SSブログ

サンパウロの街角から №21 [雑木林の四季]

Dear All,
謹賀新年

          在サンパウロ  ケネス・リー

めでたし、めでたし! 2020年も余すところ1週間足らずとなった。何と言っても2020年は占い師すら見抜けなかった“Chinese Virus”に散々虐めつけられた一年であった。「三密」、「Wear Face Mask」、「Keep Social Distance」,「Wash Hands」と護身に明け暮れた一年であった。生まれた時から非常時の中に鍛えられて生き抜いてきた我々には、そこらでヘこたれない芯の強さを持っている。

ああついに菊人形までマスク掛け
水道代ぎょっとするほど手を洗い
(注:この川柳は日本、「知の木木舎のネット・マガジン、No279」より)

と川柳を楽しむ余裕を持つ。だがこのパンデミックは人間の人情味の生活を奪い取った。しかも出口が見えない酷さである。許せない!

2021年は我輩には「めでたし」を祝う年である。昭和6年早生まれで諸友に一年遅れてやっと卒寿の仲間入りすることができた。人生50年から25年と言われたのが卒寿まで生かされた神の恩恵に感謝する次第である。残念ながらただ生きているだけで、最早新しきに挑戦するだけの元気はない。食後にソファーに休んでTVを見ていれば、いつしかコックリ、果ては粗大ゴミと。唯一の抵抗はソファーには常時部厚な本(難読であるほど良し)を置き、それを手にしてソファーに座ることである。事が起きれば「勉強しているのがわからんか!」と怒鳴り返すことだ。男の意地である。本は読まなくてよし。だがソファーの安楽は我々をして過ぎし日々の思い出に駆る。周囲を忘れて走馬灯のごとく駆け巡る思い出に・・・そは清らかな青少年時代に引き戻されるのである。まだ覚えているだろうか、「父母に孝に、兄弟に友に、夫婦相和し、朋友相信じ、恭倹己を持し、博愛衆に及ぼし、学を修め、技を習ひ、以て知能を啓発し、徳器を成就し、進て公益を広め、世務を開き、常に国憲を重んじ、国法に遵い、一旦緩急あれば義勇公に奉じ」、教育勅語の一部である。これは今も通ずる「修身」である。「天皇制」「軍国主義」と言われ、GHQ、マッカーサー司令部から廃除されたが、政治的なところを無視しても、人間の社会に生きる基本的な道徳であることは間違いない。我々はこれをモットーに生きて来た。ただ「夫婦相和し」は条件付きで理解するが、これらは我々の人間形成に大きな影響を与えたことは否定できない。

中学に入学したまでは人並みのコースを歩んだが、中学にての授業は一年生までで、二年生に進級した時は戦争たけなわにして、学徒動員の毎日、鍬を担いで林徳官の芋畑の手伝い、小港飛行場整備に駆り出されていた。だが入学後一年の授業はチンピラどもを惑わせるに十分だった。各学科の先生が異なり、各々先生には綽名がついていた。先生に名指しされると緊張してしまうほど先生が怖かった。授業の学科は新鮮な印象を与えた。小学校の授業とは全く異なる。例に「漢文」の科目、五重要科目「国、漢、英、数、理」の一つだが、漢字が並んでいるだけで、返り点、送り仮名が付いていて、下の字を上に持ってきて読み、脇についた仮名を加え読む。最も我々が学んだ「漢文」は論語の片言から始まった。「有朋自遠方来不亦楽乎」の類である。後に漢詩が入ってきた。漢詩は読むに韻があり、唸るように読むと恰好がよい。さらに抑揚をつけて吟ずる「詩吟」なる読み方もある。まだ記憶に残っている漢詩二首記す。諸友もまだ覚えているだろう、元気いっぱいの少年の意気を煽るものがあった詩である。

  男児立志出郷関       少年易老学難成
  学若無成死不還       一寸光陰不可軽
  埋骨豈惟墳墓地       未覚池塘春草夢
  人間到処有青山       階前梧葉已秋声

素読になるが、諸友頑張って読み下せよ。但し、北京語読みは規則違反。

ソファーに微睡のうちに過ぎし純情な自分の影が浮かび上がり、ふと目覚めてえ現実に引き戻され、あの時に夢見た自分と床から起き上がった儘の寝巻き姿の自分を発見して微苦笑・・・
所詮、人生は成るようにしか成らないのである。それを知るに90年の歳月がかかった?
来たる新しき年は、諸友には、ご家族にもよき年であるよう遠くから祈り申し上げます。半世紀以上の真の友情に感謝しつつ、またも愚痴が出るが、人生の殆どを異郷に、それは、「俺、お前」の言葉のない生活の中に過ごしてきた我輩、「宿命」の一語にて片付けられるを拒否する頑固な我でもある。今の俺にあるのは諸友との真実の交わりの懐古だけかもしれない。
何時までもご健勝有らんことを祈りつつ。
宗謙

あなた様の時代には漢文の科目がありました?素読できる人はもう卒寿です。過去帳に記された人たちでしょう。




nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。