの死を、葱=涙に見事に象徴。鮮やかに「情」と「景」が浮かびます。≫

●尚哉選  可不可作「悲報ありただひたすらに葱刻む」
≪・・・もちろん葱=涙ですが、それを超えた深い悲しみとやるせなさが伝わってきます。≫

●珍椿選 弥生作「童女のごとき笑顔偲びて菊一輪」
≪静かな人である。しかし、情念のある人である。この人が欠けると寂しさが増すのである。≫

●可不可選 虚視作「ハモニカに鳴らぬ音あり冬銀河」
≪音がひとつ欠けたら、もう歌えない。この欠落感!≫

●舞蹴選 虚視作「ハモニカに鳴らぬ音あり冬銀河」
≪大切にしていたハモニカが急に鳴らない。そんな時、ふと在りし人を偲ぶ。冬の心の寂しさが身にしみる。見上げると空にいっぱいの星。≫

●弥生選  虚視作「ハモニカに鳴らぬ音あり冬銀河」
≪逝くとか散るとかの言葉も使わず固有名詞もなくハモニカの鳴らぬ音で美留さんの不在と悼む思いを表し、季語の冬銀河も美留さんが銀河鉄道に乗って行ってしまったように思えて素晴らしい悼句だとおもいます。≫

●鬼禿選 すかんぽ作「海鳴りの夜は懇(ねんご)ろ波の花」
≪波の花=日本海=演歌=津軽海峡…。31の「懇ろ」を広辞苑で引くと「互いに親しみ合うさま」とある。この語意で「天」≫

●一遅選 茘子作「波の花 海難の碑は 海を向き」
≪長い時間、厳しい冬の海にあったであろう、さまざまな出来事を見事に彷彿させる名句ですね。≫

●紅螺選 茘子作「波の花 海難の碑は 海を向き」
≪荒海に鉛色の空、慰霊の石碑が寒風にさらされている…景が浮かびます。≫

●小文選  舞蹴作「嘘ひとつため息ふたつ寒卵」
≪小さな罪悪感を、硬く真っ白な卵の中に閉じ込めてしまいたいと思う、人間の機微のようなものを感じました。≫

●下戸選 鬼禿作「盗人の手に生温かき 寒卵」
≪寒卵の生暖かさ盗人の手で表現したところが秀逸。たった17文字で、人間の根源に迫る句だと思う。≫

●華松選 すかんぽ作「百年を生きるつもりの寒卵」
≪生きることがさらりと詠まれていて、とても惹かれました。≫

●すかんぽ選 玲滴作「薔薇香水手首に着けし君逝きぬ」
≪故人の具体的な事を想い、詠まれています。美留さんのお人柄を偲ばせていただきました。≫

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誤字があったり、脱落があったり、幹事さんたちにとって、タイヘンなことが多々ありました。ご苦労様です。それも、これも、コロナの仕業。早くおさまることを祈るのみですね。

皆さんどうぞ、ご自愛のうえ、良いお年をお迎えくださいますよう! これを書いている今日は12月27日。つつが無く1月1日のUPが見られますよう、これまた、あわただしく過ぎる年末の祈りです。では、では、くれぐれも、お元気に! 次ぎは年明け。(孝多)

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