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検証 公団居住60年 №65 [雑木林の四季]

第三章 中曽根民活
Ⅺ 転換きざす住宅政策と公団の変質―90年代の居住者実態

    国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

7.1993年アンケート結果にみる居住者の生活実態

 全国自治協は3年ごとの家賃値上げの前の年に、加盟自治会の全団地居住舎を対象に「団地の生活と住まいのアンケート調査」を実施してきた。1987年、1990年につづき、1993年は3回目である。調査結果は居住者の生活実態と住宅修繕等への要求を明らかにし、自治会活動の基礎データ、政府・公団、同余、地方自治体などに働きかけるための貴重な資料となった。
 設問ははじめに、入居の時期、居住年数、家賃額(共益費をふくめ)、住宅型式の記入をもとめたうえで、①世帯主と家族構成、②世帯収入と収入源、③家賃負担と今後の住まい、④住宅修繕や高齢化対策等の要望、⑤消費税についての意見にかんする項目は毎回の基本に、その他、駐車場や高齢者住宅等の項月を設けてきた。
 アンケート結果は、団地ごと、地方自治協ごとにまとめ、全国で集計したもので、93年9~10月に実施した第3回アンケート調査は、238団地が参加、対象245,083世帯にたいし回答は116,754世帯、回収率は47.6%であった。団地により、地方によって、また団地の管理開始年代によっても回収率にばらつきがあったのはいうまでもない。
 以下に集計結果の主な特徴点をみていく。

1)家賃3~4万円台が最多
 1993年時点の全国平均家賃は3万円台が42.7%、4万円台は26.8%を占め、これに2万円台、5万円台のそれぞれ約10%がくわわる。これを東京23区でみると、5万円台34.2%、4~7万円台で84.7%、東京多摩では4万円台48.2%、3~5万円台で89.0%を占める。関西では3万円台45.3%、4万円台29.6%となっている。

2)住宅の広さ、2DK・3K住宅が67.2%
 全国平均は2DK35.8%、3K31.4%、3DK21.0%。とくに2DKが67.2%を占める東京23区、56.5%の北九州の団地の狭さが目立つ。

3)世帯主の高齢化の進行
 世帯主は、性別では男性85%、女性15%、年齢では60歳以上が24.7%(87年調査、12.6%)を占める。これを地域別にみると東京23区29. 7%、東京多摩31.0%、関西25.5%、管理開始年代別には、建て替え対象の昭和30年代団地の全国平均は36.2%、40年代団地は20.2%をしめす。さらに30年代団地について東京23区をみると46.4%、東京多摩では45.8%、神奈川37.6%、関西34.1%の世帯主が60歳以上の高齢者である。逆に40歳未満の世帯主の減少は著しく、87年調査で20歳代9.4%、30歳代31.1%が、わずか6年後の93年には6.3%、18.8%に変じている。

4)家族は平均3人、団地人口の構成
 家族は2人が27.6%、3人24.5%、4人29.6%が中心、平均人数は2.98人となっている。団地人口の構成は、20~50歳の各年代とも概ね15%、幼児、小学生が各7%、中高生10%、20歳未満の25.8%にたいし、60歳以上が13・9%を占める。前2回の調査と対比すると、幼児から中学生までの少子化と、50歳以上の人口の高齢化が早くも顕著にみられる。

5)世帯収入の衝撃的な低下、73%の世帯が第1~2分位
 収入にかんする設問は、総務庁貯蓄動向調査の1992年勤労者世帯年間収入(税込み)の所得5分位区分にもとづき、第1分位についてはさらに3区分した。
 わが国の公共住宅政策は所得階層別の施策をとり、所得5分位の区分でいえば、公営住宅は第1~2分位層、公団賃貸住宅は第3分位層(家賃設定の基準は第3分位中位におく)、住宅公庫融資は第3分位以上の所得階層を対象としてきた。
 この施策のもとで公団住宅居住者の収入実態は、93年時点で、第1分位層が45・6%、第2分位層は27.4%を占めている。87年調査の32.8%、28・6%にてらして、とくに第1分位層への流入、増加が著しく、まもなく居住者の半数をこえる。高家賃化を強いる建て替え対象の昭和30年代団地では、世帯主の高齢化にくわえ収入低下が顕著であり、第1分位層だけで52.4%を占める。第3分位層についていえば21.3%から14.9%へ、第4~第5分位層も12%から1ケタ台への減少をみせた。
 93年調査は、給与所得者、年金受給者の別については設問せず、年金受給者にその種類をたずねた。回答者数から察して、年金生活者は全世帯の25%程度だろうか。その百分比は厚生年金57.1%、共済年金9.0%、国民年金20・6%、企業年金の受給者は3.9%となっている。給与所得者は当時おそらく55%程度であったろう。主婦の常勤は16.4%、36.4%がパート・アルバイトをしている。

6)家賃負担「重い」が半数
 全国的には、「たいへん重い」が15.1%、「やや重い」31.6%、「普通」 49.6%、「重くない」3.8%の回答である。東京23区では「重い」が62.2%、東京多摩54.9%、関西51.5%と半数をこえる。「普通」と答えた人も「暮らしのなかで気がかりなこと」の問いに「住宅問題(家賃、建て替え問題等」をあげている。

7)大多数が公団住宅に永住を希望
 家賃値上げや建て替え等にたいする不安はあっても「公団賃貸住宅に永住」を86.1%の世帯が希望している。公営住宅への住み替え希望は”%、90年調査より1.5倍にふえ、増勢がみられる。持ち家希望は4.9%と低く、10%をこえた時期、地方はない。

8)消費税率引上げ「ノー」96%、廃止要求44%
 消費税導入で家賃に課税した経過があり、消費税についてはたえず設問してきた。93年当時、税率引き上げの動きがあり(96年6月、5%に引き上げ決定、97年4月施行)、それへの意見を質した。「廃止」要求は43.8%、「食料品、教育費など非課税」42.6%のほか、「現状のまま」9.6%、「税率引き上げもやむをえない」4.0%の回答をえた。

9)たたみ床、ふすまの取り替えに強い要望
 住宅修繕の促進は自治会活動の大きな柱であり、毎回のアンケートに細かく具体的に項目をかかげ、集約結果をもとに公団交渉を重ね、居住者要望の強い項目から順次実現してきた。
 たたみ床、ふすまの取り替えは各年代に共通して要望が強く、1位、2位を占めてきた。しかし、これらの項目は賃貸借契約書12条で居住者負担とされている。高齢化対策として、浴室・階段に手すり設置、室内・通路の段差解消、流し台、水道・ガスコックの改良、階下への転居などの要望が多く、アンケート結果は、要望事項の計画的実現に大きな力となった。

10)マイカー所有、3分の2の世帯
 93年アンケート調査は、事と駐車場について設問した。団地内の不法駐車、駐車場料金の高騰が問題になっていた。
 車を所有する世帯は66.8%、うち2台以上の保有世帯は10.6%である。東京23区の「持っていない」56%は、交通が便利、駐車場料金の高さが理由であろう。団地内駐車場の利用は47.6%、周辺駐車場が47.9%、その他7・8%。料金は団地内で5~7千円台が7“%だが、東京23区では1万円以上が62・9%、23区内の昭和50年代以降の団地では1.5万円以上が53.1%にのぼっている。

『検証 公団居住60年』 東信堂


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