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地球千鳥足 №138 [雑木林の四季]

雨の中の出会い ~スコットランド~  

     グローバル教育者・小川地球村塾塾長  小川彩子

 グレンコーはスコットランドの中でもひときわ美しい山峡である。グレンコー大虐殺をご存知だろうか。1688年の革命後王がウイリアムIII世に変わったが、グレンコーのマクドナルド族は王への忠誠所信の期限に5日遅れた。王は「罰を与えよ」とだけ命令、秘書はグレンコーの人々を嫌っており、彼が書いた手紙を王は読まずに署名した。キャンベル族によって残酷な命令が執行され、女、子どもを含む37人が虐殺されたのだった。

 その日は雨、バス停で待ったがグレンコーへのバスは来ず、私は歩き始めた。鉄砲雨が地面を叩き打つ。7月と言うのにとても寒い。土砂降りの雨に骨の髄まで濡れそぼり、キャンベル族を迎えようとしているグレンコーの人々に思いを馳せた。湖の向こうの山々もアザミの丘も土砂降りの雨の下、むせび泣くように肩を震わせ、道は涙川となって沈黙している。断続的な雨の合間に見るグレンコーは現実とは思えない美しさ。だが人一人歩いていない。「今は大虐殺の直後ではないかしら?」。私は小さな店の看板を見つけ、ヒースのブローチを買い、一杯の紅茶を啜った。店主と言葉を交わし、グレンコーの女性に会えたことを喜んだ。

 バス停への帰路、なおも断続する雨の中、牧草地から2頭の人懐っこい山羊が私に近づいた。黒い耳とカールした角がある2頭が私の眼を見入る。私も彼らを見つめる。広い野原で2頭と1人のご挨拶。バス停にもどったら妙齢の女性が話しかけて来た。「FW行きのバスはたった今行ってしまいましたよ!」

 ああ、山羊ちゃんたちと心からの挨拶を交わしているうちにバスは行ってしまったのだ。女性は話続けた。「私は時間が余って、余って…。息子は貴女のお国で英語を教えています。良かったらお寄りください。おしゃべりできれば嬉しいわ。お国のこと聞かせてね。泊ってくださってもいいですよ!」その婦人は優しく、ユーモアのセンスに満ち溢れていた。バスに3分遅れたおかげで彼女の親切に圧倒された。翌朝彼女が教会に行くので早くさよならをした。彼女の家の裏は見渡す限りの蓮華(れんげ)の原っぱだった。

 雨上がりの朝の草原 / 見渡す限りのれんげそう / 「おはよう小さな花たち!」
赤い花も白い花も / 洗われ目覚めて生き生きと / 花びらの下に朝露を抱き /
やわらかい太陽に無数の光のお返し / 煌めく草原

 眩暈(めまい)のするような朝露の大海原だ。朝露は薄い赤と白に染まっている。私はしゃがんで女の子のように赤と白のれんげを摘み、誰もいない草原の真ん中で大きく背伸びをした。きらめく宝石が惜しみなくこぼれているスコットランドの朝。

138.JPG
れんげそうの写真がなくて残念! 庭先のベゴニアでご免なさい。


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