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バルタンの呟き №88 [雑木林の四季]

「初夢を見た夢」

              映画監督  飯島敏宏

 令和三年2021! 明けましておめでとうございます! 

 令和二年2020は、東京オリ・パラリンピック大会で世界に輝くJAPAN!の筈でしたが、とんでもない春の椿事で、折からの春節で中国から寄せてきた人海の波と、超豪華クルーズ巨船とで新型コロナウイルスCovid19が来寇、あれよ、あれよ、という間に、日本ばかりか世界中が感染の渦中に巻き込まれ、ついに地球人類史上特筆すべき災いの年になってしまいました。

 さて、コロナに翻弄された思わぬ失政と疑惑に突然足元をすくわれて斃れてしまった安倍長期政権の衣鉢を継いで、「国民のために働く」菅新内閣が帆を上げて、まずは無難に巡行、コロナ小康を潮目とみて打ち出した経済優先政策の目玉Go to!travel, eat, and&!が、コロナ第三波襲来で突然のStop!赤信号で立ち往生、高く掲げた帆を降ろすこともならず、呻吟のうちに、新らしい年を迎えることになってしまいましたが、果たして令和三年は、菅首相が、質疑無くうつむき加減のメモ読み上げ会見ではなく、決然と面を上げて宣言したように、「新型コロナウイルスに打ち勝った証として、2021東京オリンピック・パラリンピックを完璧に成功させる!」年になるのでしょうか。
 残念なことに、大方の国民感情は、年末に及んで、一向に鎮まる気配の見えないコロナ感染の蔓延を抑えてからの経済振興ではないか、というもので、宣言後、言論の自由に関わる人事問題と併せて、菅内閣は支持率の急落を招いたままの越年です。
 僕、バルタンとしては、今年こそ、日本はもちろん、グローバルに、「あらゆる人智を傾けて新型コロナウイルスとの融和共存を遂げるとともに、人類が存続可能な地球のSDG`sに近づく年」になってくれれば、と呟きたい新年です。残念ながら、日本を含めて、世界の現況は、自国自民族優先の、勢力伸長のための経済、軍事力強化の道をたどり続けているようにしか見えません。遂に、宇宙軍まで創設して、宇宙の乱開発を競うその道の行く手は暗黒でしかないのでは・・・

 昨夜、ここまで書いたところで、ママ(カミさんの事です)が、テレビから「Stay home! 静かな年末年始を!」と訴え続けるやや窶れの見える東京都知事の声が流れる中で、年越しの掃除と正月料理を、女性の特技の複眼を効かせて、掃除も料理もパラレルに同時進行でせっせとこなしながら、
「あー、黒豆煮たり、数の子作ったり、お節なんか、せっかく作っても、コロナで、子供たちも孫たちも、誰も来られないんだから、おうち正月なんて言われても老々二人じゃねえ・・・」
とぼやくのを聞きつけて、PCに向かったままの僕が、
「ならば、孫たちにお年玉も無しってことで良いんじゃないかな?ははは」
と混ぜ返したのがいけませんでした。
 八面六臂で忙しく動いていたママの手が、止まります。
「パパ!(僕の事です)神棚の掃除やお飾りは、パパの責任でお願いよ!大晦日の一夜飾りになったら困るわよ!29(ニク)も苦がつくからだめかな。〆飾りも門松も買ってあるからね!」
とまあ、商家育ちのママに、遠い遠い昔、学生時代におふくろにやられたように、外堀も内堀も埋められて、落城です。
 遂に賽ならぬマウスを投げました、せっかく頭の中に降臨しかかっていたミューズの神は、いずれかに飛び去ってしまったのです。いやいやながら、とは見えないように立ち上がります。
「水引はあるし、あ、半紙なんかは、あるよねパパの方に・・・・・・」
言われて気が付いたのですが、そういえば、最近ママは、僕に対して敬語を使う事がなくなった気がしているのです。
「サラリーマンにとって、定年てのはなあ、授精交尾を終わった雄(おす)のお蚕さんみたいなものでねぇ・・・」
そう自嘲してみせた先輩に、情けないことをいうなあ、僕は第二の人生を有意義にすごすぞ、と内心で期してから、はや20年もの月日が過ぎてしまった今日この頃です。
(随分と消費してきた第二の人生、僕は、何ほどの事を成し遂げたか・・・)
述懐しながら、ママに命じられたことのみを成し遂げ、夕餉の食卓についたという訳です。
「飲みすぎちゃだめよ、逆流して、誤嚥性肺炎起こしたら、コロナで、病院は大変なんだから」
近ごろすっかり弱くなった僕は、Xmasに知り合いから贈られたグリュワインの残りを持て余して、床についたのですが、寝しなにふと手にした怪奇物語が、脳内に滞留していたのでしょう。妙な、夢を見たのです。夢の中の夢、複層夢というのか、初夢を見た夢、なのです。
 年が改まらないうちに初夢を見てしまった夢です。
 僕の見てしまった初夢は、ここでご開陳するのも憚られる恥ずかしいものですが、戦中戦後食に飢えた昭和少国民に根深く残り続けている消しきれない後遺症が、八十八翁となった僕に齎した夢の中の初夢は、分厚いステーキにありついた夢です。フォークの肉を、口に運んで、
「ああ・・・」
ことによると、嘆息さえ漏らしたかもしれません。
舌の上で、とろけるような上等な牛フィレ。情けないことに、いまだに、目を閉じれば、
その味が未練にも脳裡に残って・・・いるのです。過去形ではなく、いま現在、コロナと共に、絶えない戦禍と飢餓に見舞われている国々の子供たちに比べたら、取るにも足らない、小さな小さな、戦争の傷跡に過ぎません。でも、深く深く、墓石の中にまで・・・消え去ることはないのです。

 いま、「わずか一枚の極上ステーキが、ニッポンの政情を一変した!」ニュースが、「日本映画史上最高の収益を上げた鬼滅の刃!」と共に、テレビ、電波、ネット上で地球上を駆け巡っているらしいですが、ステーキに慚愧する宰相の初夢も、僕の初夢と同じく、この令和三年2021新年の本番の初夢は、希望あふるる、明るい明るい夢の実現!であることを心から祈りつつ・・・




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