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バルタンの呟き №81 [雑木林の四季]

     「自助共助公助、そして絆ですか?」

              映画監督  飯島敏宏

九月と言えば、涼風と名月、の筈ですが、中旬だというのに、いまだに熱中症にご注意という具合で、クーラーも廻りっぱなしの有様ですし、マスクも息苦しい状態で。
早朝ラジオ体操で、わが街の中央公園にやってくるメンバーは、始まってから20年も経っているので、もうそろそろ平均年齢80歳余になろうという旧来の方々に加えて、近ごろは、行くな、集うな、の都知事令でコロナ休暇?で、三度三度の食事作りでストレスの嵩じはじめた奥様方に起こされて、ゴルフにも行かれず、身の置き所を失った新老人の人たちが、増えてきました。
「なにしろ、一日中、誰とも口をきく機会が無くて」
という按配で、この人たちに捉まったら最後1・5メートルのソーシアルスタンスぎりぎりに迫ってきて、熱弁を振るわれてしまいます。戦争は勿論、戦後の苦しさも、幼すぎて知らなかった、高度成長下育ちの新老人たちですから、戦後75年、という話題は全くなくて、もっぱら、コロナ後のリモート社会の生き延び方とか、株価、景気の話しです。最近の日韓関係の話題でも、「さきの戦争」の反省など全くない「韓国文政権けしからん」一辺倒です。50年近く前に大規模開発された戸建て分譲のこの街の老人は、現役時代には、大部分が一部上場企業勤務で、順調なベースアップと昇進に恵まれた方々が殆どですから、
「自助共助公助そして絆?自助が出来るくらいなら、とっくに困窮から脱却しています。天がなんて言っても、あの民主党時代のデフレは二度と御免・・・」
であり、
「アベノミクス? まあ、そこそこ良かったんじゃないすか?」
という具合で、保守革新に亘る政治談議盛んな。僕たち超高齢世代とのディベートなどは、
「叱られそうで・・・」
と、もっての外、試みることもないようです。
「どこどこのパンが・・・行列が出来て・・・」
「300坪の敷地に隠れ家的な、素敵なレストランが・・・」
とやっている所に近づいて、つい、
「でもね、このまま行くと、必然的に、戦争に巻き込まれちまうんじゃないかな?」
と、いまや米寿となった僕が呟きかけると、
「だいじょぶですよ。北朝鮮は脅すだけで」
「なんだかんだって言っても、日米同盟は、確固としていますから」
「北朝鮮がミサイル攻撃でもしたら、米軍が徹底的に反撃するのが解ってるから、自爆行為です。金正恩は、そんな馬鹿じゃないです。中国習近平政権だって同じで、戦争なんかしたら自己崩壊しますからね」
(この老人は、何を心配してるんだろう?)
という風に、屈託なく僕を説得するのです。
「でもさあ、陸でも海でも、イージスをいくら並べても、一時に何百発も弾導ミサイル撃ち込んで来たら・・・百発百中したって、防ぎきれないんじゃあないの?それに、ミサイル撃ち込まれてから、米軍が反撃する時には、日本の米軍基地は消滅しているわけでしょう?厚木基地は、ここからすぐ近くだしね」
「トランプさんと安倍さんで購入の約束を交わした、まだ開発中で、超高価なステルス戦闘爆撃機には、誰が乗って戦うの?その頃には、迎撃する相手は、ミサイルや無人機やドローン機じゃないかなあ?」
「・・・・・?」
「積極的平和主義ってのは、軍事強国と同盟を結んで圧力を保つ平和ではなくて、対立する国があれば、積極的に間に立って、平和を説くことじゃないのかなあ?」
「僕はこう思うんだよ。 今こそ、日本は、積極的平和主義を称えて、アジア各国を説いてまわり、一国が主導するものではなく、各国が経済的にも均衡できる真の大東亜共栄圏を築き上げる好機だと・・・」
立て続けに質問しながら。ふと、気がついてみると、
もう公園広場には誰もいなくなって・・・最早巨木になった桜の木から、熱気に負けた病葉が、風に吹かれて、中空に漂っていましたっけ・・・
昭和なんて、ずうっと遠くに行ってしまったんですね・・・でも、
「ねえ、菅さん。自助、共助、公助じゃあなくて、公助、共助、自助じゃないの? 自助なんか絶対出来ない人を先ず公が救ってから、家族、近所が助け合って、そこから先は、自分で出来ることは自分でやってなんとかするのが・・・?」
ふと気がつけば、最早巨木と化した公園の桜の木々から、病葉がちらほらと、散っているだけで、すべて世は事もなし・・・




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