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往きは良い良い、帰りは……物語 №89 [文芸美術の森]

往きは良い良い、帰りは……物語 №89
コロナ禍による在宅句会 その4

               11月こあみ句会幹事

◆投句締切は令和2年11月15日でした。
◆当番幹事は大谷鬼禿、永井舞蹴、大取下戸の3氏でした。
◆兼題は「冬に入る」「酉の市」「鯨」「枇杷の花」でした。

◆全句発表?      (18名72句)
【冬に入る】
会いたさがぶんぶんふくれて冬に入る(華松)
万華鏡回せど寂し冬に入る(弥生) 
うたた寝のいびき一発冬に入る(下戸)
人恋し巣ごもりのまま冬に入る(尚哉)
グツグツと鍋の音冬に入る(珍椿) 
夜半から冬に入るビニール幕の向う側(鬼禿)
牡蠣と蟹ぼたんにてっぽう冬に入る(一遅)
隣家の犬毛が膨らんで立冬を知る(兎子)
蒼穹を切り裂く一機寒に入る(虚視)
身ひとつの魚も鳥も冬に入る(舞蹴)
注す水の指先の赤今朝の冬(小文)
爪を切る疾く日暮れて冬に入る(玲滴)  
包丁の青く光りて冬に入る(矢太)
冬に入る北海道の友のこと(可不可)
君の手の 今日の冷たさ 冬に入る(茘子)    
冬に入る顔見世役者の勘亭流(紅螺) 
立冬や街に揺るる灯またたく灯(すかんぽ)
厨房に物きざむ音冬に入る(孝多)   

【酉の市】
熊手持つ肩車の子頬赤く(一遅)
妻と手を繋ぐは久し酉の市(舞蹴)
薄暮れや灯り寂しき酉の市(小文)
熊手欲し密は避けたし酉の市(玲滴)
今年の熊手誰と行ったの酉の市(兎子)
売声の主厚き爪酉の市(虚視)
今年もまた小さな熊手三の酉(可不可)
酉の市声高々と夜を飛ぶ(矢太)
禍福みな一炊の夢酉の市(弥生)
酉の市あすは行きたや写植拾う(下戸) 
酉の市マスク・マスクに決意あり(孝多)
酉の市おかめに惑う不甲斐なさ(華松)
ひとり行く倒産前の酉の市(鬼禿)  
繁盛より持続化ねがう酉の市(尚哉)
お多福はプラスチックぞ御酉様(すかんぽ) 
酉の市 かき集めたる 欲の顔(茘子)  
白髪眉手締めキレよく酉の市(紅螺)
手締めもディスタンス今年の酉の市(珍椿)

【鯨】
太地町の朝雨もよう鯨くる(珍椿) 
これきりになるやも知れぬ鯨食ふ (尚哉)
破れ苫屋朝焼けの海に勇魚立つ(一遅)
大海の一点鯨遠去かり(虚視)
大海の鯨潮吹く孤独かな(舞蹴)
紺碧の大海原に鯨跳ぶ(玲滴)
飛べ鯨 難民キャンプの子らの上(鬼禿)
勇魚追ひw.cニコルは森に逝く(矢太)
大統領選鯨潮吹く夢を見る(可不可)
海深く連れて逃げてよ鯨になって(紅螺)
若冲の クジラ潮吹け 京の空(茘子) 
守り継ぐ鯨の墓とや風やさし(孝多)
教科書に資源と習ふ鯨かな(すかんぽ)
ハワイでは鯨元気か凍えて思う(兎子)
寄せる肩鯨尾の身により寄りて(小文)
アルマイト皿を鳴らした鯨の日 (下戸)
散骨すマッコウ鯨に続く海 (弥生)
鯨にも女系家族があるものを(華松)

【枇杷の花】
杖停めて母仰ぎ見る枇杷の花(可不可)
芳香に尼僧の撫で行く枇杷の花(孝多)
退屈な日々にたいくつ枇杷の花 (すかんぽ)
枇杷の花 口重き母の 色に似て(茘子)
廃屋に枇杷の花咲く島の道(紅螺)
枇杷の花玄関の鍵錆びたまま(矢太)
床を上げし姉嫁ぐ日の枇杷の花(鬼禿)
故郷まで一年の旅か 枇杷の花 (下戸)
枇杷の花母はますます祖母に似て(一遅)
夕闇は水底のごと枇杷の花(虚視)
海へ出る猫の近道枇杷の花(舞蹴)?
みっちりと荒地の奥の枇杷の花(兎子)
青天に誓う告白枇杷の花(小文)
人知れぬ思いひそやかに枇杷の花(玲滴)
長髪の若き庭師や枇杷の花(弥生)
肩寄せてひそひそ話 枇杷の花(華松)
我に似て目立たず咲くか枇杷の花(尚哉) ?
枇杷の花の華東の窓から(珍椿)

◆天句と鑑賞短文
●舞蹴 選  君の手の 今日の冷たさ 冬に入る(茘子) 
一生懸命水仕事をしてくれる優しい人の、細く長い美しい手が目に浮かびます。「今日の冷たさ」がいい。

