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日めくり汀女俳句 №66 [ことだま五七五]

七月十一日~七月十三日

       俳句  中村汀女・文  中村一枝

七月十一日
父思ふ縞(しま)の浴衣(ゆかた)はなど悲し
            『薔薇粧ふ』 浴衣=夏
 「奥さん、『北の国から』やってるしょ、見ないと終わっちゃうよ」。ガスの点検に来た人に言われて思わず「あなたもあれ好きなの?」と言ってしまった。二十年前から続いているテレビドラマ「北の国から」、もう何度見たことか。
 若者のファンも多いそうで、それも地方出身、高卒の子が見ているそうだ。田中邦衛の、かっこ悪い、誠実なお父さんに人気がある。
 見栄も張らず、あるがままのぶざまな生きざまを見せる父親は今、少ないのかも知れない。何につけてもかっこうにこだわる時代への反語だろう。

七月十二日
遊船の指し来し小島蛙鳴く
           「汀女初期作品」 遊船刊夏
 川まつりは、汀女の少女時代の最大の行事だった。いわゆる水神さまのお祭りである。
 水神さまを祭るとき、心の中にだれもがカッパを想ったという。お供えに瓜を竹に突き刺し、川の真ん中に立てたらしい。
 「夜、舟を出すとね、江津湖でね、舟がぐるぐる、ぐるぐる廻ってなかなか帰れないのよ。どうもカッパがついてたろうってな」
 伝説の妖怪は、ここではとても親しみのある、温かいものに変わっている。子供の心には、自分たちの守り神でもあり、遊び友達でもあった。

七月十三日
蟇(ひき)歩く到りつく辺(へ)のある如く
              『汀女句集』 蟇=夏
 鼠の行方という小説でも書いたら、と思うほど鼠の出没はまだ続いている。例の鼠仕掛人の工作でしばらく鳴りをひそめていたのが、青葉の風と共にまたまた天井裏を騒がせ始めた。さらに行動はエスカレート。エアコンの管に大穴をあけ、電気のブレーカーの壁にも。いたずらは網戸にまで及ぶに至って再度仕掛人の登場となった。古い家が取り壊される度に住家を求めてわが古家にやってくるらしい。
 鼠の出る家に地震はないと聞くのだが。

『日めくり汀女俳句』 邑書林


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