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バルタンの呟き №82 [雑木林の四季]

「Go to・・・where?」

               映画監督  飯島敏宏

敬老の日と秋分の日(お彼岸)を含んだ4連休を、極端な感染拡大が案じられつつも、現状大過なくやりすごした今週、発足ほやほやの菅新内閣の大命題である「コロナ下経済活性化」の切り札と言いますか目玉政策と言いますか、Go to travel ! の号砲が、強引に鳴らされて、いままで閑古鳥が鳴いていた各地方の観光地などに、どっと人波が押し寄せる様子が報道されています。京都、奈良、箱根、上高地・・・そして、浅草仲見世通り、はては横浜中華街等々、それぞれが、つい先日までの無人の情景と打って変わって、まるで地から湧き出たように雑踏する人々の情景や、時を得て荒野に一斉に花が咲きそろうように無数のテントが並んだ上高地キャンプ場の状況などが放映され、信州、東北につながる高速道路のパーキングエリアには、県外ナンバーの自家用車が、全国の命を支える物流のトラック群を凌ぐほどに溢れ返っています。新聞紙面もほとんど同調で、あのゴルバチョフの、国連総長の、WHO事務局長の、あるいはグレタ嬢の、地球生命環境維持のための最後の警告の記事も、トップに載せられる様子がありません。

不仲、と伝えられていたコロナ対策慎重派の小池東京都知事と並んで、拳併せの握手ポーズで擽ったそうな笑顔を見せる菅総理大臣の写真が、紙面を飾ってGo to! ですから、これまで除外されていた東京都民も、来月にはどっと、全国に繰り出そうという情勢です。いまや、Go to は、travelにとどまらずに、eat! Cinema!theatre!town! と、行け!行け!どんどん! ラッパが響き、旗が振られるままに、人々が駆り立てられています。

専門家会議が、もし、感染の拡大が見られたら、一刻たりともためらわずに中止を、とブレーキを踏んでも、まるで闘牛士の振る赤布に突進する猛牛や、広野をかける野牛の群れのスタンピードのように、人々が流れ始めました。

内剛外柔の微笑の奥に潜む瞳から、冷徹な光を隙なく透して、胸に高支持率を秘持する令和おじさん菅総理の巧みな称揚にのせられて、権限移譲のお墨付きを得た、とばかりに競って担当省庁に走り込んだ各大臣の振るう性急な鞭に驚いてゲートを飛び出した行政官が、働き方改革無視のスピード感で立ち上げる即席のプランプランプラン・・・

その一端で、前内閣府の全国全校一斉休校という過激な対策で、学窓、キャンパスから締め出されて、家庭内に繋がれていた学童、生徒たちも、ようやく秋色に染まり始めた学苑で、教師、友人たちとの出会いや交流を始めることが出来たり、あとは、ひたすら、コロナ第二、第三波の憂き目をみぬうちに、安全なワクチンの開発と、充分な供給を待つばかり・・・

でも、はからずも米寿を迎えた僕と、ずっと齢下よ、と言い暮らすうちのカミさんや、毎朝の公園ラジオ体操に、晴天の日はおろか、多少の雨にも負けず、一年360と4日精を出す超高齢者ばかりとなった我が街では、お歴々の子供たち世代、孫たちの姿は、ほとんど見かけられません。この春3月から続くコロナ騒ぎの長い間、外出を控え、ひたすら三蜜を避けてきたうえに、今度は、家庭内感染の懼れあり、です。さすがに、敬老の日には、子供たち孫たち、ひいては、初めて見る異な老人に、顔見知りしてむずがるひ孫たちなどが実家に姿を見せても、手触りに覚えの蘇る椅子をひいて卓を囲み、和気あいあいと食事を楽しむことなく、互いにマスクを外してよいのやらいけないのやら、積もる話をするでもなく、持参の手土産をそそくさと置いて、形ばかり笑顔を並べて、スマホ写真を撮ってバイバイ・・・が、昨日今日の、冷たい雨でぬかるんだ公園での体操のあと、三々五々それぞれの住処に散ってゆく、年金と、保険に支えられた、幸福な、わが街の、近づいてはいけません、とすべてから隔離されている高齢者たちの話のまとめ、なのであります。

Go to …where? must we?   





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