●尚哉 選  売声の主厚き爪酉の市(虚視)
売主の手元に視線を寄せる。厚い爪。
どんな人生を送ってきたのだろう・・・そこまで想像させます。

●鬼禿 選  海へ出る猫の近道枇杷の花(舞蹴)?
どうも作り過ぎの句の多い中 岩合の島の映像のような気持ちのいい句だ。兎角 うるさい昨今、息の注ぎ方を教えてくれる。

●珍椿 選  海へ出る猫の近道枇杷の花(舞蹴)
何時もの様に枇杷の枝を器用に潜り抜け塀の上を海へ散歩か。
そのすました顔が可愛い。

●一遅 選  海へ出る猫の近道枇杷の花(舞蹴)
このご時世、なんとものどかな風景が胸にしみます。
俳句は、人の心をゆるめる文学でありたいものです。

●すかんぽ 選  海へ出る猫の近道枇杷の花(舞蹴)
地味な枇杷の花と猫の近道(しかも海に続く)の取り合わせが響き合っていて、素敵な情景が目に浮びます。

●華松 選 包丁の青く光りて冬に入る(矢太)
兼題の鯨で包丁を考えましたが、これほどスッパリとは切れませんでした。妬けます。

?●可不可 選  枇杷の花母はますます祖母に似て(一遅)
母の句が何句かありましたがこの句が一番よかったと思います。

●茘子 選  枇杷の花玄関の鍵錆びたまま(矢太)
玄関の鍵さびたまま=この言葉によって景色が一瞬のうちに、目の前に浮かび上がる。言葉の持つ広がりの素晴らしさ。

●小文 選 白髪眉手締めキレよく酉の市(紅螺)
キレッキレの白髪眉の手締め、元気が出ます。見てみたいと思いました。

●玲滴 選  身ひとつの魚も鳥も冬に入る(舞蹴) 
平易な言葉で冬入りの森羅万象を思わせていいなと思います。

●下戸 選  身ひとつの魚も鳥も冬に入る(舞蹴)
生きとし生けるもの皆、体を縮めて冬に入るのだなぁ、と17文字で数段上の境地にもちあげてくれる。これは名句と膝を打ちました。

●矢太 選  君の手の 今日の冷たさ冬に入る( 茘子)
身近な小さな情景で、大きな自然を表象した。

●虚視 選 ? 福禍みな一炊の夢酉の市(弥生) 
一炊は一睡で、下記の様な句では?
  福禍みな一睡の夢酉の市

※ 後日訂正のメールがありました

虚視が天句に選んだ弥生さんの、「福禍みな一炊の夢酉の市」の「一炊」は「一睡」では無いかとメールしたのですが、私の誤りでした。中国の故事に、願いが叶うと言う枕で昼寝をしたら立身出世の夢を見て、夢から覚めたら丁度ご飯が炊き上がっていたと言う事から引いているので、「一炊」が正しいのです。弥生さんから指摘されました。うろ覚えで恥ずかしい思いになりました。弥生さん、句会の皆さん申し訳ありませんでした。

●孝多 選  君の手の 今日の冷たさ 冬に入る(茘子)
愛の句。繰り返し読んでいると涙が出て来ます。佳句をお示し頂き、有難うございました。

●弥生 選  守り継ぐ鯨の墓とや風やさし(孝多)
浜に打ち上げられた鯨。先祖から守り継がれる、その鯨の墓。素材そのものが美しい。

●兎子 選  廃屋に枇杷の花咲く島の道(紅螺)
寂しさと底抜けの明るさが同居しているようで、ハッとさせられました。

●紅螺 選  牡蠣と蟹ぼたんにてっぽう冬に入る(一遅)
一読して幸せな雰囲気に包まれました こういうの好きです?

◆11月の表彰 ベスト8
総合『天』   舞 蹴   総得点 54点

    代表句=①? 海へ出る猫の近道枇杷の花   34点  
       =②? 身ひとつの魚も鳥も冬に入る  18点(+2)  

総合『地』   茘 子   総得点 31点
   代表句=君の手の 今日の冷たさ 冬に入る   22点(+9)  

総合『人』   矢 太   総得点  28点
    代表句=枇杷の花玄関の鍵錆びたまま    14点(+14) 

総合 次点  虚 視    総得点  27点
    代表作=売声の主厚き爪酉の市       12点(+15))

総合 次々点  弥 生   総得点 25点
    代表作=禍福みな一炊の夢酉の市      10点(+15) 

総合6位  紅 螺     総得点 21点
    代表句=白髪眉手締めキレよく酉の市   ? 11点(+10)

総合7位  一 遅     総得点 20点
    代表句=枇杷の花母はますます祖母に似て  11点(+9) 

総合7位  孝 多     総得点 20点
    代表句=守り継ぐ鯨の墓とや風やさし    10点(+10) 

以上、11月のこふみ会の記録でした。 (令和2年12月1日up)      
                               文責 孝多

